辺境の地アリスメイヤ
アトスと名乗る男性の後ろをついていき、街を目指して歩き出した智香達
「あ、あの…アトスさん、ここは一体どこですか?」
ラティシアの転送魔法で飛ばされた智香は現在地が知りたかった
「ああ、ここはラグトリアの辺境の地、アリスメイヤだよ、今から使うのは最果ての街のシラムっていう街さ、
智香はどこから来たんだい?」
場所もわからない智香に対してアトスは聞いた
「す、すいません…私転移魔法で飛ばされて…」
「そっか、色々事情があるんだね、僕はシラムのギルド協会で依頼を受けつつ、旅をしてるんだ」
アトスと話をしつつ、シラムという街を目指していた
「見えてきたよ、あそこがシラムさ」
アトスが指差した方向には小さいけど村人達が平和に暮らしている街が見えてきた
「わぁ…すごいです…」
智香は異世界に着いて初めて街を見たので、驚いていた、右を見ても、左を見ても活気溢れる屋台が並び、これぞ異世界という感じだった
智香達が歩いているとなにやら美味しそうな匂いが漂ってきた
思わずその匂いに足を取られると
「お、美味しそう…」
智香の視線の先に鶏肉を串にさして炭火で焼き、タレのようなものをかけて焼いてるお店があった
「ああ、あれかい?あれはワシ鳥っていう魔物のお肉の串焼きさ、タレは自家製のタレだろうね」
アトスが智香の視線の先にある料理を説明する
「ま、魔物を食べるんですか?」
「さっきのビーストみたいな人を襲うような魔物は食べないよ、ワシ鳥は肉食ではないからね、育てやすい魔物もこの世界にはいるのさ」
要するにニワトリみたいなものかな…と智香が考えているとお腹がきゅるると鳴いて
「あ…す、すいません!」
「お腹、空いたのかい?ちょっと待ってて」
そういうとアトスは先程の屋台に行き、智香の分まで買ってきてくれた
「あ、ありがとうございます…いただきます…」
智香が一口齧ると薄皮がパリッとして、中から肉汁が溢れた
「お、美味しいですっっ!!」
智香は無我夢中で食べ始める
「良かった。よほどお腹空いてたんだね、これからギルド協会に行って、僕の依頼の報告が終わった後に、智香ちゃんの元いた場所まで送り届けるよ」
すると智香の手が止まり
「わ、私は…元居た場所から追い出されたんです、気づいたらここに居て、帰りたいと思わないんです」
「そっか、じゃあ智香ちゃん、良かったら僕と来るかい?ちょうど法術師が欲しいと思ってたんだ
智香ちゃんはあれだけ凄い治癒術を使えるんだ。良かっただけど」
アトスの提案にすぐにでも乗りたかった智香だが、自分はGランクで、1番弱いことを気にしていた
「すぐにとは言わないさ、ギルド協会に行った時、冒険者として登録してみるのはどうだい?
智香ちゃんの力が必要な冒険者もいると思うし、僕はいつでも智香ちゃんに協力するよ」
「は、はい、分かりました」
智香はラティシアとか、クラスメイト達と一緒にいるより冒険者としてこの世界を助けたいと思った
「それじゃ、そろそろ行こっか」
「は、はい!」
智香は串焼きを食べ、アトスと共にギルド協会を目指した
シラムの街の真ん中にデカい建物が見え、そこにギルド協会と書いてあった
「あ、あのアトスさん、ギルド協会ってなんですか?」
なにも知らない智香がアトスに聞く
「ああ、冒険者達の集まりみたいなものだよラグトリアは今、たくさんの魔物が溢れているだろ?
昔から魔物はそこそこいたんだけど、僕たちに害のない、言わばワシ鳥みたいな魔物達だったんだよ
それでも、村人達の依頼とか、ワシ鳥を捕まえてきてくれ!とか色んな依頼を頼む施設さ、僕たち冒険者はラグトリアを冒険しつつ、その依頼をこなして、報酬を得るって流れだったんだけど、最近ずっと魔物討伐の依頼ばかりさ」
魔王というものが数十年前から出てきて、ラグトリアの民たちは困っていたようだ
アトスがギルド協会の扉を開けると
「わ、わぁ…」
沢山の冒険者達がお酒を飲んだり、依頼を確認したり、食べ物を食べたりしていた
「お!アトス!今帰ったのか?」「アトスさんだーおかえりー!」
アトスはたくさんの冒険者から声をかけられていた
受付みたいな場所に居る女性に声をかけると
「アトスさん!おかえりなさい!依頼はどうでしたか?」
「ああ、やっぱ近くの森でもビースト達が溢れていたよ、何体か倒してきたけど、もっと調査が必要かもね」
アトスがそう説明すると、受付の女の人が色々考え始める
「あれ?アトスさんそちらの方は?」
アトスの後ろを着いていた智香を見て
「ああ、近くの森で迷子になってたんだ、冒険者として登録できないかな?」
「そうですか、分かりました、では登録のためにここに手をおいてください」
なにやら石碑みたいのを出され、言われた通りに手をおいた
「…はい、登録完了です、智香さんの冒険者カードはこれになります」
智香はカードを受け取った
そこには自分の顔写真等色々かかれていた
「それじゃまず、シラムを案内するよ」
「あ、アトスさんちょっと…」
受付の人がアトスを呼び止める
「智香ちゃん、外で待っててくれるかい?」
「は、はい…」
智香が外に出ると、受付の女性は話し始めた
「アトスさん、あまり周りの方には聞かれないようにします、智香さんのステータスを登録の時に見ました
ランクG、ステータスも最弱です、私は見たことがありませんでした、ランクは最低がEです、それより低いとは…
アトスさん、おせっかいなのはいいですが、なにか事情がありそうな人です、気をつけてください」
アトスはそう言われ、智香を待たせている外に出た
「あ、アトスさん…」
「智香ちゃん、シラムを案内する前に今日は宿屋で休もっか!」
「は、はい!」
先を歩く智香の背中を見ながらアトスは考えた
「最低ランク外の法術師…僕には悪い子には見えないな、気になるのはあの治癒術だけ、ランクGとは思えないよ」
アトスはそう考えながら、智香の後ろを歩いていく
次回、「宿屋で一悶着?!初の討伐クエストへ!」