世界に潜む危険。
説明が多いです。
悪い愛、良い愛の、良い表現方法ないかなぁ。
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この世界は意外と進んでいる。機械化も進み、今では車と呼ばれる、馬車で引かなくても進む乗り物が開発されているらしい。
それでも神から愛された能力を、消す事は出来ていない。俺や、この子の様に悪い愛を貰った者にとっては、待ち望んでいる成果なのだが、如何せん神からの贈り物だ、人間がどうこうの出来る物ではない。
だが、神の愛は相殺できる。俺が、この子の“死”の愛を“破壊”してみせる。
「そうだ。まだ名前を言ってなかったな。タイガだ。」
「私はハナ。」
「よろしくなハナ。俺とこれから過ごす訳だが、ここで暮らすか?それとも、街や村で暮らすか?」
「街はダメ。私のせいで、人を撒きこんじゃう。」
「“死”に巻き込まれるのか?」
「そう。火災が起こったり、建物が崩れたりするの。だから人の多いところはダメ。本当は、タイガおじちゃんも一緒にいると、危険なんだよ?」
「なるほどな。俺なら大丈夫だ。そう言うのには慣れてる。とりあえず、住むところはここしかないか。でも、ボロイよな。」
「しょうがないの。私一人で住んでても、火事とかは起こるから。」
「だから直ぐ建てられそうな作りなんだな。ハナが作ってるんだよな。」
「うん。昔買ったテントをずっと使ってる。」
ハナの言うとおり、この建物は非常に簡素な造りになっている。四方の金属の支柱の上に、水を弾く布をかけて、周りを細い木で囲んで、そこに幅広の葉っぱを詰め込んで壁にしている。広さは4畳程で、本当に狭い空間である。
さらに、火が燃え移らないように、炊事場は外にあるし、夜に灯す蝋燭すらない。話を聞くと、風の吹かないこの平原においても、なぜか火が飛び散るそうだ。なので、火の取り扱いは、外でと決めている。
「とりあえず、俺は住居用の設備を買ってくる。何か欲しいものはあるか?」
「お金、私ほとんどもってない。」
それもそうだろう。ハナの様に危険な愛を授かった者は、普通の社会では生きていけない。だから国から最小限の支援金が出るのだが、それを受け取りに行くのすら、ハナにとっても危険なのだ。だから、よっぽどのことが無い限り街の役場には行けない。なので、必然的にお金も持っていなくなる。
「金なんていらん。俺とハナは家族なんだぞ。」
「あ、ありがとう。」
ハナがもの凄く照れている。俺から一方的に家族になろうと言って、ハナはそれを受け入れた。俺は家族が出来て嬉しかったが、ハナも嬉しかったようだ。強引に家族に引きこんだのではないと分かって、俺は一安心する。
「で、何が欲しいんだ?」
「種を。色んな食べれる野菜の種を買ってきて欲しい!」
ハナは家庭菜園をして暮らしている。ここは風は全く吹かないし、雨も滅多に降らないが、川が網の目の様に流れているので、意外と植物は育つのだ。育つのだが、なぜか大きな植物が育たない。だから木はなく、草原なのだ。一節によれば、昔、何らかの強力な悪い愛を受けた者が、この場所で死んで、その影響のせいだと言われている。
「わかった。おそらく2月はかかるだろうが、必ず買って戻ってくる。」
「ありがとうございます。タイガおじちゃ・・・タイガさん。」
「おう。だがとりあえず、今日は泊めてくれるか?もうすぐ夜になる。」
「いいですけど・・・何も食べる物が。」
「もちろん俺が持って来てる。ハナに肉を食わせてやろう。」
俺はここに来る前に、色々と準備をしていたのだ。おそらく貧しい生活をしていると思ったから、肉や野菜を大量に持って来ているのだ。俺は“空間袋”から、肉や野菜を取り出す。
この世界の物は、何らかの愛を受け入れる準備が出来ている。人は生まれながらに、何らかの神から愛されているが、物には人から愛を込められるのだ。だからこの“空間袋”も、“拡大”や“拡張”といった愛を受けた者が、その血を垂らして、袋に愛を吹き込んでいる。愛を授けた人のレベルにもよるが、見かけの数倍から数百倍の体積を治められる。しかも重さは、最大でも10kg程だ。
