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17話 「おみくじ」

「どうする? 芽依」


「じゃあお言葉に甘えさせてもらいますね」


 それから美佐と合流し、三人でお参りをした。


「ねえ、蒼樹と芽依ちゃんはなにを願ったの?」


「それって人に話して良いんでしたっけ?」


「別に良いだろ。ていうか、それ本気で信じてるやついたんだな」


「サンタを信じてた蒼樹さんに言われたくありませーん」


「それは違うって!」


 本当にサンタを信じてたわけじゃないけど、ここで言い返しても言い訳にしかならなさそうだ。


「言っちゃいますけど、私の願いは世界平和です!」


「叶わない願いは願いじゃないぞ」


「か、叶いますって……あやっぱ無理かも」


「もう終わりだよ」


 人一人の願いにしてはスケールがでかすぎる。そもそも叶いそうもないのに自分が信じきれないならどうしようもない。


「お参りをやり直してきます。今度はいけそうな願いで!」


「ソシャゲじゃないんだから、リセット機能はねえよ。あとシンプルに他のお客さんの邪魔だから」


 列に割り込む勢いで拝殿の前に行こうとする芽依。俺は首根っこを摑まえて離さない。


「蒼樹は? なにを願ったの?」


「俺は……このまま、美佐や芽依と当たり前に話せる日常が続くように、かな。あと一二三も」


「そんなオマケみたいな感覚で……」


 仲が良いからこういう扱いをしても大丈夫という信頼の表れだ。……そういうことにしておく。


「俺達のを聞いたんだから美佐の願いも聞きたいけど、なにを願ったんだ?」


「二人の願いが叶いますようにって。――私の願いは、もう多分叶わないから」


「それは……」


 どういう意味だ、と聞きかけて、口を閉じる。どうしてか、聞いてはいけないような気がした。

 俺達はその後、おみくじを引きに行って、それぞれの運勢を占った。


「あ、大吉だ。あたし、運だけは良いっぽい?」


「俺は小吉だった。……一番コメントづれえ」


 二人して吉を当てて喜びを分かち合っていると、おみくじを見た芽依が絶望的な表情をしている。


「『神凶』…………って、なんですかこの運勢初めて見ましたよ!? 神ってことは良いこと……? いやでも凶って書いてあるし……」


 俺も初めて聞いた。絶対嘘だろと思って芽依の持っているおみくじを覗いたが、ちゃんと神凶と書いてあった。嘘であってほしかった。

 おみくじの入った箱の近くに、看板があり、そこにおみくじの運勢一覧が載っていたので神凶を探してみる。


「……大凶をも超える真なる不幸。即ち神凶。あらゆる不幸を寄せ付ける体質です。因みに神凶は神主の息子(六歳)が考えました……だそうだ」


「納得いきませんよ!?」


 あらゆる不幸を寄せ付けるって、新年からこんなおみくじを引かせるな。


「他にも色々オリジナルの運勢があるっぽいぞ」



「えーっと、なになに。『紙吉』……あなたの幸運は紙のようにはかなく散りやすい。その限りある幸運をいつどこで使うかはあなた次第ですよ(笑)……これ完全に煽ってますよね!?」


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