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なんか今更って感じだな

「……驚いた?」

 神ちゃんは楽しそうに、悪戯を成功させた後の無邪気な子供のように笑っていた。

「……お前何者だ?」

 さっきと同じ問い。

 だけどさっきとは違うことが一つ。

 それは俺の感情だ。

 警戒心なんてものはなくなっていた。

 いや、違うな。正確には警戒心なんてものが気にならなくなるほどに驚いていたんだ。

 言い換えれば、気が動転していた。

「……神」

 今度の神は名前ではなく、ゴッド。

 本当の意味での神ということなのか?

「ーーじゃない」

 違うらしい。

「ふざけるなっ!」

 いつもならばズッコケたりしてリアクションをするところだが生憎。

 今の俺にそんな余裕はない。

 あるわけがない。

「お前はなんなんだ! まじめに答えろ!」

 少なくとも普通の人間ではない。あるわけがない。

 最初にこいつは言っていた。

 人ではないと。

 いや、そう直接的に言ったわけじゃない。

 それでも、そうだと思わせる言い振りだった。

 そして、それを否定することもなかった。

「なんでお前がその姿を知っている!」

 その姿とは当然、鏡に映っている姿のことだ。

 あれは、俺が、オレだった頃の姿。

 前回のルートでの姿だ。

「……知っていて当然」

 笑うを止め。冷静な、言い換えれば無表情になった神ちゃんは俺にまっすぐな眼差しを向ける。

 その眼差しに、俺は無意識のうちに半歩後ろに退いていた。

「……なんで」

 これは恐怖か?

 ありえない。

 そう言いたくなるものの俺は自覚していた。

 これは恐怖だ。

 俺は今、この一見普通の少女相手に恐怖を覚えている。

「……私がやったから」

 やった?

 何を?

 聞きたいと聞きたくない。

 二つの感情が俺の中で渦巻いていた。

 神ちゃんは俺の心が読めている。

 この葛藤も知っているんだろう。

 やめてくれ。

 神ちゃんが叶えてくれることを信んじて、望んで、願って、俺はそう心の中でつぶやいた。

「……君を、神代(かみしろ)千晶(ちあき)をこの世界に転移させた張本人」

「……えっ?」

「……私が君をこの世界に呼んだ。君を召喚した」

 なんで?

 どうして?

 そんなことをした?

 俺の胸の中にあるのはただただ、疑問だった。

 ただ普通の一般ピーポーをどうしてこんな世界に呼んだ?

 ただ普通の、普通の少女(・・)だったオレを!

「……ごめんなさい。君の人生を狂わせてしまったのは私のせい。だけど、君は来た。来たという事実がある。私の召喚術はまだ未完成。相手の気持ちを考えないで強制的に召喚することなんて出来ない。でも、事実君はここにいる。つまり、君は望んでいたはず。この世界を、ううん、元の世界じゃない別の世界を」

