猫国編17
人間のまま猫国に戻ったヒカルは、体が大人の猫のサイズ位になっていた。 猫としての記憶が戻り、久しぶりに猫国に戻ったヒカルだが、そんな事に浸る暇もなくベキと王室の部下二人と、黒装束を身に纏い、すぐにビビの屋敷へ向かった。 ビビの屋敷の裏門の前まで来た時、ヒカルが門を叩いた。
「何だ、お前達は?」
が開き、中からビビの臣下が出てきて訪ねた。
「本日午後2時より、ビビ様から処刑の依頼を承った者です」
とヒカルが静かに言った。
「よし、入れ」
一行は中に入った。
「うまくいきましたね」
とべキが小声でヒカルに言った。
「そうだね」
とヒカルが答えた。中から着守が現れ、暗い地下の牢屋まで案内された。
と看守は去って行った。
牢屋の中には、ヒカルの両親がうなだれた様子でいた。
ヒカルは、すぐに牢の前に駆け寄って、
「お父さん、お母さん」
と泣きそうになりながら言った。
母は、顔を上げ、驚いた顔をしたが、すぐに
「ヒ、ヒカルなの?」
と言った。ヒカルは大きく頷いた。父も顔を上げ、
「ほ、本当にヒカルなのか?」
「ヒカルだよ、お父さん」
を流しながら言った。
「ヒカル、お前、本当に人間に!?」
「うん、でも必ず猫に戻るから。その前に、お父さんとお母さんを助けるから」
と言うと、二人は泣きながら、
「ありがとう」
と言った後、しばらくして看守が戻り、
「こっちへ来い」
とヒカル達は別室へ移された。
「ビビ達はいつもこんなに悪い事してるの?」
に聞いた。
「そうですね。ビビ様の一族は、猫国にとって大きな勢力であると同時に、裏では闇の勢力でした。王様はその闇の勢力にずっと頭を悩ませていて、この事件を機に一掃しようとお考えの様です」
「何で、今まで捕まらなかったの?」
「やはり国の勢力として関わってきただけあって、色々熟知している連中故、今まで中々シッポを出さなかったのです。だから、本日ヒカル様の御両親が処刑されるとの情報が入ったので、今日結婚式をすれば、ビビ様の臣下達は式の方へ行くので、屋敷の警備は手薄になるだろうとお考えになりました」
「なるほど」
「はい、案の定、屋敷の警備はいつもよりかなり手薄になっておりました」
「そっか。それで、お城の方は大丈夫なの?」
「はい、チェキの情報によると、ビビ様以外もうほとんどが入れ替わり。後はこの家のみとの事です」
「そっか」
「この家にも、私達が入れた時点で、王室の兵士が潜入しておりますので」
「分かった、気を抜かずに頑張るよ。そうだ、キャットホールはもう出来てるの?」
「はい、出来ています。でもまだ充分時間もありますし、私共の部下が、責任を持って守っております」
とべキは言った。ヒカルは握り拳を作り、
「そっか、よしっやるぞ!」
言った。
「あ、それと、ヒカル様・・・チャイ様より御伝言が・・・!」
とべキが言った。
「え?」
ヒカルは思わず言った。
「『待っているぞ』と」
ヒカルはその言葉に笑顔になった。
看守が戻って来て、ヒカル達に処刑用の斧を手渡した。
斧を持った瞬間、ヒカルは息を呑み、手が震えた。
部屋を出て、案内された場所へ行くと、ヒカルの両親が縄に縛られたまま、木で出来た台の上に首を突き付けられていた。
全身を震わせたまま、助けを求める目でヒカルを見た。 ヒカルは両親を見たまま小さ頷いた。 看守はヒカルに向かって、
「やれ」
と言った。ヒカルは父親の前まで来て、斧を振り上げ、父親の顔の目の前に落とした。
斧は思いっきり木の台にめり込んだ。
「ベキ!!!!」
とヒカルが言った瞬間、ベキと部下達が一斉に着守に襲いかかり、あっと言う間に縛りあげた。その間にヒカルは両親の縄を解いた。
「ヒカル!」
と言って、泣きながら両親はヒカルに抱きついた。
ヒカルも両親抱きつき、三人でカー怀抱き合った頃、両親の手を強く握り、
「ここを出るよ、お父さん、お母さん!」
と言って、看守を蹴散らしながら、全力で走った。




