表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/52

43 未来へ

* * *


「聖夜っ……聖夜!!」


 自分の名前を呼ぶ声が聞こえて、聖夜が目を開けると、そこは中学校の屋上だった。柊が泣きながら聖夜の顔を覗き込んでおり、彼女の涙で、聖夜の頬が濡れている。


「……柊」


「聖夜……!よかった……」


 聖夜が起き上がると、他の仲間達も聖夜を囲んで安心した表情を浮かべていた。


「聖夜君……無事でよかった」


「もう……心配したのよ?」


「俺も焦ったぜ!」


「こ、これで一安心だね……」


「全く……お前は本当に無茶をする」


「みんな……心配かけてごめん」


 聖夜は仲間達に微笑み、傍らのノエルを見た。ノエルも聖夜同様に、仲間達に囲まれている。


「みんな……」


「ノエル!!良かった……無事で、本当に良かった……!」


 安心して涙目になるウォンリィを、他の仲間達が微笑みながら見ていた。


「……大丈夫だから。泣くな、ウォンリィ」


 ノエルはそう言って体を起こすと、聖夜の方を見た。丁度2人の目が合う。


「ノエル……」


「……僕の負けだ」


 ノエルはそう言って立ち上がり、聖夜に歩み寄った。聖夜も同様に、ノエルに向かって歩いて行く。


「……君の言葉、信じる」


「ノエル……!」


「守ってよ。僕達からこの時代を守ったように……僕達の時代も守って」


 ノエルはそう言って、微笑んだ。


「うん!もちろんだ!」


 聖夜もノエルに笑顔を見せ、右手を差し出した。


「じゃあ、仲直りの握手だ!」


「え?仲直り……?」


 戸惑うノエルの右手を、聖夜はしっかりと握る。


「次会うときはさ、平和な未来を想う仲間、だな!」


「仲間……僕と、聖夜が……?」


「うん!」


 聖夜に屈託のない笑顔を向けられて、ノエルは顔を赤くした。


「……なんか、照れるな」


「嫌か……?」


「……ううん。悪くない」


 ノエルはそう言って微笑む。そうしていると、屋上に千秋達も現れた。


「……聖夜、みんな」


「総隊長!」


「無事に任務を果たしたようだな」


 千秋はそう言って微笑む。しかし、すぐに真面目な顔に戻ってノエル達を見た。


「君達のしたことは、決して許されることじゃない」


「……そう、だよね……」


 ノエル達の表情が曇る。


「……死刑でもなんでも……どんな罰でも受けるよ」


 ノエルは覚悟を決めて、千秋を見つめた。しかし、千秋は優しく微笑んで続ける。


「……生きなさい」


「え……?」


「高次元生物によって命を落とした人達の分も、生きなさい。罪と向き合って……生き抜いて……決して投げ出さず、その人生を全うするんだ。それが、君達の使命だ」


 千秋の穏やかな声色に、ノエル達は言葉を失う。それに対して微笑みながら、千秋は言葉を続けた。


「私達も前を向く。亡くなった人達の分も、生き抜いてみせる。聖夜、そうだろう?」


 千秋に尋ねられ、聖夜はしっかりと頷いた。


「はい!……俺達は、今を生きる。幸せな未来のために……前を向いて今を積み重ねる!だから!」


 聖夜はノエルに明るい笑顔を見せた。


「だから……未来で待っててくれ!」


「聖夜っ……!」


 ノエルの目から涙が零れ落ちる。


「……分かった。待ってるから。未来で、待ってるから……!」


 そう言って、ノエルは泣きながら笑った。


 そうしてノエルと聖夜が笑い合っていると、なんと空から屋上に向かってタイムマシンが降りてきたのだ。


「私が送っていく。乗りなさい」


 窓が開いて、明日人が顔を出す。それを見て、ウォンリィ達がタイムマシンに乗り込んでいく。


「……聖夜」


 ノエルはタイムマシンの前で、聖夜に振り返った。


「……君達の未来が、光に満ちたものになりますように」


「……うん。絶対、そうしてみせる!」


 ノエルは聖夜に穏やかな笑顔を見せ、タイムマシンに乗り込んだ。


「……タイムマシン、発進!」


 明日人の掛け声で、タイムマシンが宙に浮く。しばらくして、タイムマシンは七色の光に包まれ……姿を消した。


「……行っちゃったね」


「ああ……そうだな」


 聖夜と柊は、タイムマシンが去って行った空を見上げた。


「……2人とも、感傷に浸ってる場合じゃないぞ」

 

 それを見た千秋が、微笑みながら隊員達に告げる。


「これから町の復興作業だ。みんな、町のために、もう少し頑張ってくれ」


「了解!」


 聖夜達は元気よく返事をした。


(明るい未来のために、今を生きよう。前を向いて、進み続けるんだ)


「行こう、柊!」


「あ、ちょっと!待ってよ!」


 聖夜は微笑みながら、屋上から駆け出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