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目指すべきは

いつもの流れ、長期のお休みになりました。

また色んな物語を読んで新しい視点や考え方を得られました。

「いや、平和すぎじゃね?」


「ギルドにいた時めっちゃ妨害受けたって聞いたんだけど…」


「それこそ、ギルドでジンドたちが牽制している。」


「噂回避イベ…事件は大変だったけど、何も無いは無いでこう、進展も改善にも食い込めない感じで…」


「事件ならあるかもしれません」


「!?」


 突如乱入した声に思わず振り返る。


「ルキウス!」


 大きいローブのフードを被ったダクトを伴って部屋に入室したルキウスにアントニオが再び声をあげた。


「すまないな、危険だが直接彼に来てもらうしかなかった。シギ、彼の記憶を、いや正確には彼の記憶に出てくる魔法を見てもらいたい」



----------------------------------------------------------------------------------------


「計画を変更すると…?」


 ある夜の数日前のことだった、ジンドが茶会の主催者の側に控えながらその眉をぴくりと動かす。


「あぁ、ゲッダの魔法の行使についての取り決め、上手くいけば跡取りらを一掃できるやもしれん」


 ギルドと協力して動きを封じ込めたのはあくまでも次男次女、第二子以降の貴族。それぞれの家にとって切り捨てればいいだけの存在。現当主と後継者である第一子らも充分、ルキウスの足を引っ張ることができる。

 本当は自分諸共、引きずり落とすつもりだった彼らをルキウスが引き継ぐ生まれ変わりゆく王国の肥やしにしてやってもいい。


----------------------------------------------------------------------------------------



 ダクトは端正な顔立ちをした貴族だ。当然、社交の場にも呼ばれることもあり、ゲッダ新国王らに親交の花束を贈った者として少しばかり注目されていた。しかし、話しかけてくるのは数人、ゲッダ新国王らとルキウスが友好関係にあるのは周知の事実であるため、エバルスに睨まれたくない貴族は遠巻きにしている。


 ふと目だけで周りを見回すと女性が男性の顔に手を添えている光景が目に付く。随分と大胆な行為だと思った刹那、光が視界の隅で散った。突然の刺激に反射的に閉じた目を開けると、


パァンッ


 破裂音が響く。

ダクトがそこに視点を合わせると美しい貴婦人が肩で息をし、腕は思いっきり振った後のようなだらけ方をしている。


「私を騙したのね!!」


 彼女が飛ばした怒号を受けてるのは、ふくよかな体型に不自然なほどほっそりとした輪郭の顔、彫りの深い目鼻が刻まれている、この世界のカレハテタモノである男だ。


「も、申し訳ございませんっ!!こうでもしないとっ、貴方様とはっ」


「いやぁっ、近づかないでっ!汚らわしいっ!!」


 丸太のような胴の貴婦人を、彼女の従者らしき男性が「失礼」と声をかけてから縋りついてくる男から守るように彼女の体に手を回して距離をとらせた。


「何事でしょうか?彼女はヴィオラ様では?」


「えぇ、私も見ていたのですが、ヴィオラ様がフィン様の頬に手を添えた瞬間、お顔が変わって…」


「顔が…」


 できあがっていた人混みの中の一人、自分よりも前に彼女たちを見ていたであろう人間にダクトは声を掛けた。


 彼女、ヴィオラは上流階級貴族の中では下から数えた方が早いが、ここに出席している者らに比べたら高位に位置する身分の娘、階級こそ低いがかなりの美男子であるフィンと婚約したことで交流の一環として今夜の社交場に参加していた。


「皆様っ!!この男はっ、卑しき術を使って醜い素顔を偽り、私と婚約を結んだのですっ!!」


 ざわつく周囲、詐欺だと言われても致し方無い所業にその場にいる全員が息をのむ。当たり前だ、階級の高い者が自分より低い身分の者と結婚する理由なんて、この世界では顔、金、高位の精霊持ち以外基本的にはありえない。


「ひっとらえろっ!!」


 誰かが叫んだそれに合わせて一斉に待機していた騎士たちが動き出す。この場での発言権も人権すらなくなった男は床に組み伏せられて乱暴な身体検査を受けている。直後、どさどさと騎士が投げ捨てるように布の塊を美男子フィンだった男の紳士服から取り出し、床に落としていった。もう何も無いと確認された男は騎士にその髪の毛を取っ手のように掴まれ、無理やり立たされる。


「うっ」


 ようやく見えたのは、髪を引っ張られる痛みに歪んだ男の線の細い顔とつながっていて違和感のない細身の身体。彼の本当の体型であろうそれを見たダクトはあぁと納得した。


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「どうだろうかシギ、かの魔法はいつのものと推定できる?」


 ダクトの記憶を見終わったシギが思案する表情を見せたのは瞬きの間もなかった。


「以前だな」


 いつより、を示すのが分からない者はここにはいない。


「明白だな。全く異質の第三勢力のモノだ」


 それぞれ思い浮かんだ人物は違うかもしれない。されど彼らが繋がっているのは最早明らかだ。


「これを良しとするか?主」


「問題とすべきは行為ではない、我々の見ている地点、目指す場所と歩みたい道が同じかどうかだ」


 全てお膳立てされて情けなさと歯がゆい気持ちはあるがとルキウスは付け加えた。


「そうだな、いただきの先に見据えてるのが主であるなら異論は無いとも。最もその先が目的であれば警戒しなくてはならないかもしれんがな」


「目的が同じでも想定している過程が同じとは限らない。その違いが亀裂を生むだけですまないのはっております」


 ダクトの言葉にアントニオは気を引き締めた。ルキウスに友と白の子たちの命を懇願した姿が目の裏によぎる。


「どちらにしろ、ゲッダ王国側にこの事を報告する他ないかと…」


 ダクトの言葉に頷く一同、これは正しくキーニャたちが望む「魔法の法」の足掛かりになる事件であろう。

この後の活動報告書も読んでいただけると幸いです。

では、また次回

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