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第57話 「打ち上げと呪物」

 夕陽が教室を橙色に染め上げるころ、文化祭の終了が近づいていた。俺たちが参加する予定だった舞台も片づけが始まっている。


「蒼樹……と、芽依ちゃん!? 体調は大丈夫なの? ゆっくりしてていいのに……」


「大丈夫って言いながら無理してた私じゃ説得力はないですけど、今回は本当に大丈夫です。肩の荷が下りた……って言い方が正しいかも分かりませんが、とにかく大丈夫です!」


 いつも通りの元気な声になった芽依が胸をトン、と叩く。


「よかった……でも、無理は禁物だからね。危ないと思ったらすぐ休むんだよ」


「はい。色々と反省しましたので……あと、みなさんを心配させたくないですし」


 俺は舞台の手伝いをしながら芽依と美佐のやり取りを眺めている。あんまり見過ぎて変態みたいに思われても嫌だしちょくちょく目を離してるけど。……それでも気になる。


「あ、でも元気になったならちょうどよかったかも。実はみんなで打ち上げに行こうっていう話になってたんだ。蒼樹と芽依ちゃんが練習で一生懸命だったのみんなも知ってるし、誘おうって」


「打ち上げいいですね! 行きたいです!」


「俺も誘ってくれるなら行きたいな」


「じゃあ決まりだね!」


 片付けも終わって、文化祭も終了すると時間はもう十八時を回っていた。舞台を演じてくれた人と、裏方の人たち。あとは生徒会の人も呼んで打ち上げをすることになった。

 とはいえ、俺達の年齢で居酒屋に行くわけにもいかず、ファミレスになってしまった。


「今日の文化祭成功を祝して、乾杯!」


 会長の掛け声とともに俺たちは手に取ったコップを当て合う。俺の中身はウーロン茶だ。


「蒼樹さん、なんだかお父さんみたいです……」


「いいだろ、なに飲んだって。好きなんだよ」


 言いたいことは分かるけどさ。コーラみたいな炭酸強いやつはむせるんだ。やっぱりお茶が一番だよ。


「おい蒼樹! オレのジュース見ろよ! なんかすげえ色になっちまってる!」


 一二三がコップを俺に見せつけてくる。黒っぽいような、どこか茶色みがかっているような変な色だった。


「これ……なにが入ってるんだ?」


「コーラとサイダーと麦茶とオレンジジュースと……あとなんだっけ?」


「いや、もう十分だ……」


 とりあえずやばい代物だということは分かった。なるべく関わらないようにしよう。


「あ、手が滑った」


 直後一二三のコップの中にあった「なにか」が俺のコップに注ぎこまれる。


「お、お前えええええええ!」


「ははは、悪い悪い」


「絶対わざとだろ」


「うむ、蒼樹も巻き添えにしてやろうという気がないかと言われればそんなこともなくもなくもなくもなくもない」


 ――結論、わざとである。


「……で、誰が処理すんだよこれ」

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