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東の島国、ヤハタからやってきた貿易船がシバの港に到着した。多くの人が行き交い、賑やかなその港は十年に一度の祭典『アルハザール』があるからか、様々な国から人々が見える。
ヤハタの国の少女アスハは船から降り立つとぐるりとそんな光景を見回した。
「さすが、シバ。すごい賑わいだなぁ」
感嘆のため息をつくと後ろにいるはずの人物を振り返る。
「...どうでもいいが、俺は早く休みたい。この船揺れすぎだ...」
返ってきたのあまりにも、やる気のないものだった。手で頭をかきながら、眉間にしわを寄せているだろう。顔の全面を覆う鉄の仮面をしているが、穴から見える目は不快げだ。
「リアム、少しは我慢しなよ。ゴーレムのくせに何でそんなに船に弱いの?」
リアムはそれには答えずふいっと、顔を逸らした。その様子に苦笑すると、人でごった返す方向へ足を向けた。
シバの地を大きく横切る大通りは『アルハザール』が行われる闘技場と、出場者たちが宿泊する施設を隔てるようにある。その両脇には多くの出店が立ち並び、いい匂いをはなっていた。
アスハとリアムはそんな大通りで出店を見て回りながら、ぶらぶらと歩いていた。アスハの手にはすでにいっぱいの食べ物があった。
「で、俺たちはどこに泊まるんだ?」
「んー、そうだなぁ。私たちは国の代表じゃなくて、予選からの出場だから専用の施設には泊まれないからそのほかで、探さないとな」
「民間のところ探すか」
アスハはリアムの提案にうなづくと、食べ物をほおばりながら辺りを見回し始めた。
そんな二人はとても目立っていた。
前を歩くのは、独特な民族衣装に身を包みたくさん食べ物を頬張る小柄な少女。そして、その後ろを行くのは長身で細身な体躯だか、顔には異様な鉄の仮面を付け人物。
本人たちは気づいていないのか慣れているのか、全く気にする素振りはないが、多くの視線が集まっていた。
しばらく大通りを歩いていた二人だったが、突然リアムが立ち止まった。何かを感じたのか、雰囲気が険しくなっていく。
「リアム?どうしたの?」
アスハの問いには答えず、ただ大通りから横にはずれた細い道に目を向けた。
「そこに何かあるの?」
「...ああ。ちょっとやばい雰囲気だ。行くか?」
アスハはほおばっていたものを一気に飲み込むと小さくうなづいた。




