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象徴としての王

お久しぶりです。

少し調べ物もありまして、時間がかかりました。

魔脈について少し出てきます。無理やり筆を動かして短めですがまた前に進みました。

ー五百年前のある日ー


「兄上! 危ないです!」


 ふっくらとした頬の男の子が叫びながらじりとじりと崖先にしゃがみ込む少年に近づく。


「そこで待っていろ弟よ!…ほらお前たち、いじめんじゃない」


 しゃがみ込む少年の目線の先には一輪の小さな花、の元に集う小さく若い精霊たち。


「精霊は人間のような社会組織を作りません!いじめなんて起きません!」


「なに!?流石私の弟、賢いな!」


 なおもちょっとずつ近づく少年より少しばかり年上に見える彼は、振り向かずに返事する。


「おっ!だが、懐いたようだぞ!」


「え」


 先程までのおっかなびっくり歩を進めていたのが噓のように少年の元に駆け寄ると、白い花の上にかざした手の周りをくるくると飛び回る精霊が花のように白く光っていているのが見える。


「まだ弱い光だ、きっと生まれたばかりなんだな」


「兄上が先程追いやった精霊も含めて人の手にかかっていない精霊のようですね」


 その言葉にやっと兄と呼ばれた少年が駆け寄ってきた男の子の方を振り向いた。


「兄を刺すな、兄を!」


 兄弟のじゃれ合いに気づいたのか、こっちも仲間に入れろと言わんばかりに二人の顔の周りを精霊は飛び回る。


「弟よ!我らと遊びたいように見えるぞ!」


「…そう、見えなくも、ないです…」


 照れた顔をして好奇心をあらわにする弟も遊びたそうににしている。


「よしっ!」


「ちょっ、兄上!」


 弟の腕を引っ張って草原へ走り出す少年を精霊も追いかけた。


 この時、まだ三人の関係は降り注ぐ陽の光のように、若き精霊の淡い光のように暖かく無垢なものだった。



-------------------------------------------------------------------------------------


 

「やっぱり、ギルドからの連絡はもっと早めに入るんだな」


 アントニオは報告を入れるや否や疑問をルキウスにぶつけた。


「フィオレナーレ様もルキウスの動きをよく思っていないのかな」


「フィオレナーレ嬢からの進言かは不明だが、彼女にも立場というのがある、私よりよぽっどな。兄上個人、王家、実家からの圧力を感じないはずがない、彼女の方から動いても特に驚くべきことはないな」


コンコンコン


 軽快に扉を叩く音が部屋に響く。


「誰だ」


「私だ主、客人もいるぞ」


「入ってくれ」


 入室してきたシギが伴ってきたのはシザルだった。


「シザル!」


「ごきげんよう、殿下。少し進展がありましたのでご報告に参りました」


「進展とは?」


「双緑花様からご協力を得られました」


 ルキウスの問いにシザルが若干力を込めながら言う。


「本当ですか!?」


 思わずアントニオも驚いて声を出す。


 アッシム家との一件以降、ルキウスたちとキーニャたちゲッダ側はシギを介しての密談を止めていた。

多国を刺激しないためというのもあるが、ゲッダ側も一枚岩ではない。未だに前王の方針を支持する者やキーニャを疎む者もおり、密談はアルガディアや他国との打ち合わせなのかと勘ぐられるのだ。


「ダクト殿から頂いた資料を元に魔力の使い道についての打ち合わせに参った際に、ゲッダの者としてなら協力できるとお言葉をいただきました」


「ゲッダの者としてなら?」


 その言葉が引っかかったのか聞き返すルキウス。


「全容を話すことはできないと断られました。自ら気づいてこの世界をどうにかしたいのなら尚更己らの力でできるだけやってみろ、何より裏切れない人がいる、と」


「そう双緑花様はおっしゃってたのか?」


「えぇ、そのようにセタンタ陛下からお聞きしました」


「強制召喚は精霊の軽視から始まったようです。シギ様が白の子たちを追うのに辿った魔脈、あれを大樹に集結させることによって一介の精霊だった双緑花様は力を蓄えていたとのことです」


「精霊王を育てようとしたのか?」


 ルキウスが思い出したシギの言葉を掛け合わせて出した結論。


「魔脈は魔力を放出する、それを一か所に精霊に集中させたら人型を持つ条件は達成できるな」


「だけど、精霊王が存在しているのにまた別の精霊王を育てようとする意味って…」


「精霊王が普通の精霊のように寿命があると知っていたのか?」


 アントニオのつぶやきを拾ったのはルキウスだった。


 今も尚、精霊王が生きているとこの世界の人間は信じている、だからこそ彼女の逆鱗に触れることを恐れるのだ。だが、アルガディア初代王が精霊王という生き物は存在せず、ただの人型精霊と知っていたのなら精霊王を育てようとした理由も納得がいく。


「精霊王について知っていたということか。そこに特殊性がない事を含めて…いや違う、特殊性が必要だから精霊王を育てようとしたんだ。精霊王は精霊を統治する存在ではなく、精霊を尊ぶ文化を創り上げるための象徴的存在だったのではないか?」


 世界の洗脳が薄まって増加した精霊への虐待、それが元の精霊の扱いだとしたら先祖はそれを変えようとしたのかもしれないと考えたのはいいものの、ルキウスの胸に不安が残る。


「洗脳が少し解けた程度で、今まで大切に扱っていた存在ものをそうぞんざいにできるのか」


 憂いを帯びたルキウスの表情にシギが口を開きかけた。


「……そこを含めて任された未来。キーニャたちも魔力の扱いに尽力してる、洗脳無くして平和と敬意を持った精霊への接し方を維持できるようこちらも対策を立てよう」


 双緑花が語ったゲッダ王国の歴史の一部、”精霊への敬意を払うための聖庭”の意味の詳細を聞いた時、ルキウスは双緑花がそれを聞かせたのは恐らくゲッダの内情を知ってのことだろうと推測した。


 番人の見定めのために城の内部を動き回っているらしい双緑花ならゲッダでキーニャたちを疎んじている者たちがいるのを知っているはず、きっとキーニャたち次世代の若者たちの団結力を高めるためにも話したのだろうとみていた。


「洗脳が解けるのも時間の問題だ…。王宮内、王城を自由に歩き回るためにも本格的に王位を手に入れる準備をしなくては」


「話はひと段落したか?そろそろ俺の話も聞いてもらいたいんだが」


「ケルム」


「ケルムさん!」


 扉の外で門番のように待機していたのであろう青星の守り人のリーダー、ケルムが扉の隙間から顔を覗かせた。


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「知恵がついたものだな」


 フィオレナーレの報告を聞き終わったエバルスはそう零した。


「申し訳ございません」


 椅子に座っているエバルスとは反対に立ったまま頭を下げるフィオレナーレ。


「君が気にすることじゃない」


 時間が進むにつれ、世界の常識と人の心は歪に離れていく。

次回はケルムとアントニオの話がメイン!そして流石に分かりにくいかと思いちょっとした絵をアップさせていただきます。これから書く活動報告書も含めて楽しんで頂けると幸いです。

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