表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コワモテ!  作者: リソタソ
友達!!
PR
13/105

このみちゃんの・・・・・・頼み事?

「ンノウウウウゥ!!!! ファッキンカワバーーーーーーータアアアアア!!!!!!!!」

 チャイムが授業終了を告げると、ダズィー先生は金切声で叫びながら教室を出て行った。

「あいつ、いちいちうっさいのよね」

「あ、このみちゃん」

 先生の声が廊下からまだ聞こえてくる間に、このみちゃんたちが私の席に集まって来た。

「あいつ太宰か川端しか言ってないよねー」

「きっとツンデレさんなの」

「地味に川端の作品の解説もお上手だしさ」

 みんな結構授業ちゃんと聞いてるみたい。

「ふふ」

 気が付けばつい笑い声が漏れてしまう。

「どうしたの叶恵」

「なんだか、微笑ましくて、それにこうやって休憩時間に友達に囲まれるのが嬉しいの」

 ちょっと前までは想像もつかない、友達のいる光景。私の周りで友達がお弁当を食べていたり、雑談をしていたり、他の人からしたら当然の光景なのかもしれないけど、私にとっては特別で、何よりも尊い時間のように思えている。

「もー、にやにやしてすごい気持ち悪いさー」

「え!? そんなにニヤついてる?」

「そうなの。女子高生に興奮するおじさんみたいなニヤつき方なの」

「お、おじさんみたい!?」

「言われてみればそうさー」

「全く……そんなに顔するんだったら友達止めちゃおっかなぁ……」

「えー!! それはヤダぁ! お願い、止めないで! にやけるの止めるからぁ!」

「冗談よ叶恵」

 私が必死に懇願するとこのみちゃんがくすっ、と笑い燃え広がるようにみんなの笑い声が上がった。ふぅ、冗談でよかった……。

 私の友達を止めないで、という思いだけは本心なんだけど。

「ところでさ、叶恵」

 このみちゃんはスマホを操作しながら私に問いかけた。

「ちょっとね、私急用ができちゃってバイトの代わりを探してるのよ」

「代わり見つかりそう?」

 バイトを休む時って代わりを探すの大変なんだよね……うぅ、このみちゃん今頃すっごい心を悩ませながらファーストフード店のバイトの代わりを探してるんだ。と、友達として力になりたいけど、こればっかりはどうしようも……。

「それでね、良かったら叶恵に代わって欲しいんだけど」

「……えええええええ!?」

「なにオーバーな驚き方してんのよ」

「わ、私ぃ!?」

「そう、あんたに代わって欲しいの」

「む、無理だよっ! だって私ファーストフード店での働き方分かんないし、そもそも所属してないし、勝手に代わりで入ったら現場が混乱しちゃうかもだし……」

 私はあたふたと言葉を並べる。そんな姿を見ながらこのみちゃんが「あー」と声を洩らした。

「そっちじゃないの」

「え?」

「叶恵に代わって欲しいのは今日だけやる単発のバイトよ」

「単発のバイト?」

「うん。仕事の内容は私もあんまり知らないんだけどね、今日やるって先方に契約してわざわざ時間を作ってもらったのに私の用事で行けなくなるって連絡したら、誰でもいいから代わりを立ててくれって言われちゃって」

 このみちゃんがスマホを覗きながら頭を掻いた。

「私らにも言ってきたんだけどねー」

「みんな用事があって無理なの」

「そこで、あんたにお願いしたのよ。……ダメ?」

 顔をスマホを見るためにうつむかせながら、目だけで私を見る。う、上目遣いだ。

 かわいっ!! このみちゃんの上目使いなんて破壊力っ!!?

「お願い、私にはもう、アンタしか頼れる友達はいないの」

 頼れる友達はいない、頼れる友達、友達……!!!

「分かった! 私に任せてこのみちゃん!!!!」

 そんな風に友達だなんて言われたら、断れるわけないじゃん!!! どん、と胸を叩いて承諾する。

「おっ、さっすがは私らの友達さー」

「いい友達もったの、ミトッチ」

 あああ、そんなに友達友達って連呼しないでよぉ、嬉しくってまたにやけちゃいそう。

「ありがとう、叶恵。じゃあ、先方には連絡しとくね」

 スマホで連絡を送りながら、このみちゃんが「それと」と続ける。

「今週末にでもさ、一緒に遊びに行こうよ。私たち友達五人で」

 このみちゃんがにっ、と口角を上げて提案した。

「なにそれ、面白そうなのー」

「いいねー、友達同士でどっか行くのなんて久しぶりだしー」

「大賛成なのー」

 他の三人もこのみちゃんの提案に乗り気で答えていく。

「どう、叶恵。アンタはもちろん、主役だから来てくれるわよね」

「うん! もちろんだよ」

 私は有頂天になって答える。だって、仕方ないよ。やっとできた友達と、初めて週末の約束ができたんだもん。ここ最近で一番うれしい事かも。



 お弁当を食べた後、私は廊下に設置されている水道で歯を磨いていた。小学生のころからずっとやってるからもう癖になってるんだよね、これ。でも、この学校だとあんまりやってる人を見ないから、たまたま廊下を通った他の生徒に物珍しそうに見られちゃう。うーん、いつか背中を押されて蛇口に顔をぶつけられたりしちゃわないかなー、と背後をちょっとだけ警戒してみる。だって、やってきそうな人多いんだもん。不良ばっかだし。

