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薄まる洗脳と平和の崩壊

 お久しぶりです。

前回からかなり間があいちゃっているので覚えている方いるでしょうか?

まぁ、二年空けてた頃よりマシですね。幸い、結構前に作っておいた46話目があったのですぐ投稿することができました。さて、エバルスが選んだフィオレナーレ嬢の代理側近は誰でしょう?今回は活動報告書あります。てか、上がってます。

 あまりにも唐突で予想外の王命にルキウスたちは流石に動揺を隠せずにいた。その中でも一番困惑していたのはアントニオだった。


「私がフィオレナーレ様の代理執事…ですか?」


 届いた王命はその内容とは裏腹に愛らしくルキウスたちの手元に運ばれてきた。メイドが差し出した銀のトレーにクリーム色のカードが載っていた。文章の下には王命の証である紋章が押されている。


「私が父上に提案したのだ」


「何の目的でですか?」


 エバルスのおなじみの襲撃じみた訪問にルキウスは振り返りながら問いかける。


「婚約者に華を持たせたいと思うのがそんなに不思議なことか?」


「人選がおかしいと申しております。代理など、余計恥をかかせるだけでは?」


 一時の華を持たせたところで代理は所詮、代理。執事、側近がいないという事実は変わらない。


「はぁ、王族に次ぐ大きい貴族、それに私の婚約者に下手な人間を付けてみろ。噂が流れるだろうが」


 一見、ルキウスとエバルスの意見は対立しているようにみえるが問題としてる部分は同じ、フィオレナーレの世間体だ。


 誰かと婚約してる令嬢のエスコートに適しているのは親族や既婚者、或いは今回のように他家に代々付き合いがあると認識されている者が選ばれる。


「弟の執事を就けることに一体何の問題がある?彼も最早、我々の身内。それともお前が就けるとでも思っているのか?」


「フィオレナーレ嬢にはご兄弟がいらっしゃったはずです。姉妹も」


 現在、平和を願った精霊王の意思を尊重して上級階級の貴族や国など上位の勢力ほど競争の動きは避けている。そのため、昔からの結束を重視しており周りもそれを信頼している。


「彼らなら他家への茶会に招かれている。それに一番下の子供がもうすぐで初の舞踏会を迎える。今は手が離せないとのおおせだ」


「それでも他にも適任者がっ」


「兄の婚約者の付き添え人に関して(おまえ)が口出すのか?」


 容姿の悪い者の見られ方、行動のとられ方などその他の人間の都合次第。普段は醜いという理由で家族扱いされなくとも、もしルキウスがフィオレナーレの事情に口を挟んだことが知られたら身内の婚約者に必要以上に関わろうとする無礼者の称号が容赦なく与えられるだろう。


「私の執事なのですから当然権利はあるでしょう。それに彼は執事以前にこの世界に来て日が浅い」


「既に友人が多いらしいじゃないか、寧ろそちらにとっては箔になるだろう?それに組み合わせとしてもよく映える」


 実際の舞踏会の主役はアッシム家の長男だがこれは第二回目の社交界へのお披露目のようなもの、ある意味両人ともに主役なのだ。


 アッシム家長男は執事を、フィオレナーレは自身をよく見せる必要がある。執事など下の身分の付き人の方が容姿がいいのが許されるのは中級階級貴族の中でも下の者まで。平凡以下の容姿だと残るは醜い者、それでは流石に世間体が悪い。アントニオなら化粧の調節でバランスがとれるとみたのだ。


