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15話 「二人の夜」

 信じられないくらい大きな声が出てる。ここまで大きな声が出せたんだな。


「そこまで驚くことか?」


「いやいやいや驚くことですよ! そ、そんな私が蒼樹さんと付き合うなんて……」


 芽依がなにに動揺しているのかに気付いた瞬間、俺は自分の失態を理解する。


「すまん、俺が言葉足らずだった。俺が美佐とデズニーに行く前に、下見に行きたかったんだ。それに付き合ってほしくて」


 完全に言ったつもりになっていたが、さっきの文脈通りなら俺と芽依が彼氏彼女の関係になるという風にしか聞き取れない。

 俺の言い分で納得できたのか、芽依は胸を撫でおろす。


「そうですよね。ちょっと安心しました……」


「説明したと思い込んでた。本当に悪かった」


「――別にそれでも良かったんですけどね」


 ぼそりと呟いた芽依の言葉は、俺の耳には届かなかった。


「今、なにか言ったか?」


「いえ、なんでもないですよ」


 いつものように明るい笑顔を浮かべて、芽依が言う。


「そういうことなら、ありがたくもらっておきます。一緒に遊びに行ける日を楽しみにしてますね」


 バスが停車する。最寄りのバス停に着いたのだ。


「じゃあ俺はここで降りるけど、芽依はどうするんだ?」


「私はもう少し先なので。今日は楽しかったですよ、蒼樹さん。ありがとうございます」


「ああ、そうだな。また明日」


「また明日」


 最後に手を振って、俺は芽依と別れる。窓越しに手を振ってくれる芽依に手を振り返して、その姿が見えなくなってから俺は帰路に就く。

 芽依と出会ってから、時間の流れが速く感じる。楽しい時間は早く過ぎると言う。俺が芽依の隣に居心地の良さを感じているのは事実だった。


「でも、大丈夫。心は揺れてない」


 あくまで友達として、一緒にいて楽しい。ただそれだけだ。そこに異性としての気持ちはない……多分。

 自分の心を奥に秘めて、俺はゆっくりと家に帰る。


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