Never thought. I believe.
いったい幾つ屍を越えたのだろうか。
そんなもの数えたことがないからわかるわけが無い。
でも、それでも私は知りたい。
この一つのつまらない呟きによって私は何人もの人を殺めたのか。
『性を奪われし屍の山を築き、自称探偵を殺せ』
こんな歪んだ欲望に塗れた穢らわしい呟きを実現する為に何故私が抜擢されたのだろうか?
未だに分からない。
だから私はとっととこんな«くだらない»作業は済ましたかった。
この呟きの為だけに購入した無骨なナイフ。
しかし、このナイフはただのナイフではない。柄のグリップを握り込むと刀身が超高速振動し、対象を‘’削り斬る‘’。
だから人肌などバターのように切り裂くことが可能なのだ。
しかし、切断面が摩擦で溶けて少し焦げ付いてしまうのが欠点であった。
何かに溶断された、と判断されたらこの殺人を解決するための人員が増え、動きにくくなるのは確実だ。
だから私はこういう手を打つことにした。
高濃度でかけると肉体を瞬く間に炭化させてしまう液体。
そう、『硫酸』である。
となると昔の事件の再来、とか言われるのは確かだが硫酸によって焦がされた死体は非常に証拠が残りにくい。
何故なら、水気を含むものならあっという間に焦がしてしまうからだ。
焦がされたものは証拠が残りにくい。
死体の身元の特定にもかなりの時間を要するだろう。
だからだろうか?私が『バネ足ジャックの再来』と呼ばれるのは。
確かにかの狂人もナイフで人を刺したり、火を吹きかけていたらしいが私のほうが少しばかり(いや、かなり)やり過ぎてるような気がするのだが誰もそう言わない。
それが更に私をイラつかせていた。
別に私は歴史の教科書に殺人鬼として名を残したい訳では無い。どちらかと言えば最期まで一般人でこの生涯を終えたい身だ。
だが、あの‘’呟き‘’を見てしまった以上、私は...否、見た人すべてが呟きに従わなければいけなくなってしまった。
皆それぞれ何かを人質(物などを人質と言うのかはわからないが)とられているらしく、逆らうことは許されない。
逆らった瞬間人質は殺され、逆らった者もその場で使者に始末される。そんなシステムだ。
そして、この事は誰にも教えていけない。教えたり、匂わせるような発言をしても逆らった時と同じような処罰を受ける。
そう、それが『Trival Tweet』。
誰がこんな迷惑でしかないモノを作ったのか誰にもわからない。
だから、私は‘’しょうがなく‘’人を殺し続ける。
意味もなく、無駄だと知りながら。
ロンドン橋は童謡の通り、昔かなりの頻度で崩れ落ちていたらしい。
いや、別にこれが今回の話と関係があるかと聞かれると恥ずかしながら全く関係が無いんだよね、これが...。
そう、僕は生粋の英国男子だ。
英国で生まれ、英国で育ち。そして英国の地で眠る。
そして僕は人殺しはあまり好きじゃない(返り血で汚れるし死体は臭いからね)。だから僕は人を殺さない。あくまで殺すのは僕が使う武器だ。
言い訳じみている、と言われそうだけどじゃあどう言ったら言い訳じゃなくなるんだい?
私は醜い人殺しです、ってベソかきながら言ったら言い訳じゃなくなるのかい?
ま、そんなことはともかく。
僕は遂に見つけた。
誰をかって?何言ってるんだ、バネ足野郎に決まってるだろ?
彼―――否、彼女はやっぱり人殺しだね。それも‘’呟き‘’に命令されて仕方がなくやってる。
え?殺さなかったのかって?
いやいやいやいや、あんな綺麗なレディを殺すなんて僕にはとてもできないよ。
何なら僕が保護してあげたいぐらい。
年齢は恐らく10代後半、低身長でスタイル抜群、金髪碧眼、意思の強そうなつり目、引き締まった四肢。
もう最高じゃないか!!
あんな娘に武器を向けるなんてとてもじゃない。
......いや確かに美しい花には棘があるなんて言うけどね?
でもやっぱり花は愛でなきゃ駄目だろ?
だから顔だけ確認して僕は現場を一旦離れた。
ブラフも仕掛けておいたし、かかった跡が無いから恐らくつけられてはないでしょ。
さてさて、彼女の事を知れば知るほど興味が湧いてきたなぁ...。
...何?気持ち悪いって?
ハッ、なぁーにを今更。
これは生まれつきだ。諦めな!
翌日、僕は先日彼女を見かけた場所に再び向かうことにした。
居ないかもしれないのに行ったのかって言われてもほら彼処に先週も昨日も人間置いといたの僕だし、そろそろ餌付けが出来たかなぁってね。
人を動物みたいに言うな?いやいや、人間も皆動物だよ。じゃあ、逆に聞くが動物の逆は何か知ってるか?
静物だよ。要するに全く動かないんだ。
人はどうだ?ほら、動くだろ?
だから人も獣も魚も皆動物なのさ。
静物は植物だけだ。あれ以外皆積極的に動きまくってる。
そんな当たり前のことも分からいなんて助手失格だよ?『ワトソン』君。
ていうか君も人のこと言えないでしょうがよ。
こないだ君ナンパして失敗してたでしょ?
全く...
で、彼女はやはり現れた。
何処にかって?勿論僕の目の前。
正確にはナイフが僕の首に突きつけられていたわけだけどね!
...
......
.........
「あんた、ここで何してんの?」
「や!これは失礼。あまりにも君が美しいものだからつい見蕩れてしまったよ」
あっはっは、と笑う青年には敵意は全くなかった。
しかし、それがかえって少女を疑わせた。
何故ならこの青年は自分が死人を解体していた所を見ていたはずなのである。
普通、警戒心を剥き出しにするのが当たり前なんじゃないだろうか?
それどころか青年はにこにこしながら少女の方に近づき、突然
がしっ
「!?」
肩を抱いた。
少女が動揺して動けない間に青年は少女の耳元で相変わらずにこにこしながら甘い声で囁いた。
「やっと会えたね。可愛い可愛い子猫ちゃん」
それを聞いた途端、少女の頭の中は真っ白になった。
問:『Trival Tweet』とは何か?
解:全て
『無題』
作者不明
我謳ウ
民ノ総意ハ
他人ノ意思
抗エズ、我ラ唯嘆クノミ
全テハ彼ラノ意思
嗚呼、神ヨ。我ラ何ヲ為スベキカ
Never live. Must Die.