銀の弓
辺り一面を深い森に囲まれた牧場。
その中央にそびえたつ大樹をくりぬいて作られたのが、俺の働く酒場だ。
「で、ボウズは何を叶えて貰うんだ?」
「とりあえず、うまいもんが食いたいって書いた」
ちなみに今日は7月7日、七夕だ。
店の入り口に飾ってある笹には、短冊がたくさん飾ってある。
「おっちゃんは何を書いたんだ?」
「俺か、俺はその、秘密だ」
目の前のおっちゃんの短冊もある。
料理を食べながら色んな話をしてくれた。
日本各地へ旅をしていること。奥さんと娘さんがいること。
今回のクエストが長旅になるから、乗り物がいることなどだ。
「どうせ、奥さんと娘さんへの願いだろ?」
「な、ななな、何故分かった!?」
いや、分かりやすいから。
聞いてた話の9割が家族の話題だったし。
仲間の若手ハンターからも慕われてるから、面倒見も良く、優しいおっちゃんなのだろう。
今回のクエストも、報酬よりも人助けのために受けたに違いない。
「それで、貸してくれんのか?騎獣は?」
「ああ、いいよ。ただ、今日は遅いから明日出発でいい?」
月と星の光で外は随分と明るいが、それでも夜の森は危険だ。
おっちゃんと明日の日程と料金の確認をしていると風が吹いた。
今この店の扉は開いていない、ならば――
「おっちゃん、悪い。ピンチみたいだからちょっと待ってて」
「俺は構わないが、大丈夫か?」
必要なら俺も手伝うぞ、とばかりに立ち上がるおっちゃん。
「大丈夫大丈夫、店から1歩出るだけだから!」
壁にかけてある銀の弓と矢を取って、俺は外に出た。
満月のせいか、いつもより森の奥が見える。
苔の生えた自動車、根が張ったビル、そして――魔獣化した、熊。
「大河ぁー!助けてぇー!早く!早くぅー!」
風に乗って遥か彼方から声が聞こえてくる。
良く見れば、蟻ぐらいの大きさの人影が見える。
恐らく、大きな足跡をたどって森に入り、足跡を残した本人と遭遇したのだろう。
熊はお腹が空いているようで、歩みを止める気配は無い。
「そういえば、俺も料理出してばかりで夕食まだだ」
「早く、早く助けてぇー!」
急かされても、普通なら届かない距離だ、冷静に考えよう。
そもそも、普通自動車3台分の高さの魔熊にこの矢は弱すぎる。
装備を間違えた感は否めないが、問題は無い。
「圧縮圧縮、とにかく固めに」
地面に手を付き40秒。
あっという間に矢が完成。
「この弓と矢なら」
素早く構え、夜空に向けてシュート!
「そこまで、届く」
たぶん、だけどね。
ふと矢の軌道を見れば、天の河に沿って突き進んでいた。
多くの星が集まり、道を作る。
その道を、矢は親友のピンチを救うために駆けるのであった。
初めて書くのでテストさせて頂きますた!
今日中にしっかり叩いてふくらませるのでご容赦をー。
なるべく読みやすいものに出来るよう努力致します!