親友
「ねぇねぇ、葉音」
「何?」
「私今日部活休みんだけど」
クルクルと私の周りを回る澪。花に群がる蜂みたいなっている。部活がなくて期限がいいのがよく分かる。
大体こういう時は何かある。例えば、ご飯に付き合わされたり。
「もんじゃすんごく食べたいんだよね」
ほれ来た。
「お店は決まってるの?」
スマホを懐から取り出し、お世話になっております、グー○ルさんを開いておく。
「なーい!」
「はいはい、もんじゃね、分かったから。ちょっと待って」
バスに乗り込みつつ、親指を動かす。澪はバレー部らしいと言うか、まったく女っ気のない食べ物を毎回チョイスする。それも割とマイナー。
花の女子高生であるが、無駄に高い可愛いスイーツよりはこっちの方が私も好きだ。意外なところで気が合ったりする。
「予算とかご希望は何かある?」
「ん~なし。お財布に優しかったらいいかなぐらいです!」
「あい~」
「葉音って読書好きだったけ?」
今日、昼休みに抜け出したから来た質問だ。
「いや、先週図書委員の仕事で、暇つぶしに読んでたのがもう少しだったからさ。借りるまではいかないけど、面白かったから読み切りたいなって思って」
嘘はついていない。先週暇つぶしに本を読んでいたし、短編小説だからもうちょっとで読み終わりそうだった。
今日は別の図書委員の手前、話がメインではあったけど本は読んだ。
「私でも読めそうなやつとかありそう?」
「澪には無理。ハラペコアオムシでも音読してあげるから」
「児童書まで読んでもらわないといけない程バカじゃないよっ」
嘘はついてないけど、バレてはなさそう。こういう時陽キャラの目を見て話してくるのが怖い。なんか何でも見破ってきそうだ。
「混む前に行ってこい、澪モン!」
「でんこうせっか!うおお」
澪はカバンを持っているのに、それなりスピードで駅近くを駆け抜ける。
本当に店の先約を取ってくれるかと思ったが、Uターン。
「ハァ、ハァ。これで満足ですか?ポケモントレーナーさん」
「お腹すかせて行った方がいいじゃん」
「葉音も一緒に走らなきゃ」
「運動バカと一緒になんて無理。こちら写真部だが!」
部活強制加入の学校が生んだ、幽霊部員専用部。その名も写真部。活動内容は月に一度、取った写真を見せ合うこと。もう六月だが、そんな集会はまだない!
「いっそうバレー部マネージャーにでもならない?」
「いやで~す」
「知ってたっ」
お話ししてたら、お店に到着。すんなりと席に案内される。
もんじゃは自分で作る形式。材料が運ばれるために、私のお腹の虫はご機嫌に、澪はなぞの拍手をしている。
ジュージューと小気味良い音と香ばしい匂いが漂ってくる。ぐつぐつと空気の泡が抜けていく。
私は小さいヘラを両手に構えれば準備完了。調理過程は番頭の澪様が全て滞りなくやってくれた。
「「いただきます」」
熱々のもんじゃを一口。フーフーして、いざ。
あち、あちっ。まだまだ熱すぎる。澪と目を見合わせて、一緒にホフホフ言って必死に冷ます。味付けはメジャーなもので溶けた角チーズがとても美味しい。
「うまっ!いい店選びましたね、葉音さんっ」
両手に持っているヘラでこっちを指して褒めてくれる。カマキリみたいだ。
「いやいや、上手く作ってくれましたね、澪さんっ」
私もカマキリになる。
「でさ、本題なんだけど、猫又くんのこと好きなの?」
私のカマはしょげていった。