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死霊術師の魔獣狩り ~虚弱ネクロマンサーと脳筋剣士は荒野を征く~  作者: 結城 からく


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1/2

前編

「うっぷ……酔ってきた……」


 荒野の只中で、死霊術師ロイムが顔を青くして呻く。

 彼を背負う剣士アーサーは苦笑気味に応じた。


「頼むから俺の頭にゲロ吐かないでくれよ?」


「だ、大丈夫……たぶん、うっ!? やっぱり駄目かも……」


 ロイムはアーサーの背から下りてぐったりとする。

 水を飲んだ彼は、その場から動かずに吐き気が鎮まるのを待つ。


 そばに立つアーサーは少し呆れた様子で提案した。


「そんなに辛けりゃ、自分の足で歩けばいいだろ」


「だって疲れるし……」


「それならアンデッドになればいいじゃねえか」


「いつも言ってるけど、痛いのは嫌だし、死ぬのも怖いんだよね……」


「はっはっは、死霊術師のセリフとは思えねえな」


 アーサーは気さくに笑う。

 彼はふと自分の腕を見つめた。

 鍛え抜かれた腕は丸太のように太い。

 ただし色艶には陰りが差し、まるで死人のように青白かった。

 腕をぺちぺちと叩くアーサーは世間話のように語る。


「割と便利な身体だと思うがね。苦しいのは最初だけなんだから、ちゃちゃっと人間捨てちゃえよ」


「その苦しいのが嫌なんだよぉ……あと術が失敗する可能性だってあるじゃん」


「お前に限ってそれはねえさ。俺を蘇らせた時だって完璧だったろうが」


 五年前、アーサーは強大な魔獣との戦いで死亡した。

 そこに通りがかったロイムの手でアンデッドとなり、助けてもらった恩から彼に同行している。


 休憩が済んだ二人は移動を再開した。

 ロイムは息を切らしながらも自力で歩いている。

 先導するアーサーが前方の岩山を指差した。


「ほら、目的地までもうすぐだ。気合入れてけよ」


「魔獣退治だよね……名前は何だっけ」


「剛岩竜ムヴォルアだよ。竜と言っても飛べない種類だがな。鈍重で知能も低いし、数年単位で休眠する間抜けな奴だ」


「でも強いって噂だよね」


「ああ、とにかく頑丈で生半可な攻撃は通らん。ブレスも強力だろう。数千の軍隊を返り討ちにしたって逸話もある。別名は"生きた要塞"らしいぜ」


 アーサーの説明を聞いたロイムは憂鬱そうに下を向く。

 彼は猫背になって小声でぼやいた。


「不安だ……勝てる気がしない……」


「俺達なら大丈夫だろ。まあ、いつも通り気楽にいこうや」


「アーサーは前向きだね……」


「ロイムが暗すぎるんだよ」


 会話の途中、前方の岩山が蠢いた。

 岩山が地鳴りを立てて起き上がり、黄色い瞳をぎょろりと二人に向ける。

 直後に爆発のような咆哮が辺り一帯を響き渡った。

 ロイムは耳を押さえて蹲り、アーサーは大剣を抜いて身構える。

 動き出した剛岩竜を見て、アーサーは不敵な笑みを覗かせた。


「ほう、想像よりデカいな。ぶった斬れるかな」


「えっ……どうしよう。諦めて帰る?」


「何言ってんだ! ぶち殺して酒飲みに行くぞォッ!」


 アーサーは雄叫びを上げて駆け出した。

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