20話 「いつかの記憶」
ようやく俺の降りる駅に到着した。
「って、そういや俺って芽依の降りる駅知らなくね?」
それに気づいて、芽依の肩を揺らすが一向に起きる気配がない。電車が再出発するアナウンスが流れる。ここを逃せば俺は一駅分歩いて帰らなきゃいけない。芽依を抱えて。
「はあ……仕方ないか」
なし崩し的に芽依を連れ帰ることになり、俺は電車を降りる。
*
突然芽依を連れ帰ったせいでなんの準備もできていない。前みたいに紫音のベッドに寝かせようと思ったけど、紫音はもう寝ていた。流石になにも言わずに隣に置くのは良くないだろう。
仕方なく俺のベッドに寝転がして、俺は床に座る。しばらくして目を覚ました芽依。現状を理解できないといった様子できょろきょろ顔を動かす。
「ここ、は……蒼樹さんの……?」
「寝てたから芽依をどこに送ったら良いのか分からなくて連れてきた。悪いな」
「私が聞きたいのはそういうことじゃなくて……ここ蒼樹さんのベッドですよね?」
「そうだな」
段々今の状況を認識してきた芽依の顔が赤くなる。
「私は全然床でも寝れるので! 気を使ってもらわなくても大丈夫です!」
「なんでそんな慌ててんだよ。前俺の家に来た時はめちゃくちゃ楽しそうだったのに」
「覚悟を決めてる時と不意打ちとでは違います! もっと、心の準備が……」
芽依が両手で自分の顔を覆う。
「そ、それでなんで私を家に……まさか、私とベッドの上で……」
「違うって! だから、帰る途中で寝ちゃったから連れて帰るしかなかったって言っただろ!」
とんでもない勘違いが始まっている芽依を制止する。
「ですよね……いや、分かってましたよ。分かってましたとも」
「絶対嘘だ」
「美佐さんというものがありながら、なんて思ってないですよ」
「その言い方は絶対思ってただろ」
話している内に芽依の動揺も収まってきた。さっきまでほど顔は赤くない。
「状況は分かりました。私を連れ帰って下さりありがとうございます」
「礼はいらないって。俺を楽しませようと頑張ってくれたから余計疲れたんだなってのは分かってるから」
いえいえそんなことは……と、芽依が否定してくる。このままではいたちごっこだ。俺は話を切り替えるべく、別の話題を口に出す。
「あと、ちょっと気になってたことがあるんだけど」
「……? なんでしょうか。私に答えられることでしたら答えますよ」
俺は少し前から気になっていた。芽依の声に、どこか聞き覚えがあったのだ。
「俺達、前にどこかで会ったことないか?」




