君のまちの駄菓子屋さん!
偶然立ち寄ったお店、そこには閉店に付き90%引きの
手書きのビラが貼ってあった。
中を覗き込むと文具や雑貨が売っていた。
その頃丁度、語学講師を始めたばかりの私。
「そうだっ、語学教室で使うのに何かいいものありそうだ!」
そう思って店の中に入った。中からお爺さんが出て来た。私は、
「領収書ありますか?」
と尋ねた。お爺さんは答えた。
「どこかにあったはずなんだけどねぇ」
そう言って辺りを探し始めた。お爺さんは探しながら言った。
「この店はお婆さんが切り盛りしていたから、
わしはどこになにがあるのかさっぱりじゃ」
「そうなんだぁ、あのぉ他の商品見てるからゆっくりでいいよ」
私は笑顔でそう答えた。そして今度は私から質問してみた。
「このお店はもう閉店しちゃうんですか?私初めて来たの
にいきなり閉店しちゃうのも何だか寂しいなぁ」
そう言うとお爺さんは答えた。
「お婆さんが死んだから荷物を片づけようと思ってね」
「そうだったんだ・・・・・」
私はその店で鉛筆や鉛筆削りと共にお爺さんが
見付けてくれた領収書を買った。
家に帰った私はあった出来事を君に言った。
そうすると君は答えた。
「そうなんだぁ、懐かしいなぁ俺小学生の頃よく行って
た駄菓子屋だったんだよねぇ。
気付かないうちにもうそんなに時間が経過してたんだねぇ、
そう思うと何だか寂しいなぁ・・・・・」
「そうだったんだねぇ・・・・・」
_____私にもその気持ちよく解るよ。とってもよく解る。
だけど大丈夫、思い出は消えたりはしないもん。
君とほんのちょっぴり思い出を共有出来た瞬間、
私は温かな幸せに包まれたんだ。そんなあの日を今でも
しっかりと覚えている。
今はもう木戸が閉め切られているあの小さなお店の前を通る度に、
今でも君の子供の頃からの思い出を、あの頃君から聞いた懐かし
い話をずっと共有している気がする。
綺麗なお店はいっぱいあるけれど、どんなに洒落たお店より
も私はそんな小さなお店が好き・・・・・。
時が経っても今でもその気持ちだけはあの頃のまんまだよ。
そして君もあの頃のまんま。私の喜びは決してお金では買う
事の出来ない、そんな素朴な場所にあるんだ。