「……望んだ? オレが?」

 認めよう。

 それは、事実だ。

 オレが産まれたのは日本という国の首都。東京だった。

 そこはとある剣術、七花流の開祖の家だった。

 七花流剣術二代目当主の父と母の間には長らく子供が与えられなかった。

 そして、母が四十を過ぎたころにやっと産まれたのがオレだった。

 父としては七花流剣術を継がせるための後継者が、息子が欲しかったんだと思う。

 けど、オレは娘だった。

 オレは父が望んむ子供になろうと必死になった。

 だって、オレを産んだせいで母は死んでしまったから。

 高齢出産だったからなのか、母はもういない。

 父と母の間に息子が出来る可能性は未来永劫、完全になくなってしまったんだ。

 女であるオレでも七花流剣術を継ぐことが出来るようにとオレは毎日の鍛錬に勤しんだ。

 だけど、父はそれを認めてはくれなかった。

 ある日。養子が来た。

 その子は孤児だった。

 父はその子を跡継ぎにするつもりだったらしい。

 父にとって重要だったのは血の繋がりではなく、男だということ。

 違う場面ならばいい人だとなったかもしれない。

 だけど、あの時のオレにとってそれは死刑宣告にも等しかった。

 父の中からオレは消えた。

 父はその養子に七花流剣術の全てを叩き込んだ。

 どうやらその養子は剣の才能とやらに恵まれていたらしく、上達速度は凄まじかった。

 オレはそんな父と養子の鍛錬の毎日を密かに見ていた。

 そして、高校二年、夏のある日、悟った。

 ここにオレの居場所はない。

 家を飛び出し、オレはがむしゃらに走った。

 小さい頃から息子になろうとしていたせいなのか、オレは随分と男らしく成長し、短髪で絶壁だったため、オレのことを女だと気付く奴は一人もいなかった。

 路地裏でオレは寝た。

 そして目覚めたらこの世界にいた。

「……そう……だな」

「……戻りたい?」

 鏡をどこかにしまいながら問う神ちゃん。

 もちろん。元の世界にという意味だろう。

「戻りたくない」

 どうせあそこに居場所なんてない。

 それに、既にこっちの世界での生活の方が倍以上に長いんだ。

 むしろ今更戻されても困る。

 まあ、そんなこと言っても疑問符を浮かべられるだけだと思うけどな。

「……そう。こっちの世界に来て約七十年。すっかり慣れたってこと?」

「まあ、そうだな」

 ……ん?

 待て。

「……今、なんて言った?」

「……すっかり慣れたってこと?」

「……その前……」

「……こっちの世界に来て約七十年」

「なんで、知ってるんだ?」

 若干のためらいを匂わせながら言う神ちゃん。

 俺をこの世界に召喚したのがこの神ちゃんだというのは置いておいて、もしも、仮にそうだとしても今はまだこの世界に来てから一ヶ月前後のはずだ。

 約七十年。

 それはつまり、前のルートでのことを知っているってことに他ならない。

「……やっぱり。前の分岐では私と会えなかった?」

 そう言ってちょこんと首を傾げる神ちゃん。

「……どういうことだ?」

 俺の疑問に神ちゃんは言い辛そうな、気まずそうな、悲しげな表情を見せた。

 口をパクパクと開けたり閉めたりを繰り返し、やっとのことで口から紡がれた言葉は。

「……呪い」

「呪い?」

「……世界の壁を突き破るために掛かってしまう呪い」

「……どんな呪いだ?」

 さっき以上に言い辛そうにする神ちゃん。

 纏う雰囲気から俺は最悪なことを想像してしまった。

「……私が君をこの世界に召喚した目的。それを果たさずに死んだ場合、君の魂は正しい流れに乗らずに最初からやり直す」

「……は?」

「……六道輪廻って知ってる?」

「ああ。たしか、人は死ぬと六つの世界のどこかで転生するとかなんとか」

「そう。普通ならそれを繰り返す。だけど君はその流れから隔離された」

「それが最初に戻るってことか? けど……あっ」

「そう。ここでいう最初とはその世界での最初。つまり、この世界に召喚された直後まで時間が巻き戻る」

「記憶があるのはいいのか?」

 時間の巻き戻しならば記憶があるのはおかしい。

 それとも、その巻き戻しやらの発揮点である俺には影響がないとかそういう感じなのか?

「正確には時間の巻き戻しじゃない。横の時間軸。並行に存在する世界。死ぬと意識が別の並行世界の最初の自分の乗り移る」

「パラレルワールドってやつか?」

「そう。今の君の身体はこの時間軸での最初の君の身体。君が生まれ持った身体じゃない」

 俺本来の身体じゃない。

 てことは身体に前と違うことがあるのは別におかしいことじゃないのか?

