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6話 「デートの終わり」

 そんなこんなで帰りの電車に乗って、美佐を家まで送る。玄関の扉を閉めるまで見届けて、俺も家に帰ろうと足を動かす、すると、


「お疲れさまでした、蒼樹さん」


「め、芽依!?」


 気付かない内に隣にいた芽依に労わられる。だけど、喜びより先に驚きが来た。てっきり先に帰っているのだとばかり考えていたから。


「私はずっと蒼樹さんを見守っていましたよ。いやぁ、ホテルに誘わなかったのはチキンだなーって思いました」


「多分それが普通だと思うぞ。あと、見守ってるってなんだよ。どこから見てたんだよ」


 聞き逃せない言葉が聞こえた。芽依が蒼樹を見ていたこと。しかし、結局帰りの電車の中でも見つけることはできなかった。


「どこって、割と近くですよ。蒼樹さんから十メートルも離れたことはなかったですし」


 どこに行くにしても十メートル以内にはいたのなら、蒼樹が見つけられなかった理由が分からない。


「まあ、私ってサンタですし? そのくらいはできますよ」


「いやその理屈はおかしい」


 サンタという概念を芽依はなんだと思っているのか。


「そういや、芽依の家はどこなんだ?」


「どうしたんですか? 積極的ですね」


「違えよ! 女子一人で帰らせるわけにもいかねえって話だよ」


 俺の言葉にキョトンとした芽依は、顔を伏せる。


「……やっぱり、優しいですね」


 少しだけ、なにを呟いた気がしたが、俺の耳には届かなかった。


「実は蒼樹さんの家から結構離れてるんですけど、大丈夫です! 蒼樹さんの家に泊めてもらいますから!」


「…………は?」


 自分の耳を疑った。芽依は一体なにを言っているんだ?


「いや、歩いて帰るのも夜遅くで危ないですし、電車ももう終電がないじゃないですか」


「そう、だけど……」


 ここまで付いてきた時点で帰る選択肢はなかったということだった。


「駄目……ですか?」


 上目遣いで聞いてくるのは反則だと思う。終電の時間まで遊んだことがないから本当に終電がないか分からない。そこを聞こうと思っていたのに、芽依の可愛らしい仕草で全てが吹っ飛んでいった。顔が熱くなっているのを感じて、芽依から顔を逸らす。


「仕方ないよな。だって、帰れないんだし」


「やったー! じゃあ帰りましょう!」


 恐らく、芽依が帰れないと言ったのは事実なんだろう。そう思うことにして、二人で家に帰る。


「おかえり、お兄ちゃん! ……って、隣の人誰?」


 家に入った瞬間走ってきた紫音。俺の隣に立っている芽依に目を奪われている。


「俺の友達だよ。芽依って呼んであげてくれ」


「お兄ちゃん……美佐さん以外にも女友達を……」


「驚く気持ちも分かるけどな。前までの俺だったら絶対してないだろうし」


 だからこそ女友達を作るきっかけになった美佐には感謝している。


「今日はもう帰れないらしくて、泊めたいんだけど母さん起きてる?」


「うん、リビングにいるよ。私はもう寝るけど……お兄ちゃん変なことしないでね」


「しねえよ!」


 俺をなんだと思ってるのか。以前ならともかく、今はそこまで危険視されるようなことはないだろう。


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