第2回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞 への投稿作品
偽物の涙
ゆいこは、ふかふかな布団のなかで目覚めた。
夕陽に赤く照らされた障子と見知らぬ天井が見えた。
そして、寝かされていた布団の周りに人の気配を感じた。
老人『目覚めましたかな。手荒な招待になってしまったことをお詫びする。』
老人『言い訳にしかならんが、話しがしたかっただけなのだが、頑なに拒絶されていた様なので、仕方なかったのだ。』
老人『会えてよかった。』
老人の頬を1滴、涙が流れたような気がした。
老人『こう言ってはなんだが、夕食を用意してある。先ずは、歓迎したい。』
老人『落ち着いたら、広間に来てくださらんかな』
言い終えたかと思ったら、人の気配が無くなった。
ゆいこ『頑なに拒絶した?』
キモいナンパとか、アイドル事務所の勧誘を拒絶したことはあったけれど、アポ取りを拒絶した覚えは無かった。
徐にゆっくり起き上がる ゆいこ。
特に身体の異常はなさそうだった。
気持ちいいふかふかな布団から出るのに少しためらいがあった ゆいこ。
照明器具が無い部屋を見回した。
品の良い品がされげなく配されていた。
ゆいこ『偽物は、なさそうね。』
ゆいこ『価値は、わからないんだけどねぇ〜』
見覚えの無い部屋だった。
障子を開けると広々とした日本庭園の背景をなす山々の深緑、沈みゆく夕陽を浴びてピンク色から紫色に変わっていく薄曇りの空を眺めながら
ゆいこ『誘拐しておいて、歓迎の夕食って、、』
ゆいこ『嘘泣きなんか見せといて、話しって、、』
ゆいこ『どうしろって言うの。。。』