子供でも労働力なんですよ?
俺も今年で3歳になった。
田舎の朝は早い。日の出が起床時間だ。
身重の母ちゃんを助けるために、朝から水汲みに薪拾い、料理の手伝いと、色々とやる事がある。
まぁ簡単なんだけどね。
何を隠そう俺の今の分身はLv3。祈りと精神耐性捧げのコンボで色々と才能やら能力やらを伸ばした。
スローライフを願ってたとは言っても、蛇口捻れば水が出るような生活に慣れた俺に、井戸汲みとか無理スわ。
水って重いの知ってる?
家畜の水やりってどれくらい大変か知ってる?
自己鑑定して精神耐性溜めて、母ちゃんに可愛い象さん弄くられて精神耐性溜めて…
まあ、終わりの見えないガチャ回す感覚で祈りまくりでしたわ
法術適性上げて、水の法術を手に入れる過程で家族や近所の悪ガキに貰った称号は「泣き虫」ですわ
精神耐性がほとんど無いから、面白いほど良く鳴いちゃうの。ビクンビクン
なんでそんな必死に祈ったかって言うと、幾つか理由がある。
この世界は本当に生きるのがシビアだ。風邪すらこじらせたら直ぐに死に直結する。
そんな中、乳幼児死亡率の高い病気で【奇跡的】に一命を取り留めた、なんて事があったらどう思う?
あぁ良かった
なんて奇跡に感謝出来るほど、俺は楽観的には成れなかった。
ここは神法が統べる地。介入があったと見るべきだ。愉快な駒が病気程度で死ぬ事は許されないんだろう……
その思いに至った時、俺は戦慄した
神々は俺に何かを期待している
背中を押す、ともミィミ様は言っていた
絶対にスローライフなんか送らせる気は無いな…
畑を耕して、家畜の世話し、嫁を貰い、子や孫に囲まれ看取られる。
そんなありふれた、でもささやかながら幸福に満ちた一生。
それを神々は望まれるか?
無いな
断言できる
無いな
あの一件に隠された危険性が本能的に分かる。
絶対にこの先、何かがある。
そう気付かされた2歳から能力の【分身】も家族にお披露目して、色々とやり始めた。
生活を楽にする術が先ずは欲しかったんだ、指向性の無い【祈り】は本当にキツかった。達筆の才能とかどうでも良いです…
まあ、出歩けない子供で、尚且つ我が村には農耕の神と山の神の神殿しか無いので、通常の祈りで【贄】を捧げても満足行く結果は得られなかっただろうけど。
何にしろ、俺はそんじょそこらの悪ガキと違って、才能に溢れる泣き虫な子供として今はすくすくと育っている。