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Trival Tweet  作者: fulldrive
第壱章 社会浄化
9/20

The gear of fate

tips 〜『Trival Tweet』とは、〜



全て、というのが正確な解答。

わかりやすく言うなら突如として現れた“呟き”専用サイト。ただし一度見たら最後、二度と戻ってこれなくなる。

十分に自分自身を支配する力がなく、絶えざる自己支配・自己克服としての道徳を知らない人は、

無意識のうちに善良で同情的な情動の崇拝者になってしまう。


――ニーチェ――







言葉は病だ、誰かがそう言った。


言葉という細菌は人に寄生、苗床として

伝染する。

言葉の持つ意味ミーム発声ニュアンス、その時の感情センスによって聞き手の感情や心情、時によっては“こころ”を動かすことだってできる。


心を操るとか言ってる奴は術で化かしているのではなく、“ことば”で人々化かしている。

術はただのお飾りだ。だから私は敢えて彼らの事を“術師”ではなく“話師”と呼んでいる。

彼らはとても話が上手い。


皆もかつては、何故人はたった一つの言葉で一喜一憂するのか疑問に思ったことがあるのではないだろうか?


そして、言葉は人を一喜一憂させるだけではなく人を殺す事も出来る。


たった一言で、その人から希望を奪うことが出来る。


たった一言で、その人から未来を奪うことが出来る。


たった一言で、その人から自由を奪うことが出来る。


たった一言で、その人を自殺させることが出来る。


たった一言で、その人を人殺しにする事が出来る。


たった一言で、大勢の人を従わさせる事が出来る。


たった一言で、大勢の人を自由に操ることが出来る。


たった一言で、大勢の人に殺し合いをさせることが出来る。


たった一言で、世界を敵に回すことが出来る。





しかし、一つだけ例外がある。


たった一言で、大切な人を護る事が出来る。


それだけはいつの世になっても変わらない、不変な事なのである。




そう、あの“システム”が生まれるまでは。

















僕はライフル用弾丸によって、男の顔がぐちゃぐちゃに砕ける様を見つめていた。

不思議と不快感は湧かなかった。

寧ろ“呟き”の通りに出来たことに僕はとても安堵していた。これで彼女を救うことが出来る。


僕はそっと自分の右手を見る。


『mode: CLEAR AS CRYSTAL』


そう、それが僕の能力名。“呟き”によって授けられた僕だけの力。

どんな能力かと言えば、何て言うんだろう?

...物凄く集中できる、みたいな感じ。

世界がゆっくり見えるぐらい集中する事が出来る能力。

それが、僕の能力。

大切な人を守る為の力。


詳しくは知らないが『Trival Tweet』を読んだ人間は全て能力が与えられるようだ。

そして、“呟き”が提示した物語を僕ら実行隊が自ら綴ることで“呟き”によって描かれる物語を進める。


逆らうと消される。大切な人も消されてしまう。


それだけは耐えられなかった。


自分の親を殺すことに抵抗がなかったのかと問われれば勿論、僕はあったと答える。

どれだけ憎んでいたとしてもやはり親は親であり、自分はその子供である。

抵抗がないのはおかしいと思う。


少なくとも産んでくれた人を殺すのに躊躇わないなんて言うのは一般人では有り得ないだろう。








そう、僕は『彼女』と自分の親を天秤にかけてしまったのだ。

そして、...彼女を選んだ。

否、選んだ理由ではなく、“選ばされた”と言った方が正しいだろうか?


彼女を壁に押し付けて問い詰めた時、彼女にその問に対する答えを言った時、果たしてその時の僕は本当に“僕“だったのか未だにわからない。


でも、自分はその選択は間違ってないと“確信”している。一体この自信は何処から湧いているのだろうか?

