表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チャイと時枝ヒカル君  作者: 河村諭鳥
11/28

猫国編2

その日の夜、僕は奇妙な夢を見た。

僕が白い猫になり、広い草原を走っていると、


「ヒカルー!ヒカルー!」


と声が聞こえてきたので、立ち止まり振り向くと、チャイが僕の所にかけつけた。


「チャイ? どうしたの?」


僕が聞くと、


「どうしたの? じゃねえよ、お前どこ行ってたんだ。随分探したんだぞ」


「心配性だなー」


と僕は言った。


「もう黙ってどこにも行くんじゃねえぞ」


とチャイが真顔で言った。


「はいはい」


と僕は笑った。


目が覚めると、ベッドの上だった。


「変な夢」


とつぶやき、僕は美咲ちゃんからの連絡が来てないかと、携帯を取ろうとした時、

右の掌に5ミリ幅位の、丸い金色のシミが付いている事に気づいた。


「何これ?」


とつぶやき、手でこすってみたが落ちる気配が無い。

全く身に覚えが無いので、どこかで付いたんじゃないかと思い、後で石けんで洗う事にし、携帯を手に取って見た。


『昨日はとても嬉しかったです。ありがとう』


と連絡があり、昨日の出来事が夢じゃなかった事が証明され、最高の気分に浸りながら、


『僕もとても嬉しかったです。ありがとう』


と返信した後、一階の洗面所で顔を洗った後、石けんで掌をこすりながら洗っていると、


「何してるの?」


とお母さんがやって来た。


「掌にペンキが何か付いちゃって、なかなか落ちないみたい」


言いながら、お母さんに掌を見せると、

お母さんは顔を強張らせた。


「お母さん?」


「・・・これはちょっと落ちにくそうね。でも気にしなくていいんじゃない?あ、お湯沸かしたままだったわ」


と慌てて台所へ去って行った。

その後、何度洗っても、色々試しても結局シミは落ちなかったけど、もうテスト休み入ってるし、夏休みも始まるから、学校の人間に会う事はほとんど無いので、その内消えるだろうと気にしなくなった。

それからテスト休みが終わり、期末テストが返却された。

英語は人生初の80点越えだった。

でも今回は、他の教科も、前より点が上回り、担任の先生にも褒められ、思わず美咲ちゃんの方を見そうになった。

そして、そのまま終業式を迎えた。


「ヒカル、成績すげー上がったんだな」


自転車で帰りながら、勇太が言ってきたので、


「うん、ちょっと勉強張り切ってみたんだ」


と答えた。


「すげーな、夏休みも勉強するのかよ」


「うん、もっと頑張ってみようかなと思って」


「そうか、なら良かったかも」


「え?」


「俺、夏休みはバイト増やそうと思ってて」


「そうなの?」


「うん、原付バイク欲しいんだ」


「へぇーいいね」


「でも原付高えし、だったらバイト三昧になるから、夏休みはヒカルと遊べねーなーと思って」


「あーそっかー」


「でもまあ勿論遊べる日もあると思うから、また連絡くれよな」


「うん」


「じゃあな、勉強頑張れよ」


と勇太は手をあげた。


「じゃあねー!」


と僕も手を挙げて別れた。


部屋に着くと、


「美咲ちゃーん、美咲ちゃーん」


と言いながら、美咲ちゃんにテストの結果とお礼の連絡をした。


チャイは、爪研ぎをしていた。


『よく頑張ったね!おめでとう』


すぐに返信が来た。

そして夏休みは、二人で予定を合わせ、図書館で勉強しようというやり取りをした。

僕はニコニコして、携帯をいじりながら、


「そういえばさあ、僕、最近変な夢見たんだよね」


と爪を研いでるチャイに言った。


「変な夢?」


チャイは爪を研ぎながら言った。


「うん、僕が白い猫になっちゃって、草原を走ってるんだ。そしたらチャイが僕の事呼んでるから、立ち止まって振り返るとチャイに『黙っていなくなるな!』って怒られて」


チャイの、爪を研ぐ動きが止まった。


「変な夢だよね、僕が猫だなんてありえないよ、本当に」


と言うと、チャイは無言で窓の方へ向かった。


「チャイ?」


顔を上げて呼んだが、そのまま窓から出て行った。


「変なの」


僕はつぶやき、再び携帯をいじった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