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侯爵令嬢の華麗なる追放劇  作者: 文字塚
第1章 侯爵令嬢の華麗なる追放劇
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第6話 歩くハラスメント

 それでもラムダは気力を振り絞り、口を開いた。


「君は自分の立場を分かっているのか……」

「婚約破棄された悪役な令嬢っぽい立場?」

「大体合ってる。それでどうして慰謝料って発想が出てくる」

「慰謝料は正義」

「可愛いの間違いだ。ズレ過ぎてて僕しか気づいてない……」


 律儀に指摘するとは、やはり婚約者。


「これでもまだ控えめに追及している。本来なら、命だって失いかねない……!」

「本来とは?」


 何か他にやらかしただろうか。

 ラムダは限界を越えたのか、懐から書類を取り出し読み上げ始めた。


「これは告発状だ。エルカ・ライン・アールブルトは歩くハラスメントである。以下被害の全容を記すーー」


 その告発は多岐に渡り、私から受けたというハラスメントの数々が滔々と並べられる。

 パワハラから始まりアルハラ、モラハラ、セクハラまで入っていた。

 突然、ミーシャが手を挙げる。


「私、ハラスメント受けましたわ!」

「どんな内容だ!」

「お前みたいな男に媚びるしか能のない女が、男も女もダメにする。って言われたわ!」

「採用! モラハラに認定する!」

「ありがとうございます!」

「次ないか!」


 ラムダ、あなたなんの大喜利大会を始める気?

 アリスが小さく手を挙げる。


「あのぅ」

「よしどんどん来い!」

「は、はい! お前見てると小動物のどてっ腹蹴りたくなるんだよなあ……あれなんで? って言われたことがあります!」

「よし採用! アニマルハラスメントに認定する!」

「ありがとうございます!」

「よし次、次ないか!」


 もはや何がなんだかだけれど、次から次へと手が挙がる。一部のお歴々は話についていけないようだけど、仕方ない。

 けれど私、そんなにハラスメントしてたっけ……。アニマルハラスメントって何?

 だけれど、確かに記憶しているものも含まれる。それがハラスメントに当たるとは思いも、してたな。してたけど、その時指摘してよ。

 知らないハラスメントは山のように積み重なるが、


「もうよい。貴公は何がしたいのだ」


 殿下が呆れ顔で制止した。


「む、このアバズレが男と密通した話がまだ出ていません」

「そんなことはよい」

「良くない! 無断外泊した挙げ句、他の男と一夜を過ごすなど、あなたは男としてそれを許せますか! しかも結婚前に!」


 殿下が閉口している。黙り込んだのではない、呆れを通り越したのだ。


「こいつは歩けば人を傷つけ、口を開けば人を罵る悪役令嬢! 嘘偽りを身にまとう、歩くハラスメントとはこいつにこそ相応しい!」


 ラムダめ、人をナチュラル・ボーン迷惑系配信者みたいに言いやがって。迷惑系配信なんてしてない! そもそもどうやってやるのかも知らない!

 ここで間に入ったのは、やはりゲッツア殿下だった。落ち着き払い述べる。


「冷静になれ。ここは国家を語る場。君の個人的人生観やモラルを持ち込むな」

「だったら最初から止めていただきたい!」

「そうすべきだった」

「悪魔崇拝は殿下の領土! あなたとて疑惑は免れない!」

「それが貴公の本音か」

「ついでだ!」


 ついでだったのか……! 確かに、これではナチュラル・ボーン迷惑系配信者みたいだ! 殿下まで巻き込んだ!

 早く収拾しないと、慰謝料受け取れない!


「あのぅ……」

「なんだこの裏切り者! 無断外泊常習犯!」

「否定はしませんが、慰謝料の話に戻りましょう」

「黙れ下郎! 家財没収の上追放だ! 一族郎党路頭でさまよえ! 語呂もいい!」

「語呂はともかく、それを決めるのはあなたではないわ」


 凛として応じると、自然と場が静まり返った。

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