青春編9
海は、美咲ちゃんの家の近くのバスから更に2駅行った所にあった。 待ち合わせのバス亭へ行くと、美咲ちゃんが笑顔で、
「お疲れ様、ヒカル君」
と言った。この笑顔を見た瞬間、
「お疲れ様、美咲ちゃん」
と僕も嬉しくなり、自然に笑顔で言った。
「行こう」
と美咲ちゃんが言って先に進み、僕は自転車を停め彼女について行った。
「こっち」
と言って彼女は僕の手を取って、砂浜に降りた。
初めて触れた彼女の手はとても温かった。
僕は強い胸の高鳴りを感じながら、
恐る恐る砂浜に降りると、
そこには無限の青が広がっていた。
見上げると空が青く、視線を下げると海が青い。
空と海の境目が分からない位、青かった。
波を打ってる所は灰色なのに、遠くを見ると青い。
どこまでも行っても青く見えた。
「ヒカル君に見せたかったんだ」
手をつないだまま、美咲ちゃんが言った。
「僕、海初めてなんだ」
と思わず言ってしまうと、
「ほんとー!?」
と僕の方を見て、とても嬉しそうに言った。
僕は美咲ちゃんを見て、
「うん」
と笑顔で言い、再び海を眺めていた。
どんなに眺めていても全く飽きなかった。
その内、僕のお腹が『グー』と鳴り出したので、美咲ちゃんがクスクス笑い、
「ヒカル君、お弁当持ってきたんだけど食べる?」
と言った。
「うん」
と僕は、顔を赤くしながら言った。
お弁当は、おにぎりと唐揚げと卵焼きとウインナーとミニトマトが入っていた。
「これ、美咲ちゃんが作ったの!?」
と聞くと、
「ううん、お母さん」
と答えた。
「テストの事で頭いっぱいだったから、お母さんに言ったら作ってくれたの」
と少し気まずそうに言った。
「次は、ちゃんと自分で作ってくるから」
僕は美咲ちゃんを見た。
「次?」
「う、うん」
と言って下を向いた、見ると彼女の顔がとても赤くなっていたので、
「美咲ちゃん」
と言った。
「は、はい」
と彼女は小さく答えた。
「僕と付き合ってくれませんか?」
と僕は言った。美咲ちゃんは、まっ赤になった顔のまま僕の瞳を見て、
「はい、よろしくお願いします」
と言ったので、僕は思わず彼女を抱きしめた。
(青春編終わり)