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証言

「よし、今日は宿に帰ろう」

 トルビーに賛成しようとしたところ、「ライム〜」と言う声が頭に響いた。

 

 この声は……


「グルセルから"念話"。出るね」

 トルビーに断って"念話"を唱えた。


 

「……もしもし、なに?……え、キラハで?あ、ちょっと待って"念話共有(レパシリオ)"」

 グルセルの声がトルビーにも聞こえるようにしてもう一度話してもらう。



「今日キラハで原因不明の突然死が3件あったんや。そいでその内の1件にイオラが遭遇してな?"鑑定"してみたら出身がテンペアーってことだけわかったらしいねん」

 

「それで?!」

 食いつくトルビー。


 この村、テンペアーに来るまでの道のりでも不審死が起こるかもと言っていたのだ。


「まぁ、そう焦んなや。3分の一は偶然かもしれんやろ?でもな、調べたとこ全員生まれも育ちもテンペアーやってん」

「じゃあその人たちはクレイザに操られてた死者だったんじゃない?」


 トルビーの言葉にグルセルは「クレイザ?死者?」と困惑していた。

 トルビーは続ける。

「今日、魔族を1人、魔界に帰したよ。で……」


 

 トルビーから軽く説明を受けると、グルセルは言った。

「ほなら、この亡くなった人らは、そのクレイザっちゅーやつの被害者なんやな。これは警備隊に伝えなあかんやつや」


「なら俺たちが……」

「いや、報告は任しとき。トルビーの種族偽装がバレたらタダじゃ済まんからな」


 そう、種族偽装は重罪なのだ。

 というかトルビーはなんで種族を偽っているんだろうか。


 と、グルセルが続けた。

「そっちの後片付けは任せるで」

「後片付けって言い方……まぁ了解」

 トルビーが言うとプツッと"念話"が切られた。




「寝よ〜、ライム」

 宿に戻り、寝支度を整えて言うトルビー。


 ベットに入ったあと、少し覚悟を決めて口を開いた。

「……あのさ」

 俺は先程の疑問を聞いてみることにしたのだ。


「なんで種族偽装してるの?」

「なんで、か」



 少しの沈黙。

「言いたくなければ……」

 俺が言うと、トルビーはふっと笑った。

「ううん。……自分では何もしてないんだよ。魔力が減るとツノとかが出てくるんだ」

「……へぇ〜」


「特殊体質ってやつ」

 俺は眠くなってきたのも相まって、そっかと短く返してしまった。


「おやすみ。ライム」

 トルビーの声を聞いて、俺は眠りについた。



 △▼△


 

「おはよう!……って、アンタたち!無断で部屋を使ったのかい?!」

 今日中央に帰るため、お礼を言おうと宿屋のおばちゃんに話しかけたところ、そう言われた。


 おばちゃん、昨日はカウンターで突っ伏して意識を失っていたが、取り戻したようだ。


 てか、おばちゃん、訛ってないな。

  

「いやいや〜、ちゃんと受付しましたって」

 トルビーはあっけらかんと答える。


 おばちゃんの手元のノートを指差した。

「僕はトルビー・メレンです。こっちがライム・スフェン」


 ノートを覗き込むと俺とトルビーの名前、初日の日付が書いてあるのが見えた。


 おばちゃんは頭を掻きながら笑う。

「ほんとだねぇ……ごめんね、ド忘れしちゃってた」

 


 そんなこんなで宿屋とお別れした。



 △▼△


 村人たちは何も無かったかのように、日常を過ごしていた。洗脳されていた期間の記憶は無いようだ。

 

 さらに、歳をとってもいないようだった。


「おはよう、ライムくん!」

 そう言って走ってきたのはジェリカだ。広場の大きなクリスタルのオブジェ前には杖をついたミレィさんもいた。


 あれ?クリスタルが戻ってる?

