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3.許さない許さない許さない

 それから数日経った。


 私の悪い予感は的中した。


「…………嘘ばっかり。やっぱり、浮気してたんだ」


「いや、まだ黒と決まった訳じゃあ、ありませんけどね」


 私は自分の部屋で、アンジェ様と話をしている。話題は勿論、エリオット様の事だ。


 彼は夜な夜な、自身の屋敷を抜け出してどこかに行っているらしい。そんな噂を耳にした。夜中こそこそ出かける理由なんて、やましい事があると言っている様なものだ。大方浮気相手に会っているのだろう。


「……許さない許さない許さない。絶対に思い知らせてやる。もう2度と、陽の光を浴びれない場所に監禁してやる」


「いや、怖いですって」


 そう冷静に言うアンジェ様。


「逆にアンジェ様は何でそんな冷静なの? 好きな人が浮気しているとか許せないでしょ!」


「まぁ気持ちは分かりますがね。うちは色々と特殊ですから」


「……そういえばそうか」


 アンジェ様は兄上と夫婦である。それはつまり、兄のハーレムに属している1人という事で、他の4人もの女性とも良い感じな関係を築いているという事でもある。


「私はね……こう、好きな人が他の人と寝ていると、脳が木っ端微塵にされると同時に、何故かこれ以上ない位の興奮が押し寄せてくるというタイプでしてね。要は寝取られ性癖という奴です。これがハーレムと異常に相性が良くてですねえ……」


 狐色の髪をいじりつつ、少しバツが悪そうに言うアンジェ様。それは……なんというか、業の深い性癖である。だが、私は彼女の様な特殊な性癖は持っていないのだ。


「ともかく、私は浮気は許せない性質(たち)なので! 間女には勿論、エリオット様にも思い知らせてやる! 判決、間女は死刑! エリオット様は名前をエロオット様に改名の上、私の部屋で終身刑!」


 興奮している私に対し、アンジェ様は冷静だ。


「自力救済はあまり褒められたものではありませんよ。それに現状、あくまで噂でしかありません。冤罪の可能性だってあります。まだ判決を下すには早いかと」


「む……」


「どうですか? 裏をとってからでも遅くはありますまい」


 アンジェ様に言われ、少し私は落ち着きを取り戻した。


「どうすれば良いと思う?」


「まぁ、まずは証拠集めですね。これでも、私は第一王子の乳姉妹。王家の『秘密警察』にもコネがあります。彼らの力を借りますか? そこらの探偵より、よっぽど腕が良い」


「……」


 私は少し考える。確かに彼らは腕が良い。が、私的な目的で影の部隊を動かして良い物か……。そもそも、身内の恥の問題にあまり他人を関わらせたくない。


「いえ、ここは私自身が動くわ。直接、証拠を集めたい」


「妹様は現場主義なんですねぇ」


「一応王女として、ある程度鍛錬はしているわ。スニーキングやCQC位は出来る」


 我がスピットファイア王家では質実剛健を是としており、王族でも軍人になったり、そうでなくとも身体の鍛錬は必須とされている。こう見えて私も、身体的な頑健さと運動神経には自信がある。


「早速、今晩から証拠集めよ。アンジェ様、着いて来てくださるかしら」


「イエス、マム」


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