女神の微笑み
「おいシータ、毛皮は積んだか?」
「あぁバッチリだ。暫く溜め込んだから、今回は大量だ」
親父が有り得ないほどの量の毛皮を担ぎ上げ、どんどん荷馬車に積み込んでいく
本当に物理的に有り得ない量だ。
あんなに荷物を積んだら、馬が牽けないのは一目瞭然なのに、皆は笑顔でどんどん積んでいく。
「レイは女神の微笑みを体験するの、初めてだっけ?」
俺が唖然と外の様子を見てると、母ちゃんが話し掛けてきた。
そうです!初体験です!!
そんな意味を込めて、コクコク頷くと母ちゃんが微笑ましそうにしていた
済まん、母ちゃん…脳内で下ネタかまして、そんな慈愛に満ちた目をされたら……居たたまれんわ……
「今日はスッゴく身体が軽いでしょ?大地の女神様の御機嫌が非常に良い証拠よ。『女神が微笑めば商売が捗る』って言うくらい、今日みたいな日は人が動くのよ。重い物も軽くなるって疲れなくなるから、遠出にはとっても良い日なのよ」
へぇー、地球じゃ考えられない感覚だな
「ただね、良い事ばかりでも無いの。違う言葉に『女神が微笑めば、戦神が笑う』っていうのもあってね、怖ーいオジサン達が、レイみたいな可愛い子を攫いにも来るのよ?」
あ、これ、アカン系や。
重武装の戦士が侵略行動起こすには確かに打ってつけだわ
「男の人がみんな外に行ったら、危なくないの?」
「危ないわよ~。レイみたいな可愛い子は特に危ないんだから」
俺をくすぐりながら、大して怖くない顔を作って脅してくる母ちゃんは真面目に取り合ってくれなかったが、嫌な予感がする。
結局、10日ほど女神の微笑みは続き、男衆が帰ってくるまで何も起きなかったが、嫌な感じは終始拭えなかった……
予想は外れたが、俺の中に【女神の微笑み】は、シッカリと何かを残した