第13話 ざまあ
ラムダがこちらを見ている。
何か言いたげだが、出番ではない。
「騎士の皆様、そろそろお開きにしましょう」
「待てエルカ。君は結局何がしたかった……」
出番ではないのに……ラムダ、あなたって人は。
「ラムダ、情報は全て公開されているわ」
「わけが分からない。公開された情報で、何をしろというんだ」
「あなたには少し時間がある。だから考えて」
考えて、更に考えて。自分がこれからどうなるのか。彼らがどうなるか。
翻り、怒りを表し彼らと向き合う。
「実に不愉快な光景。役に立たぬ王族に邪魔する諸侯、そして裏切り者。君達に相応しい罰を与える」
「裏切り?」とラムダは呟いた。
そう考えて。
一人の騎士に向かい問いかける。
「騎士よ、君は彼らをどう罰する」
「はっ!」
指命された騎士が一歩前に出る。
「諸侯の罪はエルカ様の活動を支援しなかったことが第一。我らの独自行動を制限したが第二。そもそもエルカ様の活動を把握せず、把握したらば握り潰す。周辺諸国の情報収集すら為されていないが第三。これらは極刑に値します!」
「よろしいならば極刑だ」
素早く応じ彼らを見回す。見たところ実感が湧くのは極刑ぐらいらしい。なんともはや。ラムダはこの光景を目の当たりにし、また呟いた。
「君、これはもしかして……」
そう、あなたが望んでいたもの。
「では次の騎士。君は彼らをどう判断する」
「怠惰につきます。ナマケモノなら野獣の類、害はありませんがこいつらは違う。我々をこき使いながら、頭の中は税収と酒と男女の色恋ばかり。年も考えず領民の存在も顧みない。俺達の給料ぐらい上げろ、何年据え置きだ!」
「私怨が含まれているが素直で結構。で、罪状は」
「過ぎた怠惰は極刑にしかり!」
「よろしいならば極刑だ。次」
ラムダは確信したらしい。
そう、これがあなたの望んだ光景。
「神殿騎士よ、言いたいことはないか」
「教会にはうんざりです」
「具体的に頼む」
「ならば。贖宥状を乱造するな! そんなに好きなら免罪符は自身に使え! 効果があれば神は寛大な処置を施すであろう。だが我々は違う!」
「どう違う」
「性犯罪者を匿うな! 少年少女の被害が陰に隠れるは貴様らが隠蔽しているからだ! その薄汚い口で二度と神を語るな! 教員と聖職者を見たら性犯罪者と思えという風潮つくった罪は免れがたし!」
「具体的に頼む」
「極刑すら生ぬるい! 熱々に焼いてやるから覚悟しろ!」
「よろしいならば極刑だ。火刑も考慮しよう」
「感謝の極み!」
頭を垂れる様を見届け、更に続ける。
「では次!」
「はっ。これは気合いではありません!」
「知っている」
「はっ!」
ラムダを見ると、薄笑いを浮かべていた。いや、泣き笑いだろうか。だがまだ早い。まだこれからだ。ライン騎士団の一人が前に出る。
「恐れながらエルカ様、そもそも奴らの頭数が多すぎます」
「具体的に頼む」
「特権は特別な者にこそ宿る。我が騎士団は徹底した実力主義。では彼らの特別とは何か? ない! 持たざる者共が支配する国など衰退は目に見えている!」
「君は専制君主を支持する者か。それとも民衆に託すというのか」
「恐れながら時期尚早! 我らは戦う体制の構築を強く支持します! ライン騎士団なくして平和は存在しない!」
「自負は理解した。で、罪状は」
「国家反逆罪! 極刑を支持します!」
「よろしいならば極刑だ」
二十人そこらの騎士達が、矢継ぎ早に前に出る。
一人の騎士がそれらに先んじた。
「私も発言の許可を!」
「いいだろう」
「諸侯並びにご家族、実に立派な出で立ち。住居も豪華絢爛。それは誰の金です」
「税収だ」
「知っています。私など武具甲冑の替えもない!」
「具体的に頼む」
「領主の散財は悪! 極刑以外は死んだ戦友が納得しない!」
「よろしいならば極刑だ」
数に勝る諸侯とその仲間が気圧されている。修羅場が違う。私怨も混ざるが、彼らは戦う者達だ。
「俺もいいですか。病院騎士団の者です」
「一向に構わない」
「俺の愛馬が盗まれました」
「それは気の毒。具体的に頼む」
「愛馬が盗まれた。治安が悪すぎる……! 全部こいつらのせいだ! 社会が憎い! もっと課金しろというのか! そんな金どこにある!」
「罪状は」
「俺の愛馬が! 盗まれた! 罪! 課金を煽り、傘と愛馬を盗む輩は極刑だ! 馬に蹴られて死んでしまえ!」
「貴公、それは馬に負担がかかる。愛馬を持ったあなたになら分かるだろう。馬のような何か、でも構わないか。恐らく魔獣になるが」
「それで構いません! 探して来ます!」
「よろしいならば極刑だ。馬のような何かの捜索も許可しよう。病院騎士団には話をつける」
「あざっす!」
もう分かったろう。
ざまあだ。
ミステリよろしく謎を解き犯人探しをするだけではない。これが私なりのざまあだ。お前らが私にしようとしたものだ。