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里奈から10メートルほど離れた所に、男が一人立っていた。
全身黒ずくめの格好に、サングラスまでかけていた。
「こんな暑い時に」
そう思いつつも、里奈は男に近づいていった。
「すいませーん。
この辺りに鳥が飛んできませんでしたか?
何とかって名前の外国の鳥なんですけど」
里奈は息を切らせながらそう言うと、頭上を見上げた。
オウギワシは見当たらず、生い茂る木々の枝葉が、真夏の太陽を遮っていた。
「さあ?見ませんでしたが」
男は、落ち着いた様子で答えた。
「こっちに飛んできたんですよ。
ワシみたいに大きな鳥で、あと、何故か口に紙を咥えてて・・・・・・、あれ?」
そこまで言ったところで、里奈は、男が折りたたまれた紙を手にしていることに気づいた。
それが丁度、ワシが咥えていた紙と同じものに見えた。
「それは?」
里奈は、男が手にしている紙を指差した。




