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見えてきたあの頃2

お久しぶりです。言うほど会話多くなかったです。

一応「見えてきたあの頃」を読む、というか見て頂ければ分かりやすいかもです。

「アントニオ君、だっけ?ほらよこれがお望みの調査書だ」


 冒険者らしい無骨な手が、綺麗な書体の字が綴られた書類を差し出してくる。


「ありがとうございます。…やはり、王都から離れた貴族の方たちは王都の方より美醜への関心は低い方がおおいのですね」


 受け取った書類をめくりながらアントニオが文字を目で追っていく。


「あぁ、あそこはアッシム家がいるからな。言わば魔物の間引き隊の本拠地みたいなものだ。王都やその周辺は実績作りの貴族冒険者がいるし、それ以外の平民やそれ以下の身分の実力者が昔から集まりやすいんだよ」


 ケルトが上げたのに加え、五百年前は他国からの侵入者を退ける役割を担っており、元々実力を重視する傾向はつくられやすい環境だ。


「でも、こんな事知ってどうするんだ?」


「え」


 アントニオが書類から顔を上げると、やけに真剣な顔つきをしたケルムと目が合った。思わず息が詰まって言葉が出なくなりそうだが、アントニオはおずおずと返す。


「いや、ただ容姿を凄く気にする方とそうでない方がいて、それが引っかかっていたんです。それをはっきりさせたくて…」


 書類とケルムの言葉で解決した。だが、アントニオは未だにモヤモヤとした何かが引っかかっていた。


(昔から国防のために実力重視よりの考えだった。本当に、それだけなのか?)


「そうか」


 はっきりとしない答えに何故か満足したようなしっかりとした頷きをみせて退出しようとするケルムにあっけとにとられるアントニオだったが、思い出したように慌てる。


「あのっ、報酬をっ」


「いらねぇ。…殿下」


「なんだ」


「お気づきか分かりませんが、私たちは貴方たちが思っているよりずっと、殿下たちに期待しているんですよ」


 そう言ってひらひらと手を振って退出していった。後ろ姿をアントニオがぽかんと、ルキウスが考えるように目を細めて見ていた。平然としているのはシギとシザルだけだった。


「今のは…」


「ギルドは、いやケルムやジンドも何か事情があるようなのだ」


「ケルム殿とはそこまで交流が無いので」


 ルキウスとシザルの答えを聞いてもいまいち飲み込めないでいたアントニオだったが、「もう一つ、よろしいですか?」シザルからの新たな情報により、意識は切り替えられた。



「先祖が分からない?」


 シャーキ草の報告書として届けられた五百年前の事件についての調査書から顔を上げたルキウス。アントニオ以外、それぞれ席に着いてやっと落ち着いた姿勢での話し合いが行われた。


「と、いうよりかは庭から国へなった経緯が丸ごと不明なのです。双緑花様がお答えにならないということは聖庭も単なる文化づくりの一部だけで終わってないはず、あそこにはもっと何かがあるはずです」


 シザルは内心安堵しながら言った。


「だが、元々アルガディアという国の庭という認識があった国だろう、ゲッダは。アルガディアの国の出身の者が先祖という認識でいたのではないのか?」


 ほとんどの事が誰かたちの認識で出来上がった状態で今まで続いていたのは、皮肉にも洗脳のおかげだったのだろう。シギの疑問にシザルが返す。


「強弁できるのです、どっちの意味でも。ゲッダに住んでいた先住民の方々に初代国王が協力を求めた説、アルガディアから貴族が派遣されて必要性が生じて国に成った説、争おうと思えばどこまでもやれるでしょうね」


 キーニャたちが欲している答え、彼らの祖先は元アルガディア王国の貴族だ。王家アルガディス一族が信を置き、事件の生き残りであった家臣ら。


(他国との均衡が危うい今、アルガディアの元貴族だと知られればまた王族たちが勢いづく、他国がそれに引っ張られるかどうか…)


「…城内に手がかりがあるのではないでしょうか?」


 アントニオが思い浮かべたのは図書室で見た城の地図と壁の中にあった絵画。


「なぜ?」


「先日見つけた絵のことをお覚えていらっしゃいますか?」


「っ…!?」


 問いに疑問を返したルキウスだが、絵の事を出されるとすぐにアントニオの言いたいことを理解した。


(これはいけない、この方たちは相性が良すぎる)


 誰がルキウスの精霊になるか分からない以上、計画が多少崩れるのは想定していたもの、ここまでとは思っていなかったシザルにとってアントニオの観察眼は少々忌々しかった。


「絵の中には私たちの知らない者たちも描かれていた。元々アルガディアと親しかったのなら何か昔の交流関係を示すものが残されているかもしれない。アントニオ、この間の地図を持って来てくれ」


「はいっ」


 従者が板についてきたアントニオの後ろ姿を見送ったのはシギのみ、ルキウスは準備を、シザルは自分がこの調査にどれくらい、そしてどう誘導すればいいかを思案している。


 ゲダルティナ一族、その出自はまだ明かされる予定はない。いずれは掘り起こされる事になっても少なくても今ではない、そのつもりだった。


 (出自が判明したとて、それがルキウス様の王位継承に一体何の役に立つのか…。いや、出自を知りたいのは誇りのためか過去の過ちを知って繰り返さないためか)


 独立を実質果たしたようなゲッダ王国、魔力回復を発見したがその危険性を考慮し、表向き研究はしていることになっているが実際は国の歴史の調査に人員は回っている。


「持って参りました」


 考え中の最中、アントニオが地図を持ってきてルキウスがペンなどを用意した机の上に広げた。

とりあえず、何も知らない体で話し合いに参加するシザル、一番最初に意見を出したのは言い出したアントニオだった。


「実は初めて見たときから違和感がありまして…この城、もしかして以前はこうだったのではないでしょうか?」


 アントニオが城の地図をくるりと半回転させると、城と王宮の側面側が前にくる。


「以前おしゃっていた、図書館と謁見の間が似ていたということ。あそこに絵画と改修した跡があったということは元々の謁見の間はあそこだったという事ではないかと思いまして…」


異様に細長い構造に覚えた違和感に最初はそういうものだと思っていたアントニオは、発想を変えた。より簡単に、不明点だらけの過去は置いといて納得できる提案をする。


「城の元々の向きはこう、だったのではないでしょうか?」


 図書室を謁見の間と仮定すると、間取りがしっくりくる。居住の役割を持つ王宮ではなく、王城にルキウスの部屋があったことも説明がつくのだ。


「これは…これなら図書室外の廊下が意味を持つようになる」


 奇妙な配置の間取りが、王城と王宮の位置を入れ替えることで途端に防衛重視の構造に見えてきた。

挿絵(By みてみん)

今年度の初投稿ですね。

イラストの文字部分は指で書いたので拙さはご容赦ください。

活動報告書も見ていただければ幸いです。

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