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踊らされてる者たち

 新年初の更新です。

捕虜の話です。色んな勢力出てきてきました。

 地下に響くすすり泣く声、鼻水をすする音。ある者は親に捨てられ、ある者は親しくしていた者に殺されかけた。


 洗脳しやすいよう、最初は集めた白の子たちに保護が目的だと刷り込ませる。そのため衣食住を与え、優しさを注いだ。


 機を見て噓の物語を話し始めた。少しばかりの嘘と半分以上の真実、定番のやり方。


「この世界には結界というものが張られているんだ。精霊は結界を繋ぎ止める杭のような存在でね、人と繋がりを持つことで杭としての役割を果たせる。君たちにとって結界はとても大切なものだ。だからね、精霊を、この世界、住人から引きはがそうとする者たちがいれば排除なさい」


 白の子たちの身体が弱いのは先天性のものだが、まだ常識になっていない知識。身体強化の魔法をかけて健常者の気分を覚えさせる。そこで更に噓を吹き込む。


「結界は他の者たちにとっては無くても問題ないものだが、結界が無くなれば君たちの身体に毒素が回り更にこの身体強化の魔法も効きにくくなる」


 案の定、顔を青ざめさせた子供たち。恐怖と危機感を煽って、魂の生き残りとその協力者たちを悪役に仕立て上げる。


 魂の生き残りたちだけで未来の計画を進めるとは思えない。必ず、協力者がいるはず。そいつらをこいつらには消してもらわなければ。一番確実なのは自分が今と未来、両方の不穏な芽を摘むことだが、戦力的に敵わないのが現実。


 洗脳と訓練を繰り返す日々、息子たちにもその様子を見せると徐々に使命感が芽生えたのか積極的に勉強、指示だしの訓練をして励むようになった。


----------------------------------------------------------------------------------------


 月日は過ぎ、その屋敷の子孫と地下施設に住まう白の子たちの主従関係は続いていく。


 ある日、心優しい青年が誕生した。昔から秘密の訓練を幼い頃からしている家系は、五百年前からただ一つの尊い任務のためにその生を費やす。


 本来は厳格な主従関係であらねばならないその家系の貴族の息子とある一人の白の子は出会い、友情を育んだ。両親に言われて厳しい次期当主を演じる一方、白の子たちを家族のように大事に思い、優しさを見せることも多々あった。


 2006番、そう付けられた白の男の子は青年の親友だったのだ。


「主、俺絶対役目を果たして見せる。だけど…もし、もし俺に何かあったら切り捨ててくれ」


「ニーロ、自分が何を言っているのか分かっているのか?」


「分かってるに決まってんだろっ!アンタ、こうでもしないといつまでも引き伸ばすつもりだろ?それとも結界が消えて俺らが死んでもいいって?」


「そんなわけないだろっ!」


「じゃあなんで決行日を引き延ばそうとしてるんだよ!」


 青年は言えなかった。手記を見つけたのだと、内容が本当ならお前たちを行かせられないのだと。だって既に取り返しのつかないところまできている。


「明日、明日の夜のうちにお前は精霊教会へ忍び込んで配置につけ。他の者たちも集めてくれ、指示を出す」


 重苦しい青年の顔は緊張からだと判断した2006番は、その言葉を聞いて途端に笑顔になった。


「そうこなくっちゃな」


 そう言って走り出していく友を止める言葉も方法も青年には思いつかなかった。立場こそ違えど、彼もその先祖もただ一つの目的のために生きてきたのだから。確証もない手記に振り回されたくなかったのだ。


 そしてそれが、友の元気な姿を確認できた最後だった。


 全員失敗に終わったばかりか、2006番(ニーロ)は捕まった。昔から精霊教会と協力体制にあるギルドの牢に入れている時点で、逃すつもりはないのだろう。


 青年は屋敷の自室で古びた一冊の手記を前に頭を抱えた。


-------------------------------------------------------------------


 冷たい石畳に堕ちる影はゆらゆらと揺れている。


 壁の両側から伸びる四本の鎖は一人の身体から伸びており、曲げられないよう肘を覆うように付いてる枷は、体重を支えるために強めに締められていた。


 少しだけ地面より上にある足に付いている鎖は緩めてあるのか時折、鎖が地面に擦れる音がする。


「ぐっ…」


 目を覚ましたのは白の子、2006番ことニーロ。己の状況を認識するとため息をついた。親友でもある主にあれだけ強気なことを言っておいて捕まるなど恥もいいとこだ。


 拷問の訓練もある程度受けているとはいえ、絶対などない。


(今のうちに…)


 気を失っていた上に人がとるべきでない体勢をずっととっていたからか、口の中の違和感に気づくのが遅れた。


 猿ぐつわよりも頑丈な、恐らく自害防止用の鉄製のマスクが口元に装着されていたのだ。咥えさせられている鉄の棒のせいで舌を嚙むことができない。


 再びため息をついたニーロは魔力もまだ身体に回されているのを感じ、いよいよ不甲斐なさに情けなさがこみ上げてくる。


 頭を切り替えたくとも何もできない現状、そして自分たち白の子に優しい主。見捨てろと言ったものの、本当に彼にそれができるとは思えなかった。


 ニーロは一人、牢屋番のためのランプのみの光がつくる囚われの己の影から目を逸らすようにうなだれた。

 あまり話進んでなくね?と思った方申し訳ない!

次回また捕虜の子たち出てきます。青年、ダクトもちょろっと出てきます。そして近々また新キャラ(多分ラスト)出てきます。

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