「っ…」


「私でよろしいのであれば異存ございません」


 尚も言葉を紡ごうとしたルキウスを咄嗟に引き下がらせたアントニオ。


「執事の方が物分かりがいいとは。本当に容姿がどれほど大切か思い知らされるな。では上級精霊様、また後ほど」


 そう言って退室したエバルスのいない部屋には重苦しい空気が漂っていた。

すぐさま緊急会議が開かれ、その場にはダクトもいた。


「ごめんルキウス、勝手に引き受けて、でも気になることがあったから」


「ウィルト殿との関係を勘づかれたか?」


 無言でそれに頷くアントニオ。執事の館での情報は当然、シギを含む三人の間では共有済だった。


「そう…かもしれない。いずれにしても白を切るためにもここで接触しないと…」


 ウィルトとの関係はそのまんま互いの主、ルキウスとアッシム家の関係ととられる。王族とアッシム家ならまだしも、今の情勢ではルキウス個人として見られる可能性が高い。


「舞踏会で接触して公で会ったことを周知させるのか。だが、まずいな知らせる時間がない」


「確かに、今回ばかりはシギ殿に知らせてもらうことはできませんね」


「うん?何故、でしょうか?」


 アントニオは精霊に関しての作法は必要最低限しか学んでいないため、ダクトの発言に引っかかりを覚えた。


「威圧行為と捉えられるかもしれないのです。そもそも精霊に伝言を頼むこと自体が珍しい。鳥型など飛行能力があったり長距離の移動に適した姿を持つ精霊とパートナーのの方が手紙を持たせるのがほとんどです。そしてこれは互いの精霊を見たことがある人たちでしか通用しません」


 重要視されるのは精霊の位だが、精霊は恐るべき戦力だ。それを差し向けるには注意が必要である。


「高位の精霊で脅迫されたと言われれば不利になる、だから手紙で根回しするしかないんだ」


「なるほど」


 今度はアントニオも理解できたのか力強く頷く。

交流会で学んだ、貴族の初めましては初めましてではない。事前に親兄弟、使用人から覚えておくべき情報、特徴を叩き込まれる。


 接点が特に無い者や公で見せたいやり取りがあった場合、手紙で事前に接触は図る時もある。今のルキウスたちがそれだ。


「アントニオ君が懸念しているのは情報取集していた時のことが変な噂になって広まることでいいかな?」


 ダクトが優しい声色で尋ねてくる。


「はい、噂にならないよう断言するようなことはせず、雑談におさめていたつもりだったのですが…。申し訳ございません、私のせいで…」


 ルキウスとダクト、シギに向かって深々と頭を下げるアントニオ。


「いや、謝らないでくれ。元々、君は一般人だったのだから。それ以上に、私たちにとって君の存在は大きい」


「確かにエバルス様に知られたことは痛いが、彼も三大貴族の一つを無下にはできない。アッシム家の長男、ハドルク様も大層お美しいと聞いている。エバルス様も一方的に攻めるはできないはずだ」


 美しい容姿の者同士が対立した場合、その勝敗を決めるのはより優れた容姿であることが多い。しかし、流石にアッシム家を敵に回すのは王家としても避けたいことだろうとルキウスとダクトの二人は推測していた。


「ルキウス様はアッシム家とどういう関係になりたいのですか?」


 ダクトの質問にルキウスは迷いなく声を発する。


「これまでと同じ、中立だ。兄上は勿論、私自身懇意になることは避けたい」


 その答えはアントニオにとっては意外なものだった。


「せっかくのどこにも属していない貴族、しかも大きい勢力なのに…。いいの?」


「あぁ。寧ろそうでなくては困る」


「?」


 ルキウスの意図に気づいたのはシギとダクトだった。


「洗脳か解けることを危惧しているのだろう?」


 シギの言葉を肯定するルキウスはアントニオに向き直り、説明を始める。


「最初に、精霊への虐待や平均以下の容姿の者の社会進出の増加した原因は洗脳が薄まっているからである可能性が高い、という話をしたな。もし、それが進んだら今の世界の力の均衡が崩れるかもしれない」


 ルキウスの言葉をダクトが継いで話し始める。


「アッシム家の軍事力は侮れません。平和を願う精霊王の意思を尊重しているからこそ皆、力の競争ではなく力の現状維持に努めているのです。しかし、精霊至上主義の意識が薄れているのなら、いずれ戦争に発達するようなことが起きるかもしれません」


