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異世界がマゾゲー過ぎる件  作者: 海手三田
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閑話:親として、オヤジとして

親の贔屓目を差し引いても、我が子のレイは傑物の類だ



狩りと獲物を捌く位しか能の無い自分から、何故あんなに優れた子が出来たのか不思議で成らない



「蜥蜴が竜を産んだ」と思うほどの差に、種違いを疑わなかったかと言えば嘘になる。



だが、村の寄合に参加する度に「レイはお前のガキん時の見た目にそっくりだけど、似てるのは見た目だけだな」と、いつもからかわれる



加護を頂ける様な子は、中身の出来が違うのか?とも思うが、不思議と妬ましさは無い。

あの子がどう育って行くのかがとても楽しみだ



――――



レイが4歳位の時、いつも「あれは何?これは何?」と言っていたのが、パッタリと止んだ。


最近、色々聞かなくなったな?と話たら「この村で知りたい事は大体覚えた」と呑気に言われた時、俺は震えた。


それが息子の持つ才能への感動だったのか、畏れだったのか今も分からない。分からないが「このままではイカン!」と思った。折りよく女神の微笑みが起こり、金を手に入れられたので、街でモルドという奴隷を購入した。


村の共同出資を募るため、神職の不正蓄財を槍玉にしてやった。悪く思うなよ。


ちなみにその時一番乗り気だったのは、悪ガキで有名なアインの親で、村長の子のアントンだ。


アインの世代はレイが頭3つも4つも飛び抜け過ぎている。諦めろと心の中で笑ってしまった


きっとあの子が年頃に成ったら、村の女達は壮絶な闘いを繰り広げるのだろうなと、思わずには居られなかった



――――


「モルド、レイの教育は順調か?」


レイも今年で7歳だ。少し早いとは思ったが、教育の成果次第では山や森の歩き方、罠の仕掛け方など猟師の生き方を教えて行こうと思いはじめた。

あの子はきっと猟師になんか収まる器ではないだろうから、雄飛する前の今のうちに、我が子と共に過ごすべきだろう


「若様に教えるべき事は最早有りません。むしろ算術や科学など私ではもう足元にも及びません。神法や法術を学んでいれば良かったと、まさかこの歳で思うとは考えもしませんでした」


モルドが苦笑しきりだが、俺は唖然とした。


「旦那様、若様はとても…私が知るなかで一番、神に愛されております。旦那様を卑下する訳では有りませんが、猟師で収まる器では有りません。見聞を広めるため、留学という道も有りますかと」


「分かっている。これはただの俺の我が儘だ。いつ飛び立つかわ分からんが、レイとの思い出が欲しい俺の我が儘だ」


「…左様ですか。かしこまりました。若様はいつ旦那様と出られても、全く問題ございません」


「では明後日から連れて行こう。偽物ではなく、ちゃんと本人が来るように言っておけ」


「かしこまりました」




山でも森でも、レイはレイだった。


ナイフを投げて野兎を仕留めたり、子供用の短弓で鳥を射止めたりしていた



「そういえばこの子はいつからから泣かなくなったなぁ」などと、ぼんやり感慨に浸っていた。父さんはお前のする事に、いちいち驚いたりしてやらないんだぞ?


どうせ偽レイがコッソリ練習してるんだろ?


別に父さんより獲物の数が多くても、笑顔なんだぞ?


「父さん、驚いた?あれ?固まってる?」


驚いてなんか無い。

絶対に。




オヤジの沽券なんて有ったもんじゃない。この子には振り回されてばかりだ……が、年々俺に似てくるこの子に振り回されるのはとても幸せだ。

いつか巣立つその時まで、もっともっと俺を振り回して困らせてくれよ

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