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広がる人脈への違和感

お久しぶりです。

他の方の作品を読んだら頭が刺激されたのか大分筆が進みました。あと今回初めて傍点を使いました!

五百年前、アルガディア国境線


「離せっ、離せぇっ!」


「なりません!ガラック樣っ!お気を確かに!」


「貴方様がいなくなったらそれこそ王家と国はどうなるのです!」


 指揮棒を持った男が、暗雲立ち込めるどころか飛び交うような空の下に飛び出そうとしていた。


 鎧を着込むガラックと呼ばれた大柄な男は、自身を押さえつける部下を一心不乱に指揮棒を振り回しながら押しのけようとしている。


 外では魔法が発動した光があっけなく虫の大群のような黒い霧にかき消される光景が広がっている。


「王家がっ!国が守ってきた平和が崩されようとしているのだぞっ!もしこのままあれが他国に侵入すれば批判どころか戦争に発展すっ」


バンッ


 窓に張り付く一人の兵士。


「っ!王宮の兵士だっ!窓を開けろ!」


『なりませぬ』


 止めたのは魔法を介して声を届ける王宮兵士本人だった。懐から手紙を取り出し、ガラックたちに見えるように広げて窓に押し付ける。


「な!」


 その内容を見たガラックは驚愕に目を見開き、羽交い締めにしていた兵士は苦しそうな顔を浮かべる。


『ガラック様、我々には、いえ、国も今、外で戦ってる兵士たちにも、貴方が、必要なのです。どうか、耐えて下さいませ!』


 手紙には、霧の他国への侵入を諦めろ、というようなこと、兵力をガラック自身を守ることに最優先で使えとあった。


『あの霧、いえ呪いをどうにかできるのは魔力量が高位魔道士以上の者のみで、消すことはできず吸収する他手はありません。ですが吸収して呪いを取り込めば発狂を通り越して一気に身体が衰弱します』


 早口で捲し立てている間にも兵士の背後に呪いの霧がブンブンと頭を振るように動きながら迫る。


「おい! 離れろ!」


『ガラック様、どうか…陛下の意思を…お、お汲みくださ、い』


 ブワっ


 本能的に嫌悪感を覚えるような小さな呪いの大群が兵士を襲う。


『ぐ、が、ああああああ!!』


 途端、他の兵士たちのように錯乱する様子を彼らはただ見るしかなかった。


「まだ呪いに触れていない兵を呼び戻せ。城の中から貫通式攻防結界を貼って撃てるだけ打て。消すことは叶わずとも城に近づく呪いを払うことはできる。結界に近づけさせるな!よろしいですね、ガラック様。貴方様を失うわけにはいきません。直接呪いに触れなければ、貴方の子孫がいずれ目覚める」


 部下に言われたガラックは悔し気な顔のまま形成されていく陣の真ん中に移動していく。


 ガラック=アッシム、彼にとって自身の、そして家の唯一にして初めての汚点であった。



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 ダルタリ家長女であるフィオレナーレをエスコートすべく、ダルタリ家との打ち合わせ前にすっかりアルガディア側のメンバーと化したダクトを含めたルキウス、アントニオ、シギ、シザルとゲッダ側との作戦会議が開かれている。


 シギに繋いで貰っているセタンタを筆頭とするゲッダ側とで主題として上げているのは、” 誰が側近 なら問題ない ”かだ。


「エバルス様側の王家は間違いなくこっちを揺さぶるのが目的だろうね」


 キーニャの言葉に頷く一同。


「だけど、これを好機に変えることもできないことはないわ」


 魔力によってできた透明な板に映し出されているセタンタが通信越しにルキウスと目を合わせる。


「一つ、ルキウスがエバルス殿に自身の部下か抱えている臣下の家の中から側近を与えるよう誘導する。貴族だと、より立場が上の婚約者側が屋敷や部下を用意するのは普通のことだから、一番無難ね。二つ、私たちが贈り物として部下を送る」


「姉様、それ一番の悪手って分かって言ってるでしょ」


「以前の体制のゲッダ王家からの申し出なら、文字通り貢物として受け取ってくれるでしょう。けどアルガディアの属国でないと示すような新体制をとった今なら…」


 意味深な笑みを浮かべたシザルはその金色の瞳をダクトに向けた。ダクトは苦笑しながらその後の言葉を引き受ける。


「ルキウス様と協力体制をとった事を発表したばかりですし、本格的に王家に介入するつもりだと疑われますね。それどころかフィオレナーレ様との関係を疑われるかも。よくて、やっぱりゲッダ王国はアルガディア王国に服従する体制なのか、とか」


「三大貴族は上級階級貴族中の頂点みたいなもので、ある意味王家とは別の意味でそれぞれ別分野の最高権力者的家系です。別に側近の見た目はこだわらなくてもいい。家柄も下から数えた方が早いほどでなければ、寧ろ優秀な人材を見抜けたと評価されます。だから…今はいなくても、()()()()()()()()()()()んですよ」


 そう言いながら今度はルキウスに視線を合わせるシザル。


「最初から二つ、罠がしかけられていたとみるべきか? 一つは私たちとアッシム家そしてウィルト殿を接触させる、二つ目は側近が決まっていないと匂わせて対処させる。正当につつける穴を作るためか。貴族が集まる舞踏会で、そう捉えられる動きさえしてくれればいいのだからな」


 まず、開催寸前に伝えたのは、ルキウスたちがアッシム家含むウィルトと事前の連絡を取れないようにするため、もしくは精霊であるシギを使った威圧行為をするよう誘導するためだと読んだ。


 そして今回の舞踏会には婚約者であるエバルスはいない。

婚約者いない場でフィオレナーレの側近について提案、進言すればほぼ間違いなくエスコート役のアッシム家長男、ハドルクの耳にも入る。三大貴族の内、二つの家系の者が現国王夫妻含むエバルス側の人間に言えば、あっという間に噂が広まるだろう。最悪、ルキウスには処分が下されるかもしれない。


 決まった落とし穴まで歩かせる作戦ではなく、無数の落ちるか否かの不明瞭な舞台に誘うようなやり方に辟易するルキウス。


「やはり、アッシム家への手紙だけに留めたのは正解でしたか」


「向こうもこちらの芝居にのっかってくれるのだろう?寧ろ人脈が広がると喜べばいい」


 アントニオの安堵したような物言いにシギも続く。


「そうだな…」


(本当に、よく増えるな)


 ルキウスは胸につっかかるような違和感を覚えた。

次回はアッシム家とついに会います。

そして間に合わないと思った手紙を何とか届けてくれたあの人も今度は出てきます。

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