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11話 「作戦会議」

 店の看板にラーメンの絵が描いてあるからかろうじてラーメン屋だと分かる程度。中に入ると、橙色の明かりが店内を照らし、おしゃれな雰囲気を醸し出していた。

 席に案内され、俺達はそれぞれメニューを頼む。それから俺は向かい合うように座った一二三に向けて話す。


「ちょっと一二三に話したいことがあるんだけど」


「なんだ? 恋バナか?」


「……そうだ」


「当たってたのかよ。まさか蒼樹が恋を……マジか」


 俺が恋バナをすることがよほど驚きなのだろう。気持ちはわかるけれども、ここまで驚かれるとこっちまで驚く。


「信じられないのは俺もだよ。ちょっと前まではそんなこと考えられなかったし。それで本題に入るけど、俺は美佐が好きなんだ」


「おう。言われれば確かに好き好きオーラが出てたな」


「マジで出てるの? ていうか芽依も言ってたけどなんなんだ。流行りか?」


 一言一句同じセリフを言われると本当に出ているのかと思ってしまう。


「それは冗談だけどな。本気で好きなら、知らなかったとはいえ蒼樹と美佐の関係を茶化したの悪かったな。もう二度としないよ」


「そこまで謝らなくてもいいよ。俺も気にしてないし」


 確かに茶化しすぎな気もしたが、じゃれあいの範疇だと思っていた。だから気にしていないと言ったのは本心だった。


「一応、芽依が俺の恋愛を応援してくれるって話になってるんだけど、一人だけだと心もとないし、一二三の力も借りたくてな。デートの場所とか、告白までにしておくこととかアドバイスをもらえると助かる」


 俺は一二三に頭を下げる。


「協力するのは良いけど、たぶんオレもそこまで力になれないぞ? だってオレも付き合ったことなんてないし」


「それでも良い。芽依以外のアイデアも欲しいから」


 恋愛強者の意見がもらえるのがベストだったが、俺も以前までは恋愛という言葉を耳に入れないように、そういった内容を口にする人間から意図的に距離を取っていた。それが今影響してくるとは。


「それで良いなら協力するよ。……っと、丁度飯も来たみたいだな」


 店主がテーブルに皿を置いていく。湯気を立てたラーメンを口に運ぶ。


「美味しいですね~」


「そうだな。来て正解だった」


 満面の笑みを浮かべる芽依。


「じゃあ作戦会議しましょうか。議題はずばり、どうやって美佐さんとの距離を縮めるかです!」


「そのまんまだな」


 議題の名づけ方があまりにも安直すぎてびっくりする。いや実際なにも間違っていないのだが。


「オレが今思いついたアイデアなんだけど、遊園地とか遊びに行って思い出作りとか、一緒にバイトをしてみるとか。あと、蒼樹って部活入ってなかったよな? なら美佐ちゃん誘って部活に入るのも手かもな」


 俺は女性との交流を避けるために部活に入らなかった。美佐が入っているという部活に行ってみるのもありかもしれない。


「それと、年始も近づいてるし、初詣の誘いをしてみてもいいかもしれないな。もうすぐ冬休みに入るし、時間はいくらでもあるからなんでもできると思うぞ」


 一二三が色々なアイデアを出してくれる。第三者から見た意見って大事だ。改めてそう思った。


「俺じゃ思いつかなかったアイデアもあったし、一二三に聞いて良かった。ありがとな」


「これぐらいならいくらでも意見出すよ。後はどれにするかだけど……」


「そこに関してはもう少し考える。一二三の言ってた通り、時間はあるし」


 頭の中にメモだけはしておいて、ゆっくり選んでいくつもりだ。選択肢が増えるだけでやりようはある。


「私もなにかアイデアを出さなきゃ……えーと、えーと」


「張り合わなくてもいいよ。出ないなら出ないで無理する必要はないし」


 頭を抱えて悩む芽依。可愛らしい仕草には和むが、無理をさせるのは罪悪感が出る。


「うーん、思いつかないのでラーメンを食べます!」


「切り替え早いな」


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