確率が見える男
「確率が見える男」
男は街中で考え事をしている時に周囲を見ると、
いつも数字が目に映る事に気づいた。
周囲の人間が着ている服に書かれたナンバー。
電光掲示板。
周囲の会話に含まれた二桁の数字。
[18][33][68]⋯。
やがて男は気づく。
これは確率を表示しているのだ。
「何もない空間に数字が現れる事はない」
「確率は毎瞬変動する」
「100%は存在しない」
やがて男は最愛の女の死亡確率を知ってしまう。
男は病院の廊下に立っている。
ベッドの上には、あの女性。
近くのモニターの上には相変わらず数字が浮かんでいる。
生存確率7
医者が言う。
「臓器提供者が見つからなければ…助かりません」
男は周囲を見る。
医者が助けられる確率3
何もしなければよい確率1
奇跡が起こる確率2
男は静かに呟く。
「…やっぱりか」
彼は知っていた。
ずっと前から。
彼女と出会った日から。
浮かんでいた数字。
彼女が助かる確率93
ただし条件付き。
男が臓器提供する確率93
男はまた周囲を見る。
5年以内に死ぬ確率99
ずっと疑問だった。
なぜこんなに高いのか。
今ならわかる。
男は医者に言う。
「…俺の臓器を使ってください」
医者は驚く。
「しかし、それは…」
男は笑う。
「大丈夫です」
彼の視界に数字が変わる。
生存確率7
↓
生存確率92
手術の日。
男はベッドの上で天井を見ている。
彼女が幸せに生きる確率94
男は小さく笑う。
「悪くない確率だ」
手術室のライトが消える。
数ヶ月後。
女性は退院する。
病院の外。
空を見上げる。
なぜか胸が温かい。
理由はわからない。
ただ不思議と、こんな気がする。
「きっと、大丈夫」
その瞬間。
空のどこかに、数字が浮かぶ。
彼女が幸せな人生を送る確率95
そのとき。
後ろから声がする。
「すみません」
振り向くと、一人の男が立っていた。
二人が幸せになる確率100
おわり