俺の持ってる“空間袋”は、レベル4の奴が愛を注いだものだ。それで金貨10枚はする高級品だ。おかげで、見ための200倍の物を入れられるし、中の物は腐らない。
「ちょっと待ってろ。俺が旨い飯を作ってやるから。」
「私も見てていい!?お肉なんて久しぶりだから、ちゃんと見て、覚えたいの!」
「もちろん良いぞ。それじゃ、炊事場まで案内してくれ。」
そしてハナの案内で、近くの炊事場にやってきた。まず最初は水汲みからだ。500m程先にある沢まで行って、水瓶に水をたっぷり入れる。
ちなみにこの水瓶も“空間”系の愛が入っていて、見ための100倍は入る。
一通りの準備ができたところで、俺は袋から肉を取り出して切ろうと思ったが、包丁が見当たらない。
「包丁は?」
「あ・・・包丁は無いの。」
「やっぱり“死”か。」
「うん。だから小さなナイフなら。」
包丁を所持していると、何かの拍子に飛んできた事があったそうだ。その時はかすり傷で住んだらしいのだが、それ以来、包丁すら怖くて持てないらしい。だから、もし刺さっても死なない程度のナイフしか持っていないそうだ。
生活するだけで、これほど死ぬ危険で溢れるなんて。相当生きづらいはずなのに、ハナは懸命に生活している。どれほど強い心を持ったいるのだろう。
俺は借りたナイフで、色々な料理を振る舞った。ステーキから、シチュー。魚介類のカルパッチョに、チーズたっぷりのピザ。ご飯に、ゆで卵を乗せたサラダ。
それらを、ハナは涙を流しながら食べてくれた。お肉も、お魚も、乳製品も、ここではまず食べられない。魚は沢で取れるらしいが、まだ幼いハナにとっては、月に1度取れればいい方だそうだ。
「タイガおじ・・・タイガさんは、その手袋外さないの?」
そう聞いてきたのは、寝る前に身体を拭いている時だった。俺は気を使って外で体を拭いていたのだが、ハナは俺から離れまいと、イソイソと着いてきたのだ。
「これか?これを外すと、触れる物全て壊れるからな。何も使えなくなるんだ。」
「“破壊”ってこと?でもその手袋は?」
「これは、俺の親友が作ってくれたんだ。“再生”のレベル5なんだぜ。凄いやつなんだ。」
レベル5になる人間は、全体の0.0001%と言われている。1万にいて、やっと1人いる計算だ。しかも“再生”は珍しく、ありとあらゆる分野で引っ張りだこだ。
こいつも、俺と同じ施設で育った。俺の“破壊”を食い止められる“再生”の能力のおかげで、俺と普通に遊べる唯一の存在だった。だがレベルが上がると直ぐに大企業からオファーが来て、施設を出て行っってしまった。後で知ったが、稼いだ金で、施設を援助していたそうだ。
そんな友達が、俺のレベルが上がった事を心配して、この手袋に“再生”を与えたのだ。この手袋だけじゃない。俺の肌に直接触れる物は全て、あいつから貰った物だ。
「素敵な人なんだね。」
「そうなんだよ!あいつは本当に良いやつで!」
「でも、私にとってはタイガさんの方が、素敵に思う。だってわざわざここまで来て、私の家族になってくれたんだもん。」
ハナはそう言うと顔を真っ赤にして、テントの方へと走って行った。
俺はもの凄く嬉しくなって、そして涙が出てきた。胸がいっぱいになって、しばらくはテントに戻れなかった。
そして、翌日。俺はハナと別れて、一路街へと歩みを進める。金を稼いで、必要な物を色々買いそろえるために。
「待っててくれハナ。」
「いってらっしゃい。気を付けてね。」
俺はそうハナに言って、ハナの頭を一撫でする。ハナも寂しさを見せないように、努めて笑顔を返してくれた。
季節は初春。次に戻るのは春の終わりになりそうだ。
この世界の法則的な物を、ざっくりと分かって頂けましたでしょうか?
かなり無理のある設定で、ご都合主義的なところがあります。
ですが、メインは二人の生活なのです。ご了承ください。
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