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襲撃

 ライムがさらわれてから2日後、トルビーもといシルバーは魔族メイトの襲撃に備え、村の広場のベンチにひとり座っていた。



 ライムと練った作戦では今日、僕を襲撃に来るということになっている。

 このタイミングでライムが採取したメイトの血液を受け取り、解析する。メイトの使っている洗脳魔法を解く方法を探すのだ。


 しかし、予定の時間を過ぎてもメイト達は現れなかった。


 なぜだろうか、メイトは僕の名前がわかり次第僕のところに来るはずだ。

 

 自分で言うのもなんだが、吸血種は魔族の中でも上位種と呼ばれ、憧れの対象となっている。まぁ一部の種族過激派からだけだけど。


 だから僕の名前が分かれば飛んでくると思うんだよなぁ……


 

 実際、メイトはライムに僕の名前を吐かせようとしていた。

 これを逆手にとって、ライムが僕の名前を教えることで襲撃の時間をコントロールする作戦である。


  

 ライム、なかなか来ないし作戦はおじゃんになったとして練り直すか……


「おーい、シルー!」

 突然、そう名前を呼ばれた。

 ライムの声だ。辺りを見回すとライムがこちらに走ってきていた。


 ベンチから立ち上がりライムを待った。


 

 ひとりでメイトを倒したのか?やるなぁ。


 ……いや、そんな訳ない。これは罠だ。


 そう気付いた時には斧の刃が頭上にあった。ライムが斧を振りかぶっていたのだ。

 

 咄嗟に足元に落ちていた木の棒を拾って受ける。強度増加の"付与"が何とか間に合い、受けきることができた。折れていたら棒ごと頭パッカーンだ。


 ぐぐぐと押しこまれる。木の棒の耐久が心配だが両手とも塞がっているし、下手にライムを傷つけられない。あまり傷つけてはメイトにかけられた洗脳を解いたあと、記憶の欠損が起こる可能性が高まるからだ。

 

 と、急に斧が軽くなった。

 

「そノ、受ケ方……危なイッテ……言ッタ!」

 そう言った次の瞬間には横に斧を振りかぶるライム。


 "障壁"を展開して受ける。が、いとも簡単に砕かれた。


 広範囲の展開では強度が足りないのか?

 ギリギリのところで避けたが、左脇腹から血が流れた。少し掠めたようだ。


 小さく硬い"障壁"を斧の軌道に合わせ展開し受ける。

 

 防戦一方だ。

 しかし、守りに徹しないと簡単に"障壁"をかいくぐられてお陀仏だ。


 ……くそ、どうする?!


「あらぁ、ライム。強いんだねぇ……まさか吸血種様を圧倒するなんて」


 メイトのお出ましだ。やっぱり来たか。

 2対1になっては本当に勝ち目がないだろう。


 ごめんライム。


 "送魔"

 

 両手を開いてライムに向け、心の中でそう唱えると、ライムは座り込んだ。



 ……というのは僕の想像止まりだった。

 

「シルバぁーッ!」

 ライムがそう叫んだのと同時に体を地面に叩きつけられる。


 左肩が熱い。目をやると、それとは対称的に冷たいものが頬に触った。斧だ。

 

 左肩からダラダラと流れ出す赤い液体。傷口を塞ごうにも斧が刺さっていて"治癒"できない。


 ライムの顔を見上げると、無表情で冷たい視線を僕に向けていた。


 と思うと、口を動かした。何か言ったのだろうか。


「……あれ?」

 僕がそう呟くと、ライムは少し笑ってウインクした。


 そして振り返ると、また起伏のない声で話し始めた。

「クレイザ様、コイツの利き手ハ使えナク シましタ」

「よくやったね。それじゃあ拘束して」


 僕の利き手は右なんだよなぁ……

「……ぅあッ!」

 ライムが斧を持ち上げ、肩に激痛が走り声が漏れた……フリをした。


 ライムの斧は僕の肩に当たっていなかった。幻影魔法の類でそう見せていたようだ。

 心配していた、「本当に洗脳された」なんてことはないようだ。


 てかほんと、ライムの頭はよく回る頭だよなぁ……


 当のライムは斧をそっと地面に置くと、僕の傍らにしゃがんだ。



「飼い犬になれ」

 そう冷たい声で言ったライムは僕の手首を掴んだ。


「……っ?!」

 途端、ライムは座り込んだ。


「なにしたっ!ライム?!」

 メイトがそう聞いてきたが、僕はなにもしてない。

 しかし、話を合わせよう。


「"送魔"しただけ。軽く酔ったの」

 そう言って立ち上がる。左肩に触れて"治癒"した。


 肩を回しながら、遠巻きに見ていたメイトの方を向く。



 右手を振り下ろすと僕が放った"光槍"がメイトの心臓を貫いた。胸を抑えて膝から崩れ落ちるメイト。

 

 思ったよりも簡単に致命傷を与えられた。


「な……ぜだ…?」

「憧れているくせに僕のこと、舐めているんだね。……魔界に帰れ」

 クソっと言ってうなだれているメイトの手足を魔法で拘束する。

 

 ふぅ、初仕事は終了か。


「ライム、立てる?お疲れ様」

 手を差し伸べる。ライムはぱっと手を取った。


「……フッフッフ、アッハハハっ!」


 メイトは急に高笑いしだすと続けた。

「平和なやつだなぁ。まだ終わってないよぉ?吸血種様とはいえ、所詮現代っ子だなぁ?シルバー?」


「ごめん……作戦…うまく、いかなかった」

 ライムがヒソヒソ声でそう言ってきたので、小さく首を横に振った。

「平気だよ、なんとかする」

 


 メイトの血は……あれ?

 心臓を貫いたはずが血が出ていない。


 ……なんだ、弱すぎると思ったよ。貫いたように、そう見せただけか。



 メイトは拘束をいとも簡単に解いた。


「ライム、君をここで失うのは惜しい。そこで寝ていな」

 メイトが言い終わると、ライムの手から力が抜け、だらんと倒れ込んだ。


「そしてシルバー?」

「……」

 メイトの洗脳魔法は名前を呼ぶことで発動する。先にライムに思い込み魔法をかけておいて良かった。


「あら、黙っちゃって。事の重大さに気づいたのかな?「名前がバレちゃった」ね?」

 騙されているとも露知らず、嬉しそうに言うメイト。

 


 僕の名前は……

「トルビー・メレン」

「はっ?」

 本名がバレた……?

 どこから?ライムにかけた魔法が解けた?


 そんなことが頭を駆け巡っている間に、まるで王の御前にいる家来かのように膝をつき、メイトに向かって頭を垂れる。


「やらかした……?」

 残念ながら、作戦は本格的におじゃんになったようだ。

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