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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

目は思い

作者: renren

「水瀬、俺... 」

切り出したものの、ドキドキと高鳴り恥ずかしくて顔を下にしてしまった。

同様に、伝えていいのか?伝えたら伝えたら絶対嫌われてしまう。

という気持ちが邪魔をして水瀬の顔を見れなかった。

「ん?どうした?藤巻。」

心配そうに顔を除かせようとする水瀬。

愛斗は伝えたい気持ちと伝えたくない気持ちの葛藤に我慢できず涙をこぼす。

「藤巻... 綺麗だ。」

「えっ?」

水瀬は愛斗の左頬に手を添え、額にキスをする。

愛斗は唐突の一瞬な出来事で涙が止まり、固まった。

えっ?今、何をしたの?どうして?

水瀬はビックリして戸惑う愛斗に気を使うことなく、抱き締めた。

強く地面を照らす太陽。悶々と熱気をまとう風。

熱さは下がることなく増す8月の下旬。

高校3年生にとっては学生生活の最後の夏だった。

このまま思いを伝えられずに卒業をしてしまうのかと、

ため息をつきながら道を歩いている生徒がいた。


名前は藤巻愛斗。平凡な普通の... いや、少し地味な何も取り柄のない高校生。

ただ、1つ言えるとすれば、背が155㎝の細身な体型なので、よく女の子と間違われてしまう。

今日は補習の為、学校に行っていた。

今はその帰り、元気が無さそうに重たげなため息をつく。

「はぁ~... 俺はこのままずっと一人なんだろうな... 」

今まで付き合ったことがない愛斗。告白も勿論無い。

しかし、高校1年の頃から思いを寄せている人がいる。

「今日もカッコ良かったな。水瀬。」

さっきまでの元気の無さげな様子とは違い、嬉しそうな表情をだす。

愛斗の思いを寄せている相手、それは同じ3年生の水瀬将太だった。

愛斗とは違うクラスだが、水瀬は同学年の人気者だった。

頭も良く、スポーツ万能。顔も文句なしの爽やかなイケメンで、

体格も女子が好きそうな筋肉質。身長も178㎝もあるモデルの様なお洒落さんだった。

尚且つ、生徒会長をしている。そのため、先生達も太鼓判を推す生徒だった。


水瀬に思いを寄せたのは高校に入学してすぐのことだった。

同じ学年のヤンチャな奴等にいじめを受けていた。

その現場にたまたま水瀬が遭遇した。

「お前ら、なにやってるんだ!こんな真似は止めろ!」

「ちぃっ、水瀬だぜ。行くぞ!」

「次もこんな真似したら許さないからな!」

途中から割り込んできた相手が水瀬だと知り、直ぐに去っていった。

水瀬は先生達からの信頼も厚かったため、先生に知られたらと恐れて逃げたのだ。

「大丈夫か?あっ!唇切れてるじゃないか!」

「いいよ。それよりも有難う。助かった。」

「良くない!保健室に行くぞ!」

右下の唇を切ってしまい、血が出ていた。

ぱっくりではなく擦れた程度だったが、それでも心配した水瀬。

右手首を強く引き、保健室に連れていった。


「よし、これでもう大丈夫だよ。」

「有り難うございます。」

先生の応急措置で唇の血が止まった。

次の授業が始まっていたため、急いで教室に戻ろうとした時、

水瀬は愛斗の頭をポンポンと撫でた。

「何かあったら、俺に言えよ?俺が力になるから!」

「...うん。ありがとう... 」

大きな手で撫でられ心地よく、温かく感じた。

今、絶対に顔が赤くなってると分かるくらい熱くなった。

「俺、水瀬将太。1年6組だ。よろしくな!」

「俺は藤巻愛斗。1年2組。よろしく。」