「……肯定する。横の時間軸、つまりパラレルワールドとはもしもの世界。君が女じゃなかったもしもも存在する」

 そういうことか。

「納得した。俺は元の世界から離れたかった。神ちゃんは別の世界の人間を欲していた。だから俺がこの世界に呼ばれ、神ちゃんの目的が果たされずに俺が寿命で死んじゃったから俺の意識は別のパラレルワールドの最初の俺だった人間の中に入ったったことだな」

「……そうなる」

 となるとどうしても気になることが二つある。

「何?」

 小さくつぶやいて再度首を傾げる神ちゃん。

 そういえばこっちの考えは文字通り全部読まれているんだったな。

「疑問その一。この身体の元の持ち主の意識はどうなった?」

 今この身体で感じられる意識は俺ただ一つ。

 だけど、神ちゃんの話じゃこの身体には元々の人格があったはずだ。

 一体それはどうなったんだ?

 俺という意識によって上書きされ、なくなってしまったのだろうか?

 もしそうだとすれば、俺は別世界の俺自身を殺したのと同じだ。

 この世界では殺す覚悟が必要になる。

 それは知ってるし自覚もしてるし覚悟もしている。

 だけど俺は今まで、悪人じゃない人を殺したことはない。

 たとえ自分自身だとしても、それは俺という人格ではないのだ。他人と同じ、人殺しと同じだ。

「うっ」

 その事実に強烈な吐き気に襲われた。

 頭がクラクラする。

 そんな俺の身体を神ちゃんが優しく支えてくれた。

 その顔は優しい色に染まっていた。

「大丈夫。心配要らない。君が違う君の身体に入っているってことは、この世界はそこを点にして分岐している一つの世界」

 ……どういうこと?

「……えと、君のその身体に元々いた人格は別の時間軸でちゃんと存在しているはず。間接的な人殺しにはならない。大丈夫だよ」

「……そっか」

 優しい顔になっている神ちゃん。

 俺を安心させるための嘘かもしれない。だけど、それを信じることにしよう。

 神ちゃんが俺の頭を優しく撫でる。

 あれ? なんでかな?

 どうして()、泣いてるのかな……?

「……そう」




「……ここは……」

 どうやらいつの間にか気を失っていたようだ。

 ベッドから上半身を起こし、俺は周囲を見回した。

 んー。見覚えのない部屋だな。

 手を握ったり開いたりを繰り返して身体に異常がないことを確認した後、俺はゆっくりとベッドから出た。

 俺は立ち上がると目を閉じた。

 意識を外の世界から中の世界。自分の中に向ける。

 そうすれば感じられる確かな脈動。

 魔力は戻っている。

 目を開けた後、上に向けた手のひらに力を込める。

 よし。大丈夫。

 魔力は完全に戻っているみたいだ。

 俺の手のひらから放出される何色とも言えない中途半端な色を見て俺は安堵の息を漏らした。

「さて、行くか」

 ここがどこなのかはまだわからない。

 別に嫌な感じがするわけじゃないが、このままここにいるってのも癪だったため、俺はこの部屋から出ることにした。

「……どこだ?」

 扉を開け、その先に広がる光景に俺はため息をついた。

 覚えているのは五体の獣型スライムを倒した後、魔力の使い過ぎで倒れたとこだ。

「てっきり中を知らないだけで知ってる家に運ばれたと思ってたんだが……」

 予想は外れたらしい。

 今見える光景に俺は全くこれっぽっちも見覚えがなかった。

「んー。戻るか」

 さすがに知らない場所を冒険する気にはなれなかった。

 ということで俺は再びベッドにダイブした。

 ボフンと音を立てて跳ねるベッドの上。

 首都を除いてはそのほとんどが前の世界の日本と比べると技術が発展していない。そのため、一般的なベッドはこんなにも跳ねたりしないのだが、これは日本のベッド並みに跳ねる。

 なんでだ?