 

 そんな疑問を抱えながら挨拶を返すと、ジェリカは笑顔で頷いた。そして「紹介したい人がいるの」と言って後ろを向いた。


「はじめまして!ジェリカの大親友のユラでっす!」

 そう言ったのはジェリカの記憶の中で見た、大きな黒いメガネをかけた女の子だった。腰に両手を当てて、誇らしげに胸を張っている。

 

 この少女、ユラこそが歳をとっていない証拠だ。


 俺はジェリカの記憶の中で今とほとんど変わらない姿をしたジェリカを見ている。

 彼女はクリスタル化していたので「洗脳されていた」イコール「不老」の証拠にはなり得ない。

 しかし、ジェリカと同世代だったこのユラもまた、あの時のままの見た目である。

 これは老いていないと言えるだろう。



 と、金の音がゴーンと1回鳴った。

「……あ!もうすぐお昼ご飯だ!いこ、ユラ!」

 気をつけて帰ってねと言って、ジェリカたちは走っていった。

  

 それと入れ替わりでミレィさんがこちらに来て、話し始める。

「この村で洗脳されていなかったのは、わたしとジェリカだけなんだよ」

「ミレィさんは結晶化が解けた時には洗脳が解けてたんですか?」


 俺の質問に首を横に振ると、ミレィさんは続けた。

「何故か分からないが、わたしは洗脳にはかからなかった」


 トルビーはなんでだろうと言いながら首を傾げると続けた。 

「じゃあジェリカさんもかからなかったんですか?」

 トルビーの言葉にミレィさんは首を振った。


「ジェリカの洗脳を解いたのはわたしだ」

「解いた?!いつの話ですか!?」


 ミレィさんは記憶を辿るように目線を泳がせている。

「ジェリカがクリスタルにされてから3日後だったかなぁ……」

 

 トルビーは、たった3日で?!と言って目を丸くした。 

「どうやったんですか?!」

「悪いね、もう70年も前の話だから忘れてしまって……魔法を使うとあやつに見つかるからずっと使っていないんだよ。だからもう基礎魔法の使い方すら忘れてしまってね」

 

 結局、ミレィさんから解除魔法に関して詳しいことは聞けなかった。

 

 ちなみにトルビーによるとジェリカの「クレイザの血に洗脳の解除方法が書いてある」という言葉は本当だったらしい。


 クレイザに噛みつき、血を解析したトルビーは"調教"の解除方法を見つけ、村人全員を解除した。

 トルビーはこの"血印字"と呼ばれる魔法を使ったのはミレィさんだと踏んでいたようだが、ハズレだった。

 

 

「宿に戻ろう」

 トルビーが言う。

「え、今日中央に帰るんじゃ……?」

「なんか引っかかるんだよね……あした、ジェリカさんから話を聞きたい」


 ということで宿に戻った。

 トルビーに自分が見てきたことを再度話していると、グルセルから"念話"がかかってきた。


 応答するとグルセルが話し始めた。


「おつかれ〜。突然死の件で進展や」

 そう言ってグルセルは続けた。

 

「重大な事件ちゅ〜ことで警備隊が動き出した。近いうちテンペアーに調査に行くそうや」

「僕、鉢合わせたらまずいやつ?」


 トルビーが聞くとグルセルは笑って答えた。

「そんなすぐやないと思うで。あと、自分で言うのもなんやけど、俺やからトルが魔族ってわかったんやで」

 グルセルの顔は見えていないが、得意げな顔が容易に想像できた。



 種族がバレる要因はいくつかある。

 しかしトルビーは基本的には魔族だとバレない。

 

 グルセルはイニーさんのように魔力が見えるというより、感覚が鋭いタイプだ。

 まぁ、要するに勘でトルビーの種族を見抜いた。


 ……外れてたらただの誘拐犯だがな。


「話を戻すで……警備隊が調査に行くのが遅くなりそうなのは理由があるんや。亡くなった3人のうち1人が警備隊長と面識がある方だったらしくてな。せやから明日、警備隊で葬儀をやるらしい」

 それを聞いてトルビーは手をぽんと叩いた。

「じゃあ明日は重要な案件に関わるような役職の人はそれに出るんだね」


 その後、グルセルにもう少しこの村を調査していくことを伝え、"念話"を切った。



 翌日、ジェリカに会いに行き、話を聞くことにした。

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