誰も答えないし、誰も知らないし、答える必要性も感じない。


銃を担ぎ直し、僕は帰路に着く。





顔が砕けて原型を留めてない、親父を置いて。


















倫敦ロンドン







私はホームズに感謝しなくてはならない。

彼は私を拾い、住む場所を与え、そして私が『奴ら』にとられていた人質を救ってくれたのだ。


そのことについて知ったのはつい最近、店の片付けを手伝っているとワトソンが私に対してこっちに来るようにと手招きをしているのが見えた。


「ホームズさんに感謝してくださいね」

何やら嬉しそうな顔で彼は語り出した。


「おめでとうございます、君の『人質』は無事彼が救出したみたいです。」

始め私は彼が言ったことが理解出来なかった。何故なら私は2人に“呟き”に人質をとられているなんて話はしていなかったはずなのだ。

そう言うと彼はさぞ可笑しそうにくすくすと忍び笑いをし、こう言ってのけた。

「バレバレでしたよ。特にホームズさんなんて初めて見た時から気づいてたみたいです」


...なんてこった。






という訳で現在に至る。

私は2人の探偵業の手伝いに行く事になり、倫敦市内を歩いていた。

特に何も異常は無く、このままだと事件も無く平和な1日になりそうだった。


が、


「...爆音?」

ホームズのその呟きを聞いたワトソンが徐々に険しい顔になる。

「急ぎましょう」

「ああ」

2人は爆音が聞こえた方に走り出した。

私としてはせめて何処ら辺から聞こえたかぐらい言って欲しかった。


これは後からわかったことだが彼らは常に遠距離方位性マイクを耳に付けているらしく遠くの音がはっきりと聞こえるらしい。何で私にはくれなかったんだ...。


私が遅れて彼らの元に到着するとそこはとても悲惨なことになっていた(と言っても私にとっては見慣れた光景なのだが)。


そこにある死体達は機銃に撃たれたらしい銃創がいくつもある。

そして、どれもご丁寧に“頭”を撃ち抜かれていた。


死体を触ろうとした瞬間、嫌な予感がして思いっきり横に飛ぶ。

直後、私がいた場所に銃弾が叩き込まれた。

...2人は!?

どうやら彼らも回避したらしくホームズが親指を立てて無事を伝えてくる。

...頼むから親指立てながらドヤ顔やめて。


ワトソンはすぐにAW50を構え、射撃姿勢に入った。


AW50とはイギリスの代表的な狙撃銃、L96を五十口径に切り替えた対物ライフルである。

彼がこれを持ち出してきたところを見るとこの惨劇は兵器によるものなのだろうか?...っていうかいつの間に用意したんだよ


ズドォォォォォォォォォォォォォン!!


腹に響くような銃声が倫敦の街に響き渡る。

すると物凄い遠くから小さな爆音が聞こえてきた。


対象ターゲット破壊ダウン

ワトソンは溜息をつき、AW50を背中に戻した。

「よしっ、じゃあズラかルぞ」

ホームズも(これもいつの間に持ってきていたのかわからないが)持っていたカンプピストルの先のグレネード弾を外して腰のホルスターにしまった。


あっさり事件が終わってしまったことに暫し呆然としていると馬鹿ホームズが頬をまたつついてきた。

「おーい、起きてまちゅか〜?」

...何で赤ちゃん言葉なんだ?


すると、ワトソンが彼にAWでゴスッと頭を殴り、襟を掴んでズルズルと引き摺って行った。




やけにその日は夕日が綺麗に見えた。

















まわるまわる、歯車ギアはまわる。


止まることは無く、決して止むことのないその独特のリズムは延々と時を刻む。


まわるまわる、世界はまわる。



ここを中心として、世界はまわる。

歴史はまわる。未来はまわる。



と、そこに新たに二つの歯車ギアが現れた。


それらはひしめき合い、互いを削りあった後に、


真っ二つに割れてしまった。


それらはきっと“ここ”にとって不要だったのだろう。


そして、歯車ギアは回り続ける。


定められた使命を全うし続ける。


止まるな、壊れるな、消えるな。


動かし続けろ。


全てを、




そして、奏でろ。



この世の全てを。




そして、見届けよ。


この世の偽りを。




そして、祈り続けろ。



汝に幸があらんことを...。



















問 : 歯車ギアとは何か?



解 : 『Trival Tweet』







“目”を閉ざさないで、

それは“目”でしか見えないもの。


“耳”を閉ざさないで、

それは“耳”でしか聴こえないもの。


“口”を閉ざさないで、

それは“口”でしか語れないもの。


“想像”することを止めないで、

それは“想像”することでしか得られないもの。



そうすれば、未来は開かれる。

明日は閉ざされず、人々は再び笑顔になる。



呟きを止めることができる。


そして、世界はまた静寂サイレントに還る。



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