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18話 「遊園地デート(仮)」

 ふざけた内容が結構な割合で入っているらしい。ろくでもねえなこの神社。

 おみくじで煽られるという世にも奇妙な体験をした俺達はみんなで写真を撮った後、神社から離れる。俺の家でおせちを用意して新年を祝う準備をしているからと二人も誘う。


 俺の家で騒がしい新年を迎え、そして楽しかった一日も終わりが訪れる。美佐と芽依を家に帰してから俺は一人でスマホのフォルダに保存した写真を眺める。

 着物の美佐と、サンタ姿の芽依。そして普段着の俺。中々に珍しい組み合わせの光景は俺の目に眩しく映った。


「ほんとに、このままが続けばいいよな」


 ベッドに寝転びながら、俺は呟くと目を閉じた。



 時は流れ、俺は芽依と二人でデズニ―ランドに来ていた。以前話していた下見の件だった。今日はサンタアイテムも必要ないだろうということで、私服の芽依だ。サンタ服じゃないのが違和感になるくらい見慣れてしまっている。


 俺は遊園地に来た経験がないから、美佐とのデートで知識不足がバレたくない。今日でベテランとまではいかなくても、素人は脱出するぐらいの経験がしたいところだ。


「どのアトラクションから行きます? 蒼樹さんって苦手なアトラクションとかありますか?」


「分からねえ。それを知るのも今日の目的だから、とりあえず目についたやつは全部行きたい」


「じゃあ最初は絶叫マシンですね!」


「よく知らないけどそんな『とりあえず生』、みたいな感覚で良いのか?」


 父親が飲み会ではなにをするにもまずはビールを飲むと言っていたことを思い出す。そのくらいの軽さで乗ってもいいやつなんだ、それ。


「遊園地で遊ぶのに順番はないですからね~。さ、行きましょう」


 芽依に手を引かれて行列に並ぶ。人がいなさそうな日を狙ったけど、やっぱり行列は長い。一時間ほど並んでから絶叫マシンに乗る。

 マシンから降りた時、芽依が笑顔で言う。


「いやぁ、楽しかったですねー! って、蒼樹さん大丈夫ですか!?」


 元気な芽依に比べて俺の気分は悪い。めちゃくちゃ吐きそう。ここが自分の家だったら吐いてた。そのぐらい気持ち悪くなっていた。


「だ、大丈夫……」


「絶対嘘じゃないですか!」


 嘘をあっさり見抜かれた。流石に騙せないか。


「とりあえずお手洗いに行きましょう。蒼樹さん、もう少し辛抱してくださいね」


 芽依が俺を支えて歩く。筋肉のない細い腕が、必死に俺の身体を掴んでいる。トイレに着くころには芽依も行き絶え絶えと言った様子になっていた。

 俺は芽依にお礼を言ってからトイレに入り、出かかっていたモノを存分に吐き出す。ある程度体調が治るまで籠ってから、外に出る。トイレの入り口近くで、三角座りをしている芽依と目が合った。


「すみません。私に付き合わせて蒼樹さんに迷惑を……」


「俺自身も苦手なのは分かってなかったんだから仕方ないよ。寧ろ、乗れないのが分かってよかった。芽依、ありがとな」


 芽依に気を使った言葉に聞こえるだろうが、本心だった。ここで苦手なのを知れたことは収穫だ。多分下見に来なかったら美佐とのデートで格好つけてマシンに乗り、グロッキーになっていただろう。そんな最悪の事態にならなくて良かった。


「俺は芽依に迷惑をかけたのを悪いと思ってるよ。ごめんな」


「いえ、私は良いんですけど……あ、そうだ」


「どうした?」


 なにかを思いついたような芽依は立ち上がって、スカートに着いた砂を払い落とすと、俺に指先を突き付ける。


「私は重い荷物を持って疲れちゃいました。なので私がふらつかないように、今日一日は手を繋いで歩いてください」


 てっきりなにか奢るとかそういう話になるものだと思っていたし、そのつもりだった。だから、芽依の言葉に俺は意表を突かれた。



「これは強制です。蒼樹さんに拒否権はありませんよ?」



 それを言われるともはや俺に否定することはできなかった。


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