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侯爵令嬢の華麗なる追放劇  作者: 文字塚
第1章 侯爵令嬢の華麗なる追放劇
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第8話 反撃

 ラムダはやはり狂気をまとい見ていられない。


「犯人です」

「なんの犯人だ。悪魔崇拝か」

「悪魔崇拝者は確かにいた。何せ私もその場にいましたから」


 観衆と化していたお歴々が、分かりやすくざわつき始めた。機先を制するようゲッツア殿下が続ける。


「なぜいた」

「5W1Hですね」

「なんの話だ。誤魔化すな」

「はい。一週間前の深夜、旧王都市街東地区で悪魔崇拝者による集会がありました」

「陛下、我が領土の行い。僭越ながら間違いありませんか」

「ない」


 短く言い切り、ハラルド陛下は皆を睥睨している。


「悪魔召喚とやらを行うと知り、見学に参りましたわ」

「通報しなさい」

「裏切り者がおります」


 端的に応じ、カーテシーを詫びとする。


「見学を第一とし、第二は悪魔を捕らえること」

「君の話は正気では聞いてられんな」

「はい。この世界の異様な変貌は、大抵異世界転生者絡み。つまり女神と魔王の行いです」

「女神は敵か。いや、異教の神か」

「実在する女神。一人と数えますが、聖ナルタヤの勇者が捕縛しています。会わせてはもらえませんでしたが」


 無念だが、転生者とは遭遇した。


「悪魔崇拝者による悪魔召喚の儀式。なんと本当に召喚されました」

「なんだと! 陛下! 事実ですか!」

「そうだ」

「証拠はこちらに」


 そうして小さな塊を取り出す。宝石のようなそれは鈍く光っている。


「なんだそれは」

「悪魔、とされていた召喚獣。悪魔と定義されているかは知りません。魔石に封じたものです」

「なぜ持って来る。危険ではないのか」

「分からせているので、ペットと変わりません」

「……そういうものか」

「はい」


 殿下の戸惑いは真っ当だ。しかしその他大勢と教会関係者はどうだろう。やはりルドルフ司祭は敵に回るか。


「関係者の処罰はまた後ほど。異国へは視察に。ルナリア最南端は魔獣だらけでした」

「なんの為に、そんな危険な真似を」

「正確な地理と地図。加え状況確認の為」

「最南端はあったんだな」

「はい。しかし重要なのはそこではありません」

「確かに。侯爵令嬢のそこもとが行うものではない」

「成否が問題です」


 殿下が静かに頷いたその刹那、


「いい加減にしろぉおおおお!」


 グロッキーだったラムダがキレた。頭の中の何かが切れている。


「さっきからグダグダグダグダ、お前は追放だ!」

「だったらあなたも追放よ」

「なんなんだお前は!」


 ずっと我慢してたけど、お前なんて酷い。幼い頃は一緒に遊んだこともある。全ては過去にすぎないのね。思い出は時と共に去り行く。

 ラムダは雄叫びを上げるよう続けた。


「追放だ!」

「そう追放よ」

「だから追放だ!」

「そうね追放ね」

「何を言って……もういい衛兵はどこだ! 陛下をお守りしろ! 反逆者を捕らえろ! 追放を実行しろよ!」

「テンプレを守る為?」

「そうだ! うるさい話しかけるな! 衛兵はどこだ! なぜ来ない!」


 ――来ねーよ。なんで分からんテンプレ脳。


「そもそも、ルナリアでハラスメントという言葉が使われるようになったのは最近の話。一部の方は頭に疑問符が浮かんでいた。テンプレート、テンプレ展開はまだ浸透していないようですね」

「私はどちらも知らなかった」

「殿下は世事に興味をお持ち下さい」

「ふむ、気をつけてみよう」

「うるさいぞお前ら! おっさんと悪役令嬢のいちゃいちゃなんて誰も求めてないんだよ!」


 そうかな? けれど、ラムダが哀れで見ていられないのは事実だ。


「結局、君は何がしたかった。陛下と話はついていたのか」

「いえ。皆様にお話しがあって参りました」


 ラムダは「なんで誰も来ない……」と茫然自失状態だ。悪いが相手していられない。


「では本題。慰謝料をいただきに参りました」

「誰が誰にだ」


 本質を突く重い指摘。返答次第で全てが明かされる。

 誰でもない私により。

 だから宣告する。


「――お前ら役立たずが、私にだ」

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