表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
侯爵令嬢の華麗なる追放劇  作者: 文字塚
第1章 侯爵令嬢の華麗なる追放劇
18/84

第18話 真意

 残されたのは我々五人。

 ミーシャとアリスは居心地の悪さを感じ、落ち着きがない。何か言いたげな顔をしているが、最後まで私を見ていて欲しい。それが先輩として、あなた達に出来る最後の役割。

 口火を切ったのはライン王国最強の男、ハラルド陛下だった。


「しかしこんなことになろうとは。ゲッツア、貴様謀ったな」

「なんのことですかな。私はただ、職務に忠実であらんとしただけ」

「職務、全てそれに集約されるということか」


 睥睨としていた者から、今自責と後悔の念が垣間見られる。私の思いを伝えないと。


「陛下、この度の行いただただ猛省するばかり。それでも私は、全てを投げうつ覚悟で参りました」

「理解したと言った。遠慮もいらん。だが一つ、いやいくつか腑に落ちん点がある」

「なんなりと。いえなんでもどうぞ」

「うむ。エルカ、君の両親はなぜこの場にいた」

「教会、転生者の差し金。追放を確かなものとする為でしょう」

「君はそれで良かったのか」

「全く。子離れ親離れには丁度いい。と言いたいところですが、二人は格別の働きをしてくれました。アールブルト侯爵家は伊達ではありません」


 これには陛下も殿下も意外と表情に出ている。


「あれが演技というのか」

「恐らく。保険をかけたとも言います。私が何者か、父や母は知っています。そもそも……」

「そもそもなんだ」

「侯爵家とはいえ実の子を、我が娘とは呼びません。およそ名前か愛称です」

「符号であったか……したたかな。生き残りの道を模索し、親子の対立も辞さぬ。大胆不敵」

「本来ここにはおらぬはずの二人。教会や転生者は策に溺れたのですな」


 ゲッツア殿下は冷静に分析する。


「では二つ。この転生者の目的はなんだ」


 陛下はスズキ・マイケルを片時も離そうとしない。それだけ警戒している。前線を離れたとはいえ、自慢の魔法で仕留められなかった。


「スローなライフを謳ってはいましたが、ただただテンプレの実行あるのみ」

「こ奴が得るものはなんだ」

「更なる力。奴の転生ボーナスはテンプレ、定められた流れに沿うことで影響力を発揮する。或いは更に力を増す」

「だが失敗した。君はそれを予見していた」


 陛下の発言には遊びがない。無駄を省いた実直な姿勢。だが現役を離れて久しい。


「いえ、成功しています」

「なんだと?」


 ゲッツア殿下が強く反応した。


「あの転生者の力、恐らくかなり強い。人を誘導し、場合によっては支配する力すら持つでしょう。ただし、見通しが甘かった。所詮は素人。女神に与えられた能力に頼るしか能のない歪んだ異物。

 加えるなら、奴はこの場に来てしまった。もしかすると、それが能力を行使する条件」

「なぜだ。教会にいたのだろう? 君のことは知っているはず」


 告げた後、陛下は思い当たったらしい。


「そういうことか……」

「はい。常日頃から教会、及びギルドから私の動きはほぼ筒抜けでした。一つ、騎士団を除いて」

「偽の情報を流したな」

「仰る通り」

「逆手に取る。だから私には君の姿が見えなかったのか……」


 陛下は語尾を弱らせ、物思いに耽るようだ。

 情報操作の結果、私の存在は曖昧となる。結果私の人物像、及び功績実績は実に正確性を欠くものとなった。

 聡い諸侯は独断で動く私を疎ましく思い、情報を隠蔽。或いは不都合な情報だけを報告し続けた。裏切り者は確実にいる。

 王宮に届く頃には加工され尽くし、私の存在は、諸侯と自らにより撹乱される。陛下の耳に届く頃には、わけの分からぬものになっていただろう。

 殿下ですら、私という存在が確かなものか、ギリギリまで把握していなかった。


「では、テンプレとやらが成功したとはどういうことだ」


 陛下の問いに、率直に応じるのは心苦しい。それでも今更引き返せない。ラムダの言葉を借りるなら真摯ではない。

 勇を奮い言葉とする。


「私はここに、追放されに来たのです」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