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13話 「サンタアイテムの秘密」

 警戒しているような動きに疑問を感じて俺は芽依に問いかける。


「どうしたんだよ。急に不審な動きしだして」


「いえ、どこかに着替えられる場所がないかな~と」


「着替える? なんでそんなこと……」


 芽依の言葉の意味が分からず俺は首を傾げる。


「蒼樹さんが確実にくじ引きを当てられるようにサンタアイテムを使ってサポートしようと思ったんですけど、アレってサンタの衣装を着てるときにしか効果がないんですよね」


 初耳だ。つまり、芽依がサンタアイテムを使ったときはサンタの格好をしているということで、俺にはその心当たりがあった。


「あっ! 俺と芽依が美佐とショッピングモールに行ったときサンタの格好してたのって隠れるためのサンタアイテムが使いたかったからか!」


「そうですよ。じゃないとサンタの格好なんてしません。……目立ちますし」


 クリスマスも終わっているのにサンタのコスプレ(本物だけど)をしている人間は確かに目立つ。以前ショッピングモールに行った時もちらちら見られていたような気がする。


「ということで、衣装に着替えたいんですけど……どこか良い場所ないですかね?」


「店のトイレを貸してもらってそこで着替えるか」


 俺が向かっている店はそこそこ店内が広そうだ。さすがにトイレの一つくらいはあるだろう。店の中に入って、いくつかの商品を手に取り購入する。お菓子や食料品の類。正直興味はないが、福引券のためだ。


「ただいまです、蒼樹さん!」


 俺に話しかけた芽依はサンタの衣装を着ていた。どうやら着替える場所を見つけられたみたいだ。隣にいた一二三が芽依を見てその姿にくぎ付けになる。


「めっちゃ可愛い……」


「あ、ありがとうございます」


 直球すぎる誉め言葉に照れる芽依。確かに改めてサンタ姿を見ると見惚れてしまう。好きな人がいなかったら惚れていたかもしれない。

 芽依が俺の耳元に口を近づけて、一二三に聞こえないよう小声で話す。


「これでアイテムを使えるようになったので、福引券は一枚で十分ですよ。必ずや一等を当てられるようにしてみせます」


 吐息がかかるほどに近い距離。自分の心臓が跳ね上がるような感覚がした。今まで考えないようにしていたが、女性としての魅力を感じるのも事実だ。


 ――駄目だ。駄目だ駄目だ。そんなことを考えちゃ駄目だ。


 頭を振って揺らぎかける思考を元に戻す。俺には好きになった人がいる。それなのに別の人に目移りするなんて……そんなことあっちゃいけない。

 何度も自分に言い聞かせて、心を落ち着かせる。


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