「どうやら目が覚めたみたいだな」

「……ん?」

 どこかで、すごく最近聞いたことがある声に俺はベッドの上でうつ伏せになっていた顔を横に向ける。

「……あっ」

「ふふ。どうやら私のことを覚えているみたいだな」

「……忘れるわけないだろ?」

 長年の宿敵。

 ライバル。

 恩人。

 とかじゃない。

 ただ単純に、すごく最近会ったことがあるだけだ。

 腰に剣を指している女性。

 そう。あの女隊長さんだった。

 あの時は上半身だけ鎧のようなものを着ていたが、今はそれはなく、シンプルだけどちょこちょこっと刺繍があって綺麗なワンピースを着ていた。

「……ふむ」

「む。どうかしたのか?」

「いや……」

 この女隊長。ずっと気にしなかったのだが、相当に若いんじゃないだろうか?

 世が世なら大学生、いや、下手したらもっと下かもしれない。

 女性の外見は早熟なことが多い。もしかすると精神面、肉体面、共に早く成長した高校生のようにも見える。

「何歳?」

 俺の質問に女隊長はあからさまに目を見開いて驚く。

 うだうだ悩むくらいなら聞いてしまえ。

 自分で考えることはそりゃ立派でオススメされることだろうがだからと言っても世の中考えただけじゃわからないことなんてたくさんある。

 もしもないとすれば世の中に疑問だなんてものは無くなってしまうだろう。

 だけど人はそのまで出来た生物じゃない。

 知識量に差があれば思考力にだって差はある。

 まあ、あれだ。個性というやつだ。

 俺はずっとこう教えてきた。

 わからないことがあったら一瞬だけ全力で脳を回転させろ。

 それでわからなかったら妙なプライドなんてものはそこらせんの魔獣にでもくれてやれ。

 迷わずにそれを知る人に聞けってな。

 無論。ただ聞くだけじゃいけない。

 その答えから自分なりの答えも見つけないといけない。じゃないと進歩なんてありえないからだ。

 まあ、今回の疑問についてはそんな大層なことじゃないが。

「アッハッハッ。君は本当に面白いな」

 表情を一変させて大声で笑う女隊長はん。

 その顔に張り付いているのは無礼なことを聞いている俺に対する怒りとかそんなネガティヴなものじゃない。

 普通に楽しそうだ。

「クックックッ。いやいや、君みたいな子は久し振りだな。女性に年齢を聞くのはマナー違反だぞ?」

「そうだな。で?」

「で、とは?」

「何歳?」

 怒っているような感じは一切見られない女隊長だが、俺の言葉に呆れるように深い、ふかーいため息をついた。

「全く。人の忠告は聞くものだぞ?」

「いやいや。そういうのいいから何歳?」

 反省なんてものは欠片もない俺に女隊長はまたまたため息をついた。

 いやー。俺のせいでどれだけの幸せを手放してしまったんだろうね。ワラワラ。

「はぁー。私は現地点で十八だな」

 目を瞑り、頷いて数えているかのような女隊長に俺は小さく笑った。

「へぇー。随分と若いな」

「む。悪いか?」

 本気じゃないようだが、頬を膨らませたいかにも私怒ってますオーラを出す女隊長殿。

「拗ねるなよ。……そういえば名前を知らないな」

「む。そういえば私も君の名前を知らないな」

「あー。そうだな。俺はチアキ」

「そうかチアキ。私はファスだ」

「多分俺を助けてくれたんだよな?」

「そういうことになるな。いやいや、驚いたぞ? 村に帰還し、チアキと別れた後、突然一人の少女が慌ててやってきてな」

「……その少女、名前言ってたか?」

「ああ。確かなリティカと言っていたな」

 そういえば最後はリティカの前で倒れたんだったな。

 心配、してるだろうなー。

「今さらだけどここどこ?」

「ふむ。ならばまずはチアキが意識を失った原因から話そうか」

 ファスに言われて俺はベッドから起き上がると窓際にあるテーブルに案内された。

 少しここで待ってくれと言われたんだが、もう五分はたったんじゃないか?

