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19 廃病院にて

 真夜中、とある廃病院に、つくはずのない明かりが灯っていた。


 その廃病院の屋上で、エリスは溜息をつく。


「あーあ、駄目だった」


 すると、後から屋上にやってきたのであろう赤髪の青年が、背後からその肩を叩いた。


「やけにセンチメンタルじゃねえか」


「げ、イグニ……」


 エリスはあからさまに嫌そうな顔をしたが、左目に眼帯をした青年──イグニは豪快に笑った。


「溜息つくと、幸せが逃げるぞ?」


「うざ。左目無くしてて上半身大火傷してる奴に幸せ語られたくないんだけど」


 エリスがイグニを睨みつけていると、屋上のドアが開いて2人の人物が歩み寄ってきた。


「アリーシャ、ウォンリィ!」


「あら、エリスとイグニも来てたのね」


 アリーシャと呼ばれた美女は長い薔薇色の髪をかき上げながら笑った。


 その横でウォンリィと呼ばれた、黒髪の小柄な少年がやれやれと溜息をつく。


「少し休憩をしに来たんだけど、騒がしそうだな」


「騒がしいのはイグニだけ!」


 エリスがむっとして言い返すと、ウォンリィは適当に相槌を打った。


「……ま、それは置いといて、ウォンリィ、今日はどうだったの?」


 エリスがウォンリィに尋ねると、ウォンリィは不敵な笑みを浮かべて答える。


「計画は順調さ。最早人々にとって高次元生物は身近な脅威として浸透した。後はアビリティの恐ろしさを知らしめて、愚民共を支配するだけさ」


 アリーシャも、妖しげな笑顔を浮かべながら頷く。


「邪魔なのは特部だけね」


「その通り。……ヒーローのまがいごとをされて、アビリティを神聖化されては困るんだよ」


 ウォンリィはそう言って、わざとらしく溜息をついた。


「まがいごと……?シンセイカ……?」


 エリスはウォンリィの言っていることが理解できず、こてんと首を傾げる。それを見て、ウォンリィは少し呆れた顔でエリスに分かりやすく要約して伝え直した。


「とにかく、特部潰せばいいんだよ。それがリーダーの願いでもあるからね」


「ああ、そういうことね」


 ウォンリィの言葉にエリスは頷いた。そして、彼女は可愛い顔に似合わない、憎悪に満ちた表情を浮かべて呟く。


「特部……絶対に潰す。エリス達の未来のために」

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