 アルガディア王国はゲッダ王国をはじめとする他国に高圧的な態度をとっている。それは精霊王が実際に暮らしていた地であり、初代国王ジュッセが契約を結んだという誇りからだ。その功績に敬意を払う者は多いものの、ゲッダ王国のようにそれはそれとして現在いまの対応に不満を持つ者は数多くいる。


 腹に不服を溜め込んだ不健康な者たちの協力体制を繋ぎ止めているのが、洗脳からくる精霊王の命の厳守だ。精霊至上主義の意識が薄まれば、精霊王が軽んじられる。当然、精霊王が願った世界の平和を維持しようとする者は減る。


 そして今までのアルガディア王国の態度が争いの火種になった時、敵、味方の把握がされる。三大貴族のアッシム家なら、これまでの印象から王家側に就くと思われるだろう。


「いざことが起きた時、主の側にアッシムとやらが味方についたと思われたら内乱と戦争が同時に起こるやも」


「えっ」


 シギの言葉にアントニオが焦りを顔に浮かべる。


 アッシム家がルキウス側の味方、支援者になったと思われた場合、当然王家をはじめとするエバルス派の人間はアッシム家に疑心の目を向ける。


 ゲッダ王国のように不満を貯めていた他国側はルキウスたちを手助けするかたちでアルガディアを自分たちに都合のいいものにしようと手を出してくるかもしれない。実際、他国はゲッダ王国のようなアルガディアの傘下を抜け出した成功例を見てしまった。


「確かにアッシム家は基本、中立を貫いてきた。しかし、国に危機が及んだ時は剣となり盾となり守ってきた。唯一、どの派閥に属さなくとも許されているほど信用のある家だ。そのアッシム家が私についたとして、国内の力の均衡、権力と軍事力の両方が崩れる」


「ルキウス様が密かにゲッダ王国と繋がっていたことは一部の貴族の間でもう噂になっています。国境線を守るアッシム家、別の言い方をすれば一番国外の勢力と繋がるのに適しているとも言える」


 結論にたどり着いたアントニオが焦った表情を浮かべる。


「ルキウスとアッシム家が繋がってるって勘違いされたら疑心暗鬼で勝手に動きだす勢力が国内と国外に出るってこと?」


「そうだ」


 現実、ルキウスととアッシム家は繋がっていない。だがアントニオとアッシム家の長男に仕える執事、ウィルトはアントニオと交流があった。そこから誤解される可能性もあるということには流石に気づくアントニオ。


(また噂回避ミッションかよっ…!)


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「君は彼と関わりを持ったこと、軽率だと思ってるのか?」


「いえ、それに関わらずをえませんでした」


「ならよし。この文面を見るに彼らも同じことを気にしている。なら私たちはありがたく乗らせてもらおうじゃないか。君とあの執事は交流会で軽く挨拶をしただけ。そうだろう?」


「はい、数多くいる後輩の一人でございます。ハドルク様」


 ウィルトと同じように髪を後ろに撫でつけた紺の髪の青年は手紙を唐突にウィルトによこす。合図も無しに突き出された手紙をウィルトの手は当然のように迎え入れた。

 菓子用の机と書類用の机とに挟まれてる安楽椅子に座ったふくよかな身体を青い軍服のような服が包んでいる。ただ、他の上級階級貴族よりかは瘦せ型で肩や腕、足は筋肉質だとわかる。


 ハドルク=アッシム、三大貴族の一つにして国境線を守り続けてきた一族の長男は経験から世の中の流れをいち早く感じ取っていた。

さて、お久しぶりのお話、いかがでしたでしょうか?

ストーリー自体に展開はあまりないと思った方すみません。47話目で執事の館での挽回はできるのか!?アントニオの活躍をお祈りください。

…あと良ければ、現在完結済み作品として上げている「紫薔の暴君」を覗いてもらえると嬉しいです。

ではまたお会いしましょう

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