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侯爵令嬢の華麗なる追放劇  作者: 文字塚
第1章 侯爵令嬢の華麗なる追放劇
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第2話 フィアンセはストーカー?

 初老の王族。まさかゲッツア殿下が口を挟むなんて。威風堂々としたその様は、実に堂に入っている。バリトンボイスが特徴的だ。整えられた口ひげは見事なもので、飾りでないと示している。

 あれを毎日手入れしているなんて、まるで乙女と変わらない。


「確かに……殿下の言う通りです」

「だろう。一体何が原因か」

「皆様にお聞かせするのは心苦しく。これでも元は婚約者。公然と批判するのは心が痛みます」


 今なんつった? 何を言ってるの。ここは天下の王宮。有力者の顔が幾人足りないけれど、王侯貴族が雁首揃えて、今更心のどこが痛むというの。

 そんなに痛むなら医者を呼べばいいのに。

 私は邪魔しない。


「それほど酷い話かね」

「はい。それでもよろしいというのなら。心ならずも語らせていただきます」

「よろしい。聞かせてもらおう。本来は王国の継承を話し合う場。国家の大事を話すに、余興を持ち込んだ君の勇気は認めよう」

「まさしく。国家の大事に関わりかねません……」


 そこまでか、と一同息を呑んでいる。

 さながら皆、推理小説の最終局面に立ち会う登場人物のようだ。

 犯人は私らしい。

 一つ息を吐き出し、勇を奮うかのようラムダはこちらに向き直る。


「エルカ・ライン・アールブルトは、悪魔と通じています」


 強烈な台詞が場を凍りつかせた。

 誰もが固まり、思考が停止したかのようだ。

 なるほど確かに、教会関係者がいる。

 彼自身にもリスクが生じる発言だ。


「彼女は以前から無断での外出、外泊が多かった」

「年頃だろう。それがどうしたというのだ」


 ただ一人、ゲッツア殿下だけは違うらしい。平然と問いかけている。


「はい。ですが国外ともなれば話は変わります」

「国外であったか。では許可が必要。隣国も同様だな」

「その通りであります」

「で、いずこに行ったというのだ。話に聞かんのはなぜか」


 殿下の素朴な疑問に、ラムダは声を落とした。


「ルナリア大陸は今、魔獣蔓延る事態となっています」

「うむ。魔族の討伐はいずれ考えねばならない。百年続く戦いは実に悲惨。大陸中央、北方が危ういとなれば我が国も同様。今は隣接するエストバル地域の安定が第一だが」

「彼女は魔族との戦いが続くエストバル地方、更に聖王国ナルタヤにまで足を伸ばしたと調べはついています」


 よくもまあ。私のフィアンセはストーカーだったのか。それも婚約者ゆえと思えば可愛いものだけど、今は糾弾されている。


「真逆のルナリア大陸南方にまで赴いた。そちらで妙な話を耳に入れました」


 ラムダの告発に皆心奪われているが、それあなたも来てないと耳に入らないよな? 出国許可取ったのか? 届け出ちゃんとしたの?

 でも婚約者、どこまでも追っていたのでしょう。使いに見張らせていたのかもしれない。健気。


「なんと彼女は未踏の大地、ルナリアの南端にまで足を運んでいるのです……!」


 思考停止状態だった周囲が騒然とし始めた。

 なるほど確かに、私達のルナリアは南北長く連なる巨大な大陸。

 正確には北ルナリア大陸と南ルナリア大陸に分かれているが、歴史に埋もれ皆事実を知らない。この南ルナリアだけがルナリアだと信じて疑わないのだ。

 その地形「奴」が言うには「異世界」の「南北アメリカ大陸」とやらに似ているらしい。


「未踏の大地、ルナリアの南端は魔族の手こそ伸びていないが、魔獣は確かに存在するっ……!」


 ラムダ、あなた見てきたように言うのね。魔獣動物園でもあったんだろうか。私見てない。行ってみたい。

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