表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

42/66

第42話 「主役乱入」

「とりあえず演技に集中しよう」


「はい……」


 俺たちを見る周りの目線が生暖かいものになっている気がして若干気まずい雰囲気。だけど、気にしないようにするしかない。


 練習が終わったのは二十時を過ぎた頃だった。休憩が終わってからは同じシーンを何度かやってみて覚える感じの練習をしていた。まだまだ序盤しか覚えきれていないけど、初めてにしては上手くいった方だと思う。

 帰る準備でも始めようかという雰囲気になった体育館の中、そこに一人の男子生徒が入ってくる。


「蒼樹! お前が舞台に出るなんて聞いてねえぞ!」


「お前、誰だっけ」


「文月一二三ですけど!? お前の! 友達の! 忘れてんじゃねえよ!」



「冗談だよ。忘れてねえって。……ところで苗字はなんて言うんだっけ」


「忘れてんじゃねえか!」


 ちゃんと覚えてるけど、ノリがいいからついからかってしまう。


「舞台なんて目立つところに出やがって! しかもオレの許可もなく!」


「なんで一二三の許可がいるんだよ。ていうか、やりたかったなら代わる……」


 と、その先を言おうとした瞬間、俺の袖が引っ張られる。原因は芽依だった。芽依がなにかを言ったわけではないけど、悲しそうな表情を見てしまって迂闊な発言はできなくなった。


「……わけにはいかないけど、他の役なら空いてるのもあるからできると思うぞ」


「オレは主人公がやりたかったよせっかくなら! 目立つし! でも、蒼樹が幸せならオッケーです」


「勝手に納得するな」


 もはやなにしに来たんだよこいつ。


「蒼樹、台本貸してくれ!」


「あぁ、いいけど」


 コピーすれば台本はまた作れるし、と一二三に手渡す。すると一二三はパラパラとめくりながら俺に向けて宣言してくる。


「主役の台詞覚えてくるから、今度どっちが演技上手いか勝負しようぜ!」


「……負けたらどうなるんだ?」


「悔しい!」


「それだけかよ」


 どんだけ主役を演じたかったんだ。芽依に頼む前だったら交代してやれたんだけどな。


「じゃ、そういうことで!」


 台本を受け取るなり体育館を去っていく一二三。すぐに見えなくなり、俺は思わず声を漏らした。


「嵐のような奴だったな。知ってたけど」


 多分一二三も一二三で文化祭の準備をしているはずだ。忙しさが一周回ってハイテンションになっているのかもしれない。……多分。


「えっと……帰りましょうか、蒼樹さん」


 一二三の謎テンションについてこれない芽依が困ったように眉を寄せながら、そう言った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