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14話 「突然の提案」

「それはありがたいけど、一旦離れてくれ」


 芽依の肩を掴んで無理やり距離を取る。これ以上だと意識せざるを得なくなる。そんな俺の葛藤を知らない一二三は茶化しに来る。


「いいな~芽依ちゃんとなに話してたんだよ~。蒼樹だけずるいぞー!」


「別に特別なことは話してないって。それより、くじを引きに行かなきゃ。早くしないと他の人に取られるかもしれないしな」


 俺は逃げるようにくじ引きの前に行き、券を見せる。芽依の言葉を信じるならば、これで一等が取れるはずだ。

 心の中で祈りつつ、箱の中に手を入れる。すると、一枚の紙を俺の指が触れる。恐らく芽依がアタリのくじを誘導してくれているはずだと信じ、それを取り出す。


『おめでとうございます! 一等の年間パスが当たりましたー!』


 女性店員が俺を祝福してくれる。俺は芽依の方を見て心の中で感謝を伝える。だけど、


「えっ……」


 芽依は驚いたような顔をしている。てっきりドヤ顔でも決めているのかと思っていたのだが。俺は年パスを受け取って、芽依達の元に戻る。


「蒼樹さん、当てられたんですね」


「芽依が上手くやってくれたんだろ?」


「私がくじを選ぼうと思ってたんですけど、予想より蒼樹さんの手が速かったので、お手伝いできませんでした」


「ってことはオレがアタリを引けたのは完全に運って事か?」


「そうなりますね。これは運命ですよ!」


 運命なんて信じたことはなかったけど、他の人の力を頼らずに引けたのは奇跡なのは間違いない。こういう時は信じたくなる。


「しかも二枚貰ってんじゃねえか。丁度美佐ちゃんと一緒に行けるな」


 もう一枚は自分で買うしかないと思っていたので重畳だ。


「開始日は来年からだから、年明けたら渡そうかな」


 年末には使えないし、そもそも年明けまで忙しいから使う時間もないだろう。

 買い物に時間を使ったし、帰りのバスのことも考えるとあまり遊ぶ時間がない。


「ちょっともったいない気がするけど、今日はもう帰るか」


「そうだな。悪い。俺の都合に付き合わせちまって」


 一二三に向けて軽く頭を下げる。だけど一二三は気にしていなかったようで、「いいよいいよ。楽しかったし」と返してくれる。


 一二三の家は徒歩圏内ということで俺達と分かれ帰る。俺は芽依と一緒にバスに乗り、家に帰る。

 バスに揺られながら、俺は年パスを芽依に差し出す。


「え、どうしたんですか?」


「これ、芽依に上げるよ。俺はやっぱり自分でチケット買うことにしたんだ」


「貰えるのは嬉しいんですけど、本当に良いんですか?」



「良いよ。その代わりと言っちゃなんだけど……付き合ってくれ!」



「……………………えぇ!?」


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