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21話 「友人として」

「――っ!」


 芽依が驚きで目を見開く。


「……なんで、そう思ったんですか?」


「なんでって、勘だよ。なんとなく聞き覚えがあるなって思ってさ」


 芽依は俺の言葉になんと言うべきか迷っているようだった。何度か言葉を紡ぎかけては止め、悩ましそうに頭を抱える。


「――初めまして、ですよ。ちゃんと。『今』の蒼樹さんとはクリスマスの時に初めて会いました」


 芽依の言い方に違和感を覚えた俺は首を傾げる。


「今のってなんのことだ?」


「いえ、言い間違いです。ちゃんと蒼樹さんとは初対面でしたよ」


「そっか」


 どうしてかはぐらかされたようにも感じるけど、それ以上追及するほどのことでもない。たとえ過去にあったことがあったとしてもなかったとしても、友人になった現状は変わらないのだから。


「聞きたかったのはそれだけですか? 他に話したいことがあれば答えますよ」


「いや、特には……違うな。もう一つあった」


 折角こうして真面目に話せる機会がきたわけだし、と俺は口を開く。


「俺は芽依のこと友達だと思ってるし、美佐のことを抜きにしても仲良くしたいと思ってる。だから、また時間があるときは遊びに行こう。今度は、サンタ服なしで」


 サンタ姿だとどうしても仕事の印象が強くなってしまう。友達と遊ぶときに、それは必要ない。


「そりゃ美佐を優先するし、その時には芽依にも手伝ってもらいたいけど、仕事だけの関係にはなりたくないから」


「友達、ですか。……確かに、私も蒼樹さんと普通に遊んだりできるならそうしたいです」


「決まりだな。良かった、断られたらどうしようと思った」


「断りませんよ! 絶対!」


 今日二人で遊んでみてよく分かった。芽依と一緒に遊ぶのは楽しいし、緊張しないで接していられるのは気が楽だ。蒼樹がなにを言っても笑って受け入れてくれるし、むしろ芽依の方から色々提案してくれる。その関係は居心地が良い。


「俺は、芽依と出会えて良かったよ。ありがとう」


 心から思ったことを伝える。それを聞いた芽依は再び顔が赤くなる。


「こちらこそ、ありがとうございます。……あ、私お風呂お借りしますね。今日結構遊んだので汗かいちゃって」


 そう言って、芽依が逃げるように部屋を出ていく。床に座っていて足がしびれかけていた俺は、芽依のいなくなったベッドに腰掛ける。


「女友達、かぁ。懐かしい単語だな」


 ベッドの上に身を投げ出して、俺はかつての記憶を思い出す。


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