「待たせてしまったな。すまない」

「遅い」

 やっとのことで現れたファスは一つのポットと二つのカップ。あと小さなカゴを持っていた。

 その持ち方に器用だなーっとくだらないことを思いながらも俺は文句を口にした。

「そう言うな。代わりに紅茶とクッキーを持ってきたんだ。許せ」

「……むしろそのせいで待たされた気がするんだが?」

 ごまかすように頬を掻くファス。

「まーいいや。それで? 話してくれるんだろ?」

「当然だ」

 テーブルを挟んで反対側に座ったファスはまず紅茶を一口。

 俺の問いに頷くと話し出した。

「チアキ自身わかっているかもしれないが気を失った理由は単純明解、魔力の使い過ぎだ」

「……まあ。だろうな」

 その瞬間、ファスの目がぎらりと光った。……気がする。

「……聞いてもいいだろうか?」

「……なんだ」

 躊躇い気味に切り出したファスに嫌な予感がした。

 まあ、状況的に聞かれることは一つしかないんだけどな。

「どうしてチアキは魔力を体外に出せるんだ?」

 あまりにも、あまりにも単純な質問。

 今さらだが、すごく今さらだが、今の俺の身体は()だ。

 前にもチラリと話したが、この世界では男女の力関係が前の世界、地球と違って逆転している。

 その理由がこれ、魔力だ。

 男は肉体面で女よりも優れていることが多い。

 対して女は魔術面で男よりも優れていることが多い。

 そしてこの世界で戦力の大半を担っているのは肉体面じゃない。魔術面だ。

 男は女よりも保有魔力が少なく、尚且つそれを外に発揮することが出来ない。

 つまり、魔力をわかりやすい魔法として使うことが出来ないんだ。

 男は魔力を体内で巡らせて、肉体強化として使うしかない。

 対して女は魔力を外にも内にも使うことが出来る。

 そのため、元々魔力の多い女は男よりも素での肉体面が劣っているとしても、体内で活性化させた時に男よりも強い肉体的力を得ることが出来る。

 それだけでなく、魔力を外に放出することも出来るため、遠距離からの攻撃も出来る。

 つまり、戦闘力において女は男よりも明らかに上なのだ。

 女としての自覚が薄かったというか、なかった俺からしたらどうでもいいことだが、俺の外見は短髪で絶壁。

 良く男と間違えられたのだが、今のこの身体は正真正銘の男だ。

 だけど、何故かこの身体になっても俺は魔力に溢れていた。

 前のルートでは凄まじい量の魔力があったわけじゃない。

 女としての平均的な量と質だったはずだ。

 だけど、この身体になってからというもの、そのどちらも著しく良くなっていた。

 そして、本来男ならば不可能な魔力の体外放出、それも可能だった。

 多分。中の人が女だからなんだろう。

 だけど、ファスに人生を繰り返しているなんて言うわけにもいかないだろ。

 てことで。

「俺【例外持ち】なんだよ」

「……やはりそうか」

 【例外】

 魔法とは違うこの世界独特の概念がこの【例外】だ。

「やはりって、想像してたのか?」

「ああ。チアキが魔法を使った瞬間に思っていた。男であるチアキが魔法を使う、これは固有能力【例外】でなければありえないからな」

 この世界の誰もが本来秘めている力。それが【例外】だ。

 この世界の魔法は万能というわけじゃない。

 不可能というものがある。

 だけど、そんな不可能さえも限定的に可能とするからこその【例外】だ。

 俺のこれもある意味【例外】だろ?

 嘘じゃない。

「それでここはどこだ?」

「ここは私の家だ」

「家? パティ村では部屋を借りてるだけじゃなかったか?」

「そうだな。だから言っただろう? ここは私の家だ」

 ニヤリと笑うファス。

 ああそうか。

 どこか楽しそうなファスの顔を見て、さっき見た覚えのない外の光景を見て、俺は理解した。

「そうだ。ここはこの国の首都。【パリティカ】だ」

 

 

 

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