 ま、暫くは大丈夫そうかな。私は気を抜いて水を口に含んで濯ぎ始めた。

「叶恵ちゃん!」

 ばん! と背中を叩かれる。

「ぶっーーーーーーーー!!!!」

 驚いて私は思いっきり水を噴き出してしまった。

「あれ? もしかして、不味かった?」

 爽やかな男の子の声。

 真正面の窓ガラスが、私の吐き出した歯磨き粉の泡だらけになって、ゆっくり垂れている。

「もう、誰!? って……」

 振り返ると、顔面蒼白かつ頬を引きつらせた作治君が立っていた。

「さっきの、作治君?」

 作治君の顔がさらに青ざめる、というかどんどん白くなっていく。……そう言えば、久しぶりに会ったから忘れてたけど、これってもしかして……。

「ごめんなさい、背中を叩いてしまって。僕みたいな屑が、叶恵ちゃんと同じホモサピエンスである資格ないよね……はぁ、何で僕はセミに生まれなかったんだろう。七年間引きこもってから一週間鳴かずに生きてそのまま死ねるのに……」

 あああああ!!! ネガティブ入ったああああああっ!!!! もう全身の色が背後の真っ白の壁と同じ位に脱色してるううううう!!!!

「だ、大丈夫だよ、作治君! 私気にしてないから!」

「気を遣わせてごめんね、はぁ……」

 もう脱色どころか無色透明になりつつある作治君。なに、君カメレオンなの!? っていうか、ネガティブになるだけでそんなことできんの!? もはや超能力だよ!!!

「そ、それより久しぶりだ作治君!」

 も、もう話題を転換させるしかない! きっとそのうちテンションあがってもとの人の色に戻ってくれるはず!

「あ、うん。久しぶりだね……」

 あ、ちょっとだけ色が戻ってきた。ぎりぎりモノクロ。

「心配してたんだよ。あの日保健室に運ばれてからずぅっと学校休んでたし」

 作治君は、私が転校してきた日に下中君に殴られて保健室に行ってからずっと休んでた。相当ひどいけがをしてたんだろうなぁ。

「怪我の具合は大丈夫?」

「全然平気だよ。打撲程度だったからあっという間に治っちゃったよ」

 完全に人の色に戻った作治君。にこりと爽やかスマイルを浮かべながらぽんぽん、と自分の胸を叩いた。

「良かったぁ。でも、どうして一週間以上も休んでたの?」

「……そっか、叶恵ちゃんはこの学校の保健室の先生を知らないか」

 突然声に影が差した作治君。え!? なに、保健室の先生?

「大丈夫、叶恵ちゃんは被害を受けることはないから」

「被害!? なに、どうしたの!? 何があったの!?」

「できれば、聞かないで欲しいな、ははは……」

 さ、作治君が乾いた笑いを立てながら、明後日の方向に目線を逸らしている。

「わ、分かった。これ以上は聞かないよ」

 なんだか、触れちゃいけない部分みたい。これ以上はよしておこう。

「あ、そうだ叶恵ちゃん。さっき教室で聞いたんだけど、今日水戸さんのアルバイトの代わりを務めるんだって?」

「そうだよ! このみちゃんに友達だから、って頼まれたんだ!」

 友達だから。ああ、なんていい響きなの。

「叶恵ちゃん、なんだか嬉しそうだね」

「え? 分かる?」

「すっごい顔がにやけてる」

「えー! おじさんみたい?」

「おじ……いや、そこまで酷くはないかな?」

 そこまでってことは、作治君から見てちょっとは酷いんだ……。よし、にやけるのを止めよう。ぱんぱん、と両頬を叩いて気合注入!

「ふふ、良かったね、友達ができて」

 そんな私を見て、作治君がにこやかに笑った。

「うん! ……あ、でもでも、この学校で一番最初にできた友達は作治君だよ!」

「えっ!?」

 作治君がちょっとだけ驚いた顔をした。

「も、もしかして、いや、だった?」

 首が取れそうなくらいに彼は首を振った。

「そんなことないよ! 僕も嬉しい限りだよ! 叶恵ちゃんみたいな可愛い友達初めてできたよ」

「か、かわいいって……懸さんみたいなこと言わないでよぉ」

「ははは、ごめんごめん……ところで、叶恵ちゃん」

「何?」

 さっきまでの和やかな空気のまま明るく返事をしたのだけれど、ちょっとだけ作治君の声に薄暗い影を感じた。

「友達から、一つだけアドバイスしてあげる」

 それを意識したのは、この一言からだった。

「水戸さんには、気を付けた方がいいよ」

「……えっ!?」

 はっきりと耳に届いた言葉。私はそれを否定したくて聞き返した。でも、作治君はすっかり元の爽やかな表情に戸惑って、次の言葉はいつもの朝のニュース番組のキャスターみたいな爽やかな声で返答した。

「じゃ、それだけ。午後の授業も頑張ろうね」

 作治君はさっさと私の前から立ち去ってしまった。内また気味で時折「あいててて……」と言いながら尾てい骨のあたりを摩る作治君の後姿を私はすぐに曲がり角に隠れてしまった。

「……気を付けるって、どういうこと?」


ども、作者です。作者の中で一和=諏訪部さん、懸=小西さん、と脳内ボイスが確定しているのですが、どうも誰の声でもないのが作治。作者の中でも存在感の無い男です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