猫国編16
「よくお似合いですわ、ビビ様」
ビビは白い花嫁衣装を身に纏い、頭に白のベールを着けていた。
「ありがとう」
と笑顔で側近に言った。
「こんな奇麗なお姿なら、チャイ様もきっとお喜びになりますわ!」
その時、ドアがノックされチャイの母親である王妃が入って来た。
「ビビー!とってもよく似合っているわ!」
とビビにハグした。
「王妃様」
「ビビは何でも似合うから、つい沢山用意してしまって、朝から大変だったわよね、ごめんなさいね」
「いえいえ、とんでもないです。どれも素敵なドレスだったので、着るのがとても楽しったです。後、私共の一族、臣下全員分の本日の為の衣装を御用意頂いて、何とお礼を し上げて良いのか」
と言って頭を下げた。
「いいえ、とんでもない。ビビとチャイの結婚式だもの、これ位御安い御用よ。そうだ、 これを塗ってあげましょう」
と笑顔で、赤い色の塗料が入った小様を取り出し、ビビの左の肉球に塗り出した。
「これは、何ですか?」
「猫国の王族に嫁ぐと、親族、そして関係者に結婚式の時、王妃がこうして右の肉球を 赤く塗ってあげるのが習わしなの。私も結婚する時、こうして塗って頂いたわ」
「王妃様、ありがとうございます」
とヒビは笑顔で言った。王妃はビビの手を握り、
「じゃあ、式場で待ってます」
と言って、王妃は部屋を出た。
「早くチャイ様と結婚したいわ」
ビビは呟いた。
「もうすぐ出来るじゃないですか?」
側近が笑顔で言った。
「ヒカルはどうなっているの?」
とヒビが鋭い視線で言った。
「キセラ橋に臣下を多数派遣しております。猫国にもキャットホールにも近寄れないでしょう」
「多数って何人?」
「え?数えた事無いので・・・そこまでは・・・」
「もっと、今の倍増やして!!!絶対に近づけない様にして頂戴!!」
と鬼の形相で叫んだ。
「は、はい分かりました」
側近が言って頭を下げ、慌てて出て門った。
「絶対に邪魔させないわ」
と、ビビは呟いた。
側近がビビの部屋を出ると、王妃が
「ああ、ちょっとあなた」
と呼び止めた。
「王妃様、なんでしょうか?」
と聞くと、
「あなたも、赤くしなくちゃいけなかったわね、こちらへ来て」
と別室へ誘い、扉を閉めた所で、王様とチャイとその部下が現れ、側近を捕まえ、縛りあげた。そして、見た目がそっくりな者が現れ、側近を替え玉としてすり替え、
「行け」
とチャイが命令したが、
「ちょっと待って、目の色が違うわ」
と本物と見比べながら、カラーコンタクトを持ってきて、目に入れさせ、スプレーを使って毛を少し染め直したりと、微調整を重ね、右前足の肉球を赤く染めた。
「早くしろよ」
「駄目よ、側近なんだから、ちゃんとしないとすぐにバレるわ」
「時間ねーんだからよ、おい」
とチャイはイライラしながら言った。
「おいとは何だチャイ、ママに向かって何という口のきき方するんだ」
「いや、今そんな事言ってる場合じゃねーだろ」
「オッケー!いいわ、行って」
と王妃が言うと、替え玉はビビの部屋に向かった。
「よし、こいつを連れて行け」
と部下に命令し、本物が連れて行かれた。
「これで最後か?」
「ああ、後はビビの屋敷にいる連中だけだ」
「本当に大丈夫なんだな」
「ああ、もう草の根分けて、国中!まなくやってやったよ」
「そうか、よくやった」
「まだまだ、これからだよ」
「そうだな」
「ヒカルは本当に大丈夫かな」
とチャイが心配そうに言った。
「やっぱり俺も一緒に・・・」
「大丈夫だ、信じなさい」
と王様が言った。
「そうよ、絶対大丈夫よ」
と王妃が言うと、
「そうだな、ヒカルだもんな」
と言って頷いた。