小さな貼り紙
この前こんな事があった、『ここがおすすめ!』って言う貼り紙が俺の家の近くのコンビニの脇の自動販売機のコンクリブロック(自販機の足場に使う奴)に小さく貼ってあった。
何でこんな小さな貼り紙を発見したかと言うと、十円玉でジュース買おうと思って一気に手に持ち過ぎて、『あぁぁ〜』『ジャラジャラ〜』見たいな感じで自販機の下へ・・何やってんだ俺ってな感じでお金拾ってる時に発見したんだけどもこの貼り紙が普通に『これがおすすめ!』だけならよかったのに、横に小さく矢印がこんな感じ→で書いてあった。
初めは、『カンジュースのおすすめの貼り紙がとれたのか〜』って思ったけど、あれって完全に自販機の中に貼ってある物で普通に考えたら有り得ない位置にある・・気になるとじっとしてられない性格の俺、当然の事ながら→の方向に歩きだしていた。
とりあえず矢印の方向になにもなかったら帰ろう、俺なにやってんだろうとか思いながら半笑いでテクテク歩くこと数分・・あった!あの貼り紙、今度は民間のブロック塀に、しかも丁度俺の目の位置辺りに、今度は
『ようこそ!あと少し!』今度の矢印は、→↑こんな感じ・・って事はこの先曲がれって事か、何だか今日は風呂上がりのジュースを買いに来ただけなのにちょっとした冒険だな、なんて事考えながら歩く、夜九時過ぎ・・危ない奴だよ俺。
でも何か楽しい、何もなくても普段の生活が平凡過ぎるからこう言うばかばかしい事が新鮮に感じる、俺は三十代後半、四捨五入で四十歳・・さぁ次行って見ようか、→↑矢印の通りに曲がってみた真っ直ぐ進むと細い道に出た。
この返は、長年住んでるけどいつもは大通りを通るからこんな細い道があるのは知らなかった『さすがに貼り紙ないだろ誰かのいたずらだな』って思った。
細い道の入り口付近のカーブミラーの丸井棒の真ん中辺り・・あった、貼り紙
『ようこそ!↑』
時間は夜十時過ぎ、外灯は無し、細い道、先まったく見えず・・明日仕事、ちょっと考えたけど俺は気になると、止まらない当然の如く細い道を進んだ。
『ようこそ!↑』の貼り紙から細い道を進む事十数分かなりきつい坂道を抜け、道幅も大きくなって来た。
こんな道あったんだ、でも夜は怖いし、危ないし全然前も見えないしあの貼り紙張った人どんな人だろう、何歳位の人だろう、そんな事考えながら歩いていたら目の前に小さな公園が出てきた。
今は使われてないかのような小さな公園、ブランコ、すべり台、鉄棒、砂場・・懐かしい何年ぶりに来ただろう公園、俺は公園を一周してからブランコの方向に歩いた。
ブランコに腰掛けようとした時あの貼り紙があった。
『ありがとう!おもいっきりブランコこいで見て!』
何だそう言う事か、たまには子供に返ってブランコでもどう?
よ〜し、立ちこぎでおもいっきり勢いをつけてこいで見た。
公園が少し高台にあるせいか前が見えず少し怖かった。
せ〜の、後ろから前に出た時自分の住んでる町が目の前に広がった。
すごいきれいな夜景が目の前に飛び込んで来た。
しばらく言葉を失ってしまった。
これか、本当に伝えたかった事
自販機の小さな貼り紙から伝えたかった事
何か今日一日の嫌な事も忘れる位感動した。
深夜0時を回って日付も変わり今日が始まる、小さな貼り紙の小さな出来事、俺にとって最高にドキドキした一日になった。
『ありがとう』
これからは、小さな事でも全力でぶつかって行こう。