水瀬はニコッと優しく微笑んで名前と組を教えてくれた。

愛斗も顔を赤らめながらも名前と組を伝えた。

そして、二人で教室に戻っていった。戻っている途中、水瀬が口にする。

「藤巻、女みたいで可愛いな。よく間違われないか?」

「間違われるよ。俺の事、最初みた時、女だと思ったろ?」

「思った。思った!けど、ブレザーにズボンだったから男なのか?って迷った。」

水瀬はまたニコッと微笑んだ。その顔につられ愛斗も笑顔になった。


愛斗と水瀬の通っている高校では1~6組まであり、階ごとに別れていた。

校舎ごとで違うが、愛斗と水瀬の校舎は3階建てで2つづつ教室があった。

なので、一番下の階が5組と6組のクラス。真ん中の階が3組と4組のクラス。

一番上の階が1組と2組のクラスで別れていた。

話しているうちに水瀬の教室につこうとしていた。

「藤巻、クラスは違うけど、同じ1年だ。困ったら直ぐに言いに来いよ!」

最後に水瀬は愛斗にもう一度頭をポンポンと撫でながら言った。

「うん。ありがとう。水瀬... 」

愛斗は水瀬の優しさに嬉しく感じ、涙をこらえ、バイバイと別れた。

それ以来、水瀬に近づく事も会う事もはなかった。深い接点も築けないまま秘かに思いだけを寄せた。

そして、3年の夏の終わりと時間が過ぎ去ってしまったのだ。


思いを巡らせながら家へと帰っていると、愛斗はある光景を目にする。

それは女の子が道路に飛び出していったのだ。反対から車が近づいてくる。

愛斗は危ないと感じ、急いで女の子の所にかけよった。

なんとか車にぶつかることなく女の子を助けた。

女の子はわーんと声をあげ泣いていた。

「大丈夫。大丈夫だよ?よしよし。」

愛斗は女の子を抱き締め、背中を優しくさすった。

それを見ていた近所の人達、愛斗の所に寄り、大丈夫?お互い怪我は無い?と声をかける。

その奥で、一人の男性の声が聞こえた。

「まなー!まなー大丈夫か!」

女の子の名前なのか、名前の呼ぶ声が段々と近づいてきた。

「まなー!」

「しょう兄ちゃん。」

「お兄ちゃん?」

肩を上下させながらぜーぜーと息をする男性。もうダッシュで来たのだろう。

男性は顔をあげた。よく見れば、ずっと3年間思いを寄せていた水瀬だった。

「水瀬!... 」

「藤巻?何で?」

「お兄ちゃん、このお姉ちゃんが助けてくれたんだよ。」

キョトンとする水瀬に説明をする妹。

また、愛斗も久し振りの再会に何を言葉にすればと戸惑っていた。

「お姉ちゃん、助けてくれてありがとう。」

「あっ... いっいいよ。君が何ともなくて良かった。」

「そうだったのか... 藤巻が助けてくれたのか。有り難う。」

「いっいいよ。気にしなっ... 」

愛斗は直ぐに去ろうと立ち上がったが足に痛みを感じた。

見てみると、膝の生地が破れ、擦れ傷ができ、血が出ていた。

助けてる時に出来たのだろう。大きい擦れ傷だった。

痛みが大きいのか、愛斗は膝に手を抑えていた。

「いった... 。」

「藤巻、大丈夫か?立てるか?手当てしてやるから家に来い。」

「お姉ちゃん、立てる?」

水瀬は痛んでる愛斗をおんぶして連れて帰ろうとする。

妹も心配そうに愛斗に声をかける。

愛斗は言葉に甘えるのは心苦しいと眉を寄せ、水瀬を見た。

しかし、水瀬は言うことを聞きなさいと言わんばかりに見つめ返した。

水瀬の眼差しに愛斗はドキッと鼓動をが鳴った。顔が赤くなる。

そんな愛斗を見て、水瀬はニコッと微笑んだ。

「藤巻、俺の背中に乗って。」

水瀬は背を向け、優しく穏やかな口調で言う。

愛斗は顔を真っ赤にし、恥ずかしがりながらも水瀬の大きな背中へと自分の体を寄せた。

大きな背中の温もりを感じ、ドキドキと鼓動が速くなる。

「痛かったろ?本当にごねんな。」と気にかける水瀬。

愛斗はその低く穏やかな声を聞き、心臓がキュンっと苦しくなった。

愛斗は水瀬の背中に顔を埋めた。苦しくて、ドキドキして、

まるで本当の女の子の様になっていた。

「お姉ちゃん、可愛いね。」

元の見た目もだが、妹は愛斗のすべての仕草が可愛いと感じたのだろう。

水瀬に「お姉ちゃん、とっても可愛い。」と目を輝かせていた。

「まな、藤巻はなビックリすると思うが男なんだぞ~!」

「みっ水瀬っ。」

「女と間違われてるの気づいてただろ?でも、有り難うな。」

「水瀬... 」

お姉ちゃんと言われていたので、間違われてるのには最初から気づいていた。

黙っていたのはあんな危ない目の後なのに、小さい子に間違いだと言って悲しませたくなかったからだ。

だが、水瀬は間違いはだめだとはっきりと妹に伝えていた。

水瀬の妹は水瀬の言う通り、ビックリしていた。

口が閉じないってこういうことなんだろうなと思わせるくらいの表情だった。

「えー、お姉ちゃん。男なの!?じゃあ、お兄ちゃんなんだ!」

「うん。ごめんね。黙ってて。」

「ううん。私の方こそ間違えてしまってごめんなさい。」

「でも、お兄ちゃん可愛いね!」

どうしてそんなに可愛いの?と愛斗の目を見つめていた。

目は思いという。愛斗は水瀬の妹の言いたい事が直ぐに伝わった。

そんなやり取りを感じ、水瀬はハハッと声を出し笑った。


水瀬の家に着いた。住宅地に囲まれた白のコンクリートで出来た普通の一軒家だ。

家の中は玄関のから入って左に靴棚がり、向かい側には2階へ続く階段。

右はキッチンへ続く通路と奥に扉がある。

親はまだ仕事なのだろうか。水瀬と妹の二人だった。

愛斗はキッチンのソファーまでおんぶで運ばれた。

「まな、お茶をお願いしても良いか?」

「うん。分かった。」

薬箱を準備する水瀬。お茶を用意する妹。

兄弟のいない愛斗は羨ましく感じながら二人を見ていた。

「はい。しょう兄ちゃん。」

「有り難う。まなちゃん。」

恥ずかしいくも小さい子は名前で呼んであげたい。

兄弟に憧れているからこそ... そう思い愛斗は水瀬の妹を名前で呼んだ。

「ごめんね。勝手に名前で呼んで。」

「えー良いよー!嬉しい。」

「ほんと?俺も嬉しいな。」

まなちゃんは嬉しそうにニコニコと微笑んでいた。

そんなまなちゃんを見て愛斗も笑顔になった。

「ねぇ~、お兄ちゃん。私も愛斗お兄ちゃんって呼んでいい?」

「良いよ。そう呼んでくれると嬉しい。」

まるで妹が出来たみたいで嬉しかった。

薬箱を持って戻ってきた水瀬。まなちゃんと話している内容を聞いていたのか、

「良かったな、まな。もう一人お兄ちゃんが出来たな。」

「うん。しょう兄ちゃん嬉しいよ。」

愛らしく感じながらまなちゃんに微笑む。

だが、水瀬は二人っきりになりたいと目で伝え、

まなちゃんもそれを何となく感じたのか部屋へむかった。


キッチンは二人きり。愛斗の心臓はまたドキドキと高鳴りは始める。

また顔が赤く染まる。やばい。どうしよう。戸惑う愛斗。

その姿にまたニコッと微笑みながら水瀬は言う。

「待たせてごめんな。」

「いいよ。まなちゃん可愛いね。」

「そうか?普通だぞ?」

応急措置をしながら、愛斗の愛らしい姿に微笑む。

水瀬の大きな手が膝に触れ、体がビクッと反応してしまった。

消毒液が染みたのもあるが、一番は水瀬の手の温もりが原因だった。

「悪い。染みたか?」

「ごめん。続けて。」

水瀬の手は5分程、膝に触れていた。お陰で顔が真っ赤になる程熱くなった。

「よし、これで大丈夫だ!」

「有り難う。水瀬。」

擦り傷を負った膝は綺麗に包帯が巻かれており、血は完璧に止まった。

応急措置を終えた水瀬は愛斗の横に座り、頭をポンポンと撫でた。

懐かしさを感じている安らいだ表情だった。

愛斗も久し振りに一緒に過ごす時間に胸が高鳴りはながらも安らぎを感じていた。

「久し振りだな。こうして会って話すのは。」

「うん。ほんと... 久し振りだね。」

「緊張してるか?」

「・・・うん。」水瀬の落ち着いた声に心はドキドキと激しさを増し、

ボーと水瀬を見つめ、素直に返事をしてしまった。

ハッ気づいた瞬間、言い終わった後だった。

「最初に会った時から変わらず、藤巻は可愛いな。」

「そんな... 可愛いなんて... 」

「可愛いよ。」

素直に返事をした愛斗にまた優しくニコッと微笑んだ。

愛斗は水瀬を見つめ、またいつ会って話せるかな?と不安を抱いた。

もう高校3年の夏の終わり、今伝えないともう会えないような気がすると思ったのだ。

二人きり... 今がチャンス。でも伝えたら嫌われてしまうのではないかと...

だが、愛斗は思いきって言葉にする。

「水瀬、俺... 」

切り出したものの、ドキドキと高鳴り恥ずかしくて顔を下にしてしまった。

同様に、伝えていいか?伝えたら伝えたら絶対に嫌われてしまう。

という気持ちが邪魔をして水瀬の顔を見れなかった。

「ん?どうした?藤巻。」

心配そうに顔を除かせようとする水瀬。

愛斗は伝えたい気持ちと伝えたくない気持ちの葛藤に我慢できず涙をこぼす。

「藤巻... 綺麗だ。」

「えっ?」

水瀬は愛斗の左頬に手を添え、額にキスをする。

愛斗は唐突の一瞬な出来事で涙が止まり、固まった。

えっ?今、何をしたの?どうして?

水瀬はビックリして戸惑う愛斗に気を使うことなく、抱き締めた。

「藤巻... 俺、ずっとお前の事、好きだったんだよ。」

「えっ?今、なんて... 」

聞き間違いじゃ無いだろうかと思い、愛斗は聞き返した。

「好きだ。藤巻。」

聞き間違いじゃなかった。突然の告白に愛斗の頬は涙が零れていた。

「うそ... 」

「本当だよ。好きだ。」

好きという言葉を実感させるためなのか、水瀬は何度も愛斗の耳元で囁いた。

愛斗は思いを伝えてくれた水瀬に、自分も思いを打ち明けようと言葉にする。

「水瀬、俺、1年のあの時から.水瀬の事... 好きだったんだ。」

「藤巻... 俺もだ。」

お互い、好きになっていたのだと気持ちが分かり、心がドキドキとまた脈を打つ。

水瀬は愛斗の唇に自分の唇にを重ね、舌が絡み合う。

愛斗は苦しくなり声を漏らす。

「んっ... んっ。」

水瀬の舌から伝う熱が心地よく感じた。

愛斗の可愛らしい高い声に水瀬も感じていた。

何分かのキスをだったが、長く感じた。

唇が離れ、水瀬は愛斗の腰に手を廻し、強く抱き締めた。


「ねぇ、将太。俺が将太の事好きって気づいてた?」

「あぁ、気づいていたよ。愛斗。」

何で?と、眉寄せ、口がへ文字にムッとなる愛斗。

水瀬は愛斗の表情を見て、ニコッと微笑んで言った。

「目が思いを伝えていたよ。」

「うっうそ。俺、そんな目してっ... 」

「していたよ。可愛らしい目を。」

恥ずかしくなり、また顔を真っ赤にする愛斗。

水瀬もまた頭をポンポンと撫でた。










「良かった~。お兄ちゃん達、思いを伝えられたんだね。」

「目は思いなんだね!」

キッチンの扉を少し開け、見ていたまなちゃん。

二人を温かく見守るのだった。


こうして二人は高校最後の夏に結ばれた